朝起きたら背中に羽が生えていたので妹に相談した
朝起きたら背中に羽が生えていた。
「どうなってるんだってばよ」
動揺のあまり変な口調になっている。とりあえず状況を整理しよう。
背中に激痛が走って目が覚めて、そしたら体が宙に浮いて天井に激突。うん、意味が分からん。
「ちょっとお兄ちゃん!! うるさいんだけど!!」
妹の怒鳴り声が聞こえたかと思ったら、部屋の扉が勢いよく開いた。
「どったんばったん、何して......」
俺の方を見て妹が固まる。
「おはよう充希」
挨拶をしただけなのにガチャリと扉を閉められたよ。うん、まずいねこれ。
やっぱ羽生えてるよね。俺の幻覚じゃないよね。
そーっと再び扉が開いて、隙間からひょこっと充希が顔を出す。
奇妙な物を見る目を、俺の後ろの方に向けている。
「......お兄ちゃん何それ」
「俺にも分からん」
「大丈夫なの?」
「羽が生えていること以外は特に問題ないな」
痛みが走ったのは寝起きの一瞬で、今は特に痛みはない。
強いて言うなら、背中が少し重いくらいだ。
「それが大問題すぎるでしょ。それ本物なんだよね?」
「作り物ではないな」
充希は俺の方へと恐る恐る近づいて来た。
「触っていい?」
「俺の胸筋を、か?」
「お兄ちゃん筋肉ないでしょ。ていうか何で裸なの?」
「あー、寝てる時に暑苦しくて上を脱いだ記憶があるな」
そのおかげで服は破れずに済んだ。
「ふーん」
充希はじーっと俺の背中を見ている。
「そんなに触りたいか?」
「......ちょっとだけね」
そんな事を言っているが、両手を羽に近づけて触る気満々である。
「触っていいがゆっくり、ひゃっ!?」
「変な声上げないでよ」
「お前が急に触るからだろ!! ていうか手冷たいな!!」
「私の手が冷たいんじゃなくて、お兄ちゃんの羽があったかいんだよ」
「羽を俺の体の一部として受け入れるんじゃない。おいコラ、頬を擦り付けるな」
「......気持ちいー」
さっきまで不安げな顔をしていた充希だったが、今は幸せそうな顔を浮かべている。
「まじでどうしよ。今日休みだから良いけど、明日には学校行かなきゃいけないんだが」
羽の大きさは、だいたい両手を広げたくらい。服で隠すことは出来なさそうだ。
そもそも服着れないじゃん。
「病院行く?」
「何科に行けばいいんだよ」
「皮膚科、とか?」
「聞いたことねえよ、羽生えて皮膚科行くやつなんて」
「まず羽が生えた人を聞いたことがないけどね。ところでお兄ちゃん、これ飛べるの?」
「さっきちょっと飛んだな」
天井にぶつかって、すぐに落ちたけど。
「あー、それでうるさかったんだね。飛べるってことはお兄ちゃんの意思で羽を動かせるってことだよね」
「まあ、そういう事になるな」
そういえば意識的に羽を動かしてないな。
さっきは無意識に飛んじゃったし。
「動かしてみてよ、軽くでいいからさ」
そんな期待のこもった目で見るんじゃないよ。
「いいけど、危ないかもしれないからちょっと離れてろ」
充希が部屋の端に移動したところで、早速羽に意識を向けてみる。
「むっ」
ピクリと羽が動いた、ような気がした。