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運命の試験日

問1『あなたは今、敗色濃厚な戦場にいます。明日の作戦は一斉特攻。そんな作戦を翌日に控えた夜、大事そうに写真を見つめる1人の兵士がいます。あなたはどのように行動しますか』

答『兵士に声をかけ、写真について話を聞きます』


問2『雨に濡れている捨て子猫がいます。道の向こうからは不良。反対側からは真面目そうな女の子が歩いてきています。あなたはどのように行動しますか』

答『不良が猫を拾ったのを確認後、女の子が気づいていないようなら「猫の鳴き声?」等独り言を言って気付かせます』



 6月某日。

 商工会議所の会議室を借りて行われた試験が終わり、遙は今までにない手応えを感じていた。

 元からテストは得意だ。それに加えて今は、舞に仕込んでもらったフラグ建築士としての思考の組み立て方も会得している。

 記述も、自分の今までの解答の傾向と明らかに質が変わった自信がある。

 しばらくしたら解答速報が出るはずなので、自己採点の結果は舞に堂々と報告できるのではないだろうか。

 試験中は電源を切っていたスマホに電源を入れ直すと、舞からメッセージが届いていた。

『お疲れ様でした』

 にっこり笑顔の絵文字は、舞も遙の試験結果に自信を持ってくれていると解釈していいだろうか。

 少し浮かれているのを自覚しながら返信を送った。

『ありがとう。速報出たら電話してもいい?』

 すぐに『OK』という文字と猫の可愛いスタンプが送られてきた。

 それだけで嬉しくなってしまうのは、試験終わりの開放感も手伝っているのだろう。

 手応えがあるといっても合格が約束されているわけではない。気を引き締めなくてはと思うと同時に、舞に何かお礼をしなくちゃと思考が飛ぶ。

(ダメだな。浮かれてる)

 もし本当に合格していたら、そのまま舞の家まで走り出しかねない。家の場所は知らないけれど。

 柔らかく微笑んだ遙に、周囲の人たちがことごとく胸を撃ち抜かれた。



▪️ー▪️



 運命の合格発表日は試験の約2週間後の日曜日だった。

 その日の遙は朝から自室でパソコンの前に座り、その時を待っていた。

 発表の9時ぴったりにアクセス、自分の受験番号を入力すると合否が表示される仕組みだ。

 緊張で震える指先でエンターキーを押す。そして、スマホのメッセージアプリから目的の人物を探し出して通話ボタンをタップした。

『はいもしもし』

「舞ちゃん……受かってた!」

『うわー!おめでとう!自己採点良かったからあんま心配してなかったけど、やっぱりいざ見ると感動するよねぇ』

「本当に舞ちゃんのおかげだよ。ありがとう」

『いやいや、神宮くんが諦めずに頑張ったからだよ』

「この2週間ずっとそわそわしてたらなぜかいろんな人に『脈あり』判定されて大変だったんだけど、明日からは堂々と過ごせそうかな」

『それは明日から神宮くんの本命探しで学校が地獄絵図では?』

「うーん、合格したし、なんとかなるよ」

『神宮くんそういうとこあるよね』

「ふふ。舞ちゃんにちゃんとお礼もしたいし、今後の相談もさせて欲しいから近々空いてる日ある?」

『お礼はいらないけど、お祝いくらいはするよ。日程確認してまた連絡するね』

「うん、よろしく。休みなのに朝からごめんね。ありがとう」

『全然大丈夫。私も安心した。神宮くんも浮かれた休日を楽しんでね』

「ふふ。そうする。バイバイ」

 舞の『またね』の声を聞いて通話を切る。今日は朝から気分がいい。舞の言う通り浮かれた休日になりそうだ。

 とりあえず舞へのお礼を考えがてら散歩でも行くか、と立ち上がった瞬間スマホがメッセージの着信を告げる。

 舞の予定にしては早くないだろうか。そんなことを思いながらメッセージを確認すると、よくよく見慣れたアイコンからだった。


『遊園地とカラオケどっちがいーい?』


 おそらく遊びの誘いだろうが、情報が抜けすぎていて意味がわからない。

 今日の予定なら遊園地は唐突すぎるし、そもそも何故この2択なんだ。

 そういえば祐希にも合格発表の日は伝えていたなと思い出して、『合格した』と返信を打つ。


『おめでとー!で、どっち?あ、もしかして動物園がいい?』


 もっと喜べ、感動しろ。ついでにメッセージの意図を説明しろ。

 こんな浮かれた休日に、訳のわからない提案でイライラしたくはない。

 自分の機嫌は自分で取るべきだ。

 とりあえずメッセージアプリは閉じて、先に散歩に行くことにする。

 いくつかのお礼候補について考えているうちに、機嫌はいつの間にか浮上していた。

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