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プロローグ

「フラグ」という言葉をご存知だろうか。

 ここでは、主には物語の展開に関わる伏線を「フラグ」と呼ぶ。


 例えば、クローズドサークルでの殺人事件。 

 電話は不通。携帯も圏外。外は大嵐で陸の孤島。そんな中で起こる殺人事件。

 混乱する中、突然仕切り出す見知らぬ自称探偵。殺されたのは自分と同じ罪を持つあいつ。きっと次に狙われるのは自分に違いない。

 背中に冷たい汗が伝う。

 こんなところで、あんな罪で、自分は殺されていい人間じゃない。

「犯人はこの中にいるかもしれないってこと?」

「はい。そこで、全員ここで一夜を明かしましょう。お互いがお互いを見張っていれば次の事件も起きない」

「ふざけるな!お前が殺人犯かもしれないだろう!俺は部屋に戻らせてもらう!」


 はい、フラグだ。

 犯人が誰であろうとどう考えてもみんな一緒にいたほうが安全だ。わざわざ一人になって安全なのは、自分以外の人間が全員グルという場合だけ。『俺』はそんな低い確率に賭けた……わけではない。

 ここで本当に全員素直に従ってしまえば次の殺人は格段に起こりにくくなる。

 物語が展開しない。十分なヒントを得られなかった自称探偵の活躍の場は、嵐が収まってからやってきた警察の現場検証の前に呆気なく消え去ってしまうだろう。

 だから『俺』は一人になった。

 自称探偵が華麗な推理を披露するために。


 他にも、命をかけた戦場での「帰ったらほにゃららするんだ」も有名どころ。

「その写真の人、彼女か?」

「あぁ。故郷で僕の帰りを待っている。この戦いから帰ったら、プロポーズするって決めてるんだ」

「じゃあ、絶対に生きて帰らなきゃな」

「あぁ、もちろんだ」

 はい、フラグだ。

 未来に希望を持った者がその未来を断たれたとき、人は大きく感情を揺さぶられ、物語は盛り上がる。



 命懸けのフラグばかり紹介してしまったが、フラグはいつでも命懸けなのかというとそうでもない。

 例えば、少女漫画の導入。


 その少年が現れた途端、空気がざわめく。

「見て、あの人かっこいい」

 その声と女生徒の視線につられて顔を向ける。

 多くの生徒が男女問わずその人に釘付けになっている。隠されることのない興奮と好奇心を一身に集めながら平然と数多の視線のど真ん中を歩く男がいた。

 太陽の光を集めて輝く金髪と、端正な顔立ち。オーラからして華やかな男だ。

「誰?あの男」

 そばにいた女生徒に問うた声が聞こえたのか、華やかな男が少し驚いたような顔で目の前に立ち止まった。


 はい、フラグだ。

 誰もが知っているアイドルを「知らない」と豪語することも立派なフラグ。ここから学園のアイドルと俺様を知らないおもしれー女の青春恋愛劇が始まるわけだ。


 このように、フラグは物語の主人公を輝かせるために大変重要なものなのである。

 これは、そんな物語をこよなく愛し、滞りなくフラグを成立させることに人生を費やすことを厭わない気高きプロモブ、『フラグ建築士』が世界の主人公になるまでの物語だ。

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