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岬ノ村の因習  作者: 結城 からく


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第93話 サプライズ

 岬ノ村の山へと続く道路は大勢の人々が集まって渋滞を起こしていた。

 中継を行うテレビスタッフと配信を見た野次馬、売名目的の配信者を警察がまとめて食い止めている。

 無理やり山に近付こうとする者もおり、現場はパニック状態だった。


 そんな中、一人の青年が車内でスマートフォンを操作している。

 画面には上空からの映像が映っていた。

 画質が悪いせいで分かりにくいものの、それは岬ノ村をリアルタイムで撮影している。

 青年はドローンを使った映像を記録しているのだった。


 燃える山を舞台に村人と警察が殺し合っている。

 炎に照らされる村には夥しい数の死体が散乱していた。

 遠目にも視認できるほどの損壊具合で、地面の大部分が赤黒く染まっている。

 その中で生き残った人間が血みどろの戦いを繰り広げていた。


 ドローンを操作する青年は暗い笑みを浮かべる。

 彼は宝物のように上空からの映像を見つめていた。


「ふふ、最高だ……これを投稿すれば絶対にバズるぞ」


 しばらく夢中になっていた青年だが、車外の騒がしさに気を取られて顔を上げる。

 彼がここに来る前からずっとうるさかったのだが、何やら雰囲気が変わっていたのだ。

 困惑や焦りに包まれる人々は、徐々に山の方角から離れ始める。

 一部の者は「早く逃げろ!」と叫んでいた。

 報道キャスターは山を指差して何かを必死に訴えている。

 恐怖に歪んた顔は蒼白だった。


 これには青年も怪訝な顔になる。

 しかし車外に出て確認するのが面倒だったので、ドローンを滞空させたまま騒ぎが治まるのを待つ。


 彼は岬ノ村の出来事を他人事として捉えていた。

 たとえ現場付近だろうと対岸の火事という認識だったのだ。

 周囲の人間が騒いでいるのも別に大したことではないと考えていた。


 漠然とした不安を自覚しつつも、ぬるい缶コーヒーを飲んで誤魔化した。

 逃げるべきだという気持ちより、何が起こったのか知りたい好奇心が大きかった。


 異変は一分もしないうちに訪れた。

 山の方面から巨大なトラックが接近してくる。

 大量の鉄板が溶接されたその車両は、景気よくクラクションを鳴らしながら加速していた。


 トラックはパトカーを蹴散らし、渋滞で停止する車を弾き飛ばしながら突き進む。

 軌道上の人間も容赦なく轢き潰していった。

 血飛沫を撒きながら殺戮装甲車は走り抜けていく。


 呆気に取られる青年は逃げようとするが手遅れだった。

 衝突でひしゃげた車の一部となりながら、彼は自身の脳が潰れる音を聞いた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >呆気に取られる青年は逃げようとするが手遅れだった。 >衝突でひしゃげた車の一部となりながら、彼は自身の脳が潰れる音を聞いた。  自分だけは安全圏にいるつもりで他者の死をネタに売名しよう…
[良い点] ああ…ついにっ…!やっぱりあそこで佐久間の爺さんが殺しておけば…警察に村長のプレゼントはするわパンピー(?)を巻き込むわ…被害の方がデカいよな
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