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岬ノ村の因習  作者: 結城 からく


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第88話 不滅の執念

 首を失った加納が倒れる。

 断面から迸る鮮血が星原を染め上げた。

 佐伯が駆け寄って星原の身体を確認する。


「大丈夫!?」


「わたくしは無傷ですよ。ここで死ぬ運命ではありませんから」


 独特の言い回しで答える星原は、やはり平然としていた。

 彼女にとっては命の危機などそもそも訪れていなかったのかもしれない。


 一方、殺戮装甲車"方舟"に変化が生じていた。

 無抵抗だった村長が身をよじり、自らの腹を捌いて銛を外したのだ。

 解放された村長は地面を転がって樹木に激突する。

 ワイヤーを引きずる方舟はあっという間に走り去り、動かない村長だけが残された。


 連続する異常事態に警官達は困惑していた。

 判断に迷う彼らは、ひとまず村長の確認から行うことにした。

 拳銃を向けながら慎重に歩み寄っていく。


 盾を持った一人の警官は、村長の傷を見て顔を青くした。

 あまりの損壊具合に吐き気を催す。


「こ、これは……」


 その警官が呟いた瞬間、村長が目を剥いて跳ね起きた。

 振り抜かれた仕込み杖が警官の首を切り裂いて絶命させる。

 コンマ数秒の早業だった。


 突然の凶行にどよめいた警官達は一斉に発砲する。

 ところが村長は死体の盾を構えており、弾は一発も命中していなかった。

 隻腕のため、仕込み杖は歯で噛んで保持している。


 村長は満身創痍とは思えないスピードで疾走し、別の警官の腕を切断した。

 返す刃で首を刎ねる。

 拳銃で撃たれれば盾で防ぎ、口で固定した仕込み杖で次々と腹や胸を刺して殺害していった。

 捌いた腹からは臓腑が垂れていた。


 血みどろの人間が獣じみた挙動で襲いかかってくる村長に、警官達はすっかり恐怖した。

 彼らはまともに反撃できずに殺されていく。

 逃げ出した者も背中から斬られて死んだ。


 その光景に目にした佐伯は、すぐさま逃走を選択した。

 ここで立ち向かうより、僅かな猶予で少しでも離れる方が生存率が高いと判断したのである。

 彼女は死体から拳銃をひったくると、転がるように山道を駆け下りていく。

 すぐに警官達の断末魔が聞こえなくなったので余計に急いだ。


 佐伯と並走するのはスマートフォンを持つ星原だった。

 彼女は相変わらず配信を続けている。

 そしてやめる気もないようだ。

 星原は呑気にリクエストをする。


「何か一言お願いします」


「…………」


 疲労困憊の佐伯はうんざりした顔で中指を立てた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] そ…そんな…俺のせいだ!俺がコメントであんなにフラグを立てなければ!警察の人無事で良かった だの 村長死んだだろwとかいわなきゃ良かったっ…!
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