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岬ノ村の因習  作者: 結城 からく


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第83話 悪党狩り

 羽野が膝から崩れ落ちる。

 首から上が潰れて原形を留めていない。

 当然ながら死んでいた。


 羽野の背後には短機関銃を持つ安藤が立っていた。

 彼が背後から銃撃を浴びせたのだ。

 安藤は銃を下ろし、悠々と佐久間を見る。

 そして静かに話しかけた。


「どうも。こんにちは」


「なぜ助けた」


「偶然です。狙撃されるのが嫌なのであなたを始末しようと思ったら、先に彼が来ていたんですよ」


 安藤は羽野の死体を一瞥する。

 その眼差しからは興味の薄さが窺えた。

 既に仕留めた人間に関心がないのだった。

 彼の興味は佐久間に移っている。

 安藤は羽野の持ち物を漁りながら尋ねた。


「余計なお世話でしたかね」


「……お前は悪だ」


「否定はしませんよ。さすがに善人は自称できませんからね」


 死体から拳銃と予備弾薬を拝借しつつ、安藤は言う。

 彼の目はどこまでも冷めていた。

 辺りに燃え広がる炎にも動じず、汗一つ掻いていない。

 悪と罵られてもどこ吹く風だった。


 佐久間は己の内で爆発的に膨らむ憎悪を自覚する。

 しかし、片脚が樹木に潰されているせいで動くことができない。

 精一杯に手を伸ばしても、落ちている猟銃には届かなかった。

 何かを投げつけたところで躱されるのが目に見えている。


 安藤はこれ見よがしに猟銃を遠くへ蹴り飛ばす。

 愛銃を粗雑に扱われた佐久間は地面を殴る。

 拳から血を滲ませながら彼は告げる。


「殺してやる」


「その状態で何ができるんですか。僕に生死与奪を握られているというのに」


 安藤が短機関銃を佐久間に向ける。

 佐久間は微塵の恐怖も抱いていなかった。

 ただ激しい怒りに駆られ、射殺さんばかりの眼光を佐久間に返す。


 睨み合いは三十秒も経たずに終了した。

 短機関銃を下ろした安藤が肩をすくめて苦笑する。


「冗談ですよ。あなたを殺す気はありません。殺し合いはお互いに万全の時にしましょう」


「待て」


「僕はもう少しお祭りを楽しんできます。フィナーレも近いですからね」


 そう言って安藤が歩き出した。

 彼は振り返って告げる。


「あとは任せてください。すべて終わらせてきますから」


 焼けた樹木が安藤に倒れてくる。

 安藤が素早い身のこなしで避けて歩き続けた。


「あちこち燃えてますけど、頑張って生き残ってくださいね」


 その後、一度も振り返らずに安藤は立ち去る。

 残された佐久間は夜空に向かって吠えた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 安藤もぜひ死んでほしいのだが…今のところ死んだ方がいい人間にしか手を出してないしな…わざわざ人を殺すために岬ノ村まで来てる時点で一般人を殺すようには思えない…のか?
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