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岬ノ村の因習  作者: 結城 からく


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第80話 無力な狙撃手

 けたたましい銃声を聞き、佐久間は我に返る。

 拳銃ではありえない発射速度だった。

 彼はその場に伏せて銃声の発生源を探す。


 木陰に目出し帽を被ったスーツの男がいた。

 男の手には短機関銃がある。

 彼は殺戮装甲車に気を取られた者を的確に射殺していた。

 こまめに移動しており、狙われないことに重きを置いている。


 それでも村人から反撃されそうになると、男は素早く退避して行方を眩ませた。

 そうして頃合いを見て姿を現して、油断した者の首を背後からナイフで掻き切る。

 数の差で危うい場面も、村人を盾に銃撃戦を展開してみせた。


 常に変動する環境を狡猾に利用している。

 それが男に対する佐久間の感想だった。

 有栖川やリクとナオほど目立たないものの、男はそこそこの人数を無傷で殺害していた。

 使用する短機関銃も高性能で、村人達の武装を凌駕している。


(人殺しに慣れている……森に罠を仕掛けた犯人か)


 そう確信した佐久間は猟銃を男に向ける。

 男から悪の臭いを嗅ぎ取ったからだ。

 行動指針が似通っていようと関係なかった。


 ところが照準を合わせた瞬間、男は自然な動作で木々の陰に隠れる。

 そこから引き続き村人を射殺しているようだが、佐久間の射線には決して出てこない。


 短機関銃の男――安藤は佐久間の存在に気付いていたのだった。

 その上で狙われないポジションを維持しつつ、大勢の村人を相手取っていた。

 徹底された立ち回りに、佐久間は苦い顔で結論付ける。


(これだけ警戒されると狙撃は不可能だ。隙が生じるまで放っておくか)


 募る怒りを鎮めながら、佐久間は村の別の地点に注目する。

 そこには先ほどまで今代みさかえ様の鈴木とピエロメイクの平野がいた。

 二人は壮絶な殺し合いを繰り広げていたはずだが、現在は忽然と姿を消している。

 訝しむ佐久間はその周辺を観察する。

 倒れているのは村人ばかりで彼らの死体は見当たらなかった。


(……森に逃げたのならば遭遇するかもしれない)


 あの二人が怪物じみた身体能力を持つのは佐久間も知っている。

 リクとナオを狙う前に何度か狙撃したのだが、一向に殺せる気配がなかったのだ。

 それどころか有り余る力で他の村人を手にかける始末だった。

 仮に距離を詰められれば、佐久間が勝てる可能性はゼロに等しい。

 彼の技能は対人狙撃に特化しており、銃が効かない殺人鬼との戦闘は分が悪かった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第80話到達、お疲れ様です! [気になる点] >そこには先ほどまで今代みさかえ様の鈴木とピエロメイクの平野がいた。 (中略) >あの二人が怪物じみた身体能力を持つのは佐久間も知っている。 …
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