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岬ノ村の因習  作者: 結城 からく


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第79話 俯瞰視

 佐久間は猟銃を構えている。

 彼が狙うのは暴走する大型トラックだった。

 走って追いながら何度か撃つも、幾重にも重ねられた鉄板に弾かれて車内の人間には当たらない。

 そのうちトラックは射程外に消えてしまった。

 佐久間は猟銃を下ろして忌々しげに呟く。


「欲に塗れた悪め……」


 軽自動車から出たリクとナオを狙撃したのは佐久間だった。

 彼は二人を悪と判断し、木陰から抹殺を試みたのである。


 初対面の時点で二人が善人ではないことを見抜いていたが、殺害に踏み出すほどではないと佐久間は考えていた。

 ところが、現在のリクとナオは岬ノ村の狂気に染まり、被害の拡大に加担する側にいる。

 そのため佐久間は当初の判断を覆したのだった。


 リクとナオを仕留め損ねたことに舌打ちしつつ、佐久間は村の中央部へと戻る。

 各所で戦闘が勃発し、慢性的な混乱が生じていることで、多少は大胆に動いても気取られることはなかった。

 佐久間は森を突っ切るように進み、息を切らしながら高所を陣取る。

 彼は膝立ちになって猟銃を構え、じっと村全体を見渡す。


 一足先に到着していた殺戮装甲車"方舟"が縦横無尽に走り回っていた。

 車両の性能に任せた突進で次々と家屋を粉砕し、右往左往する村人を片っ端から轢き潰す。

 距離を取る者は機関銃の掃射を受けてミンチとなった。

 四方八方から反撃の弾丸を受けているが、重厚な鉄板を貫くことはない。

 リクとナオは景気よく村人を殺しまくっていた。


 村の端では、男達を追う有栖川の姿が確認できた。

 彼女はチェーンソーを振り回して一人ずつ惨殺している。

 佐久間は猟銃の狙いを有栖川に定める。

 夜間の視界の悪さに加え、かなりの距離があるものの、佐久間にとっては些細な問題であった。

 集中する彼は静かに引き金を絞る。


 猟銃から放たれた弾は有栖川の胸に命中した。

 有栖川は体勢を崩して倒れるが、すぐに起き上がって村人達に襲いかかる。

 狙撃されたことなど意に介さず、あっという間に佐久間から見えない位置に行ってしまった。


 佐久間の目つきが一段と鋭くなる。

 悪を始末できなかった怒りが沸き上がり、彼は反射的に歯を食い縛った。

 脳を焼き切るような激情をどうにか意志の力で抑え込み、次の獲物を探し始める。


 有栖川を追う人影があった。

 小柄な体躯は血みどろで刀を持っている。

 顔は翁の能面で隠されていた。

 佐久間は狙いを付けようとするも一瞬遅かった。

 射程外に逃れた人影を睨み、佐久間は顔を顰める。


「……腐り切った、悪の臭いだ」

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― 新着の感想 ―
[一言] >初対面の時点で二人が善人ではないことを見抜いていたが、殺害に踏み出すほどではないと佐久間は考えていた。 >ところが、現在のリクとナオは岬ノ村の狂気に染まり、被害の拡大に加担する側にいる。 …
[良い点] うーん。目的と優先順位はしっかり持った方がいいと思うけどなぁ…あの化け物どもは後で片付けるとして、今は村人の殲滅に注力した方がいいと思う。
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