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岬ノ村の因習  作者: 結城 からく


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第75話 加速していく

(今すぐ降ろしてほしいけど、ちょっと言い出せないな……)


 佐伯は運転席を一瞥してため息を吐く。


 リクとナオは二人の世界に浸り切っていた。

 まるでゲームのような気軽さで村人を轢殺し、佐伯から奪った散弾銃も持っている。

 足元には飲みかけの酒と白い粉が散乱していた。

 迂闊に話しかけると何をされるか分かったものではない。

 佐伯を車内に運び込んだ理由も不明で、あまり触れたくないのが彼女の本音であった。


 一方、隣に座る星原も普通ではない。

 この環境で冷静に配信を行っていることが何よりも異常なのだ。

 表情も乏しく、何を考えているかまるで分からない。

 リクとナオに比べれば意思疎通も可能だが、ともすれば二人よりも不気味だった。


 色々と訊きたい気持ちを抑えて、佐伯は一人で考え込む。


(とにかく山から脱出しないと。次に減速した時に無理やり降りるしかない)


 佐伯が決意を固めた横で、星原が「あっ」と呟いた。

 彼女は運転席まで身を乗り出すと、右斜め前方を指差す。

 そこには草木に覆われた小道が続いている。

 星原が指し示さなければ、誰も存在にすら気付かなかったであろう。

 彼女はリクとナオに告げる。


「あの道を進んでください。あなた達の望むものが待っています」


「おおっ!? マジか! お宝ゲットかよッ!」


「いいじゃん! 見に行こうー!」


 急加速した軽自動車が片輪走行で小道に突入する。

 生い茂る草を薙ぎ倒し、アップダウンの激しい獣道を跳ねながら進む。

 時折、星原が細かい指示で行き先を調整した。

 ハンドルを握るリクは素直に従う。

 立ちはだかる村人が銃を撃とうが構わず轢き殺していく。


 配信に乱入するという目的を果たしたリクとナオにとって、その後はどうなろうと構わなかった。

 自分達が楽しめるのが一番であり、それ以上の方針はない。

 ましてや星原の予言は二人の期待感を煽るものだ。

 むしろ率先して従うのが当然だと思っていた。


 配信を視聴する人々も、意味深な発言に盛り上がっている。

 星原の占いがいかに的中するかは既に何度も証明されていた。


 行動するタイミングを完全に失った佐伯は、後部座席でシートベルトを装着する。

 最も警戒すべき危険は、乱雑な運転による事故だと察したのだ。

 横転や衝突に備えつつも、車外に飛び出す好機も窺う。

 激しい揺れに辟易する佐伯は、座席に掴まりながら祈る。


(早く止まってよ……)


 その願いは意外な形で叶うこととなった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >(早く止まってよ……) >その願いは意外な形で叶うこととなった。  ああ、嫌な予感が当たりませんように。
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