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岬ノ村の因習  作者: 結城 からく


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第68話 厄介な敵

 軽自動車が村の入口で三人の男を轢き、そのまま走り去った。

 すぐさま村人が追いかけるも、森から飛び出した有栖川に首を切断される。


 村に突入した有栖川は狂ったようにチェーンソーを振り回した。

 松明に照らされるその姿は傷だらけだった。

 全身が無数の銃創や切り傷、刺し傷に覆い尽くされている。

 衣服と肌の境目が分からないほどの出血で赤黒い怪物と化していた。

 集結した村人達が有栖川を止めようとして次々と殺されていく。


 同胞が惨殺される光景を、村長は自宅から眺めていた。

 昆布茶を啜る村長は疲れた様子でぼやく。


「目茶苦茶じゃな。今年はどうなっとるんじゃ」


 室内には他に数人の男がいた。

 彼らは岬ノ村でも有力者と称される古参の人間だ。

 屋外を警戒する表情は、焦りや苛立ちを隠し切れずにいる。

 命を奪う側が脅かされて、次の犠牲者が自分かもしれないことを自覚しているのだ。

 男のうち一人が神経質に叫ぶ。


「あの女は誰じゃ!」


「捕えた生贄らしいな」


「女を移動させた後にトンネルが燃えた。つまりあいつが放火犯じゃ!」


「間違いない。まったくやってくれたわい」


 男達は断定しているが、有栖川はトンネルの火災に関与していない。

 異常事態の連続で情報が錯綜しており、彼らも状況を正確に把握できていないのだった。

 同時多発的な戦闘により、岬ノ村の指示系統は半ば麻痺している。

 森に踏み込んで帰ってこない者の確認をしている暇もなかった。


 扉が開いて一人の男が室内に倒れ込むように入ってくる。

 男は片足から血を流していた。

 苦痛に顔を歪める男は村長に報告をする。


「不味いぞ。あちこちに撒菱まきびしがある! これじゃあ村の中も自由に動けん!」


「ふむ……罠じゃな。小癪な真似をする輩がいるらしいのう」


 村長は険しい表情で考え込む。

 真っ先に連想したのは、山中にあったというワイヤートラップだった。

 村長はそれが撒菱の罠と同一人物ではないかと疑っている。

 屋外で暴走する有栖川が策略を巡らせるタイプ出ないのは一目瞭然であり、それ以外の人間が動いていると推測するのが妥当だった。

 村長は怪我をした男にタオルを投げ渡して命じる。


「まずは撒菱の除去……そしてあの狂った女を殺すのじゃ。分かったな?」


 男は返事もせずに出て行った。

 ため息を吐いた村長は室内の男達に告げる。


「敵は厄介じゃぞ。狙撃犯に二種類の罠、いきなり現れた軽自動車に放火犯とチェーンソー……問題が山積みじゃのう」


 その時、部屋に置かれた黒電話のベルが鳴り響いた。

 村長は受話器を取って耳に当てる。


「どうした」


『村の様子がインターネットに出てるぞ! 誰かが中継しているんだ! もうすぐそっちに県警が来る! 早くどうにかしろッ!』

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  この期に及んで冷静さと精神の余裕を失わない村長が実にふてぶてしいが、その冷静さと余裕、どこまで保てるかな?
[良い点] 『村の様子がインターネットに出てるぞ! 誰かが中継しているんだ! もうすぐそっちに県警が来る! 早くどうにかしろッ!』 なるほど。こいつが駐在か。 [気になる点] もう100人は殺してる…
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