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岬ノ村の因習  作者: 結城 からく


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第67話 欲まみれの救世主

 蛇行する軽自動車が急ブレーキで停止した。

 真っ赤なタイヤ痕の途上には、手足や首が折れた三人の男が転がっている。


 星原は無傷だった。

 軽自動車は彼女の目の前を通過し、村人だけを轢いたのである。

 ショッキングな光景を目撃したコメント欄は騒然とする。


『うわぁ……』


『完全に死んでるね』


『痛そう』


『わざと突っ込んだ?』


 軽自動車がバック走行で星原の前で止まる。

 運転席にはリクとナオがいた。

 ハンドルを握るリクの膝の上にナオが向き合う形で跨っている。

 二人は星原を見て歓喜する。


「はっはー! やっと見つけたぞ!」


「これでもっと注目されるね!」


 血や酒や薬物や諸々の体液が熱気と入り混じり、車内から表現し難い臭いを立ち昇らせていた。

 開いた窓からそれらを感じた星原は僅かに眉を動かす。


 リクとナオは堂々とキスをして抱き合っていた。

 彼らはその様子を手持ちのスマートフォンで自撮りしている。

 二人は互いを見つめたまま、撮ったばかりの写真をSNSに投稿していた。


『ヤッてる?』


『こいつらミサキノムラの二人じゃん!』


『釣りと思ったらマジだったのか』


『グロの次はエロ!!!!』


 込み上げる快感に唸るリクは、星原の配信の視聴者数に大喜びする。

 彼はクラクションを叩いてゲラゲラと笑った。


「とんでもない数が見てるな! すげーなおい!」


「私達の投稿だってバズってるよ! あっ、フォローよろしくね! もっとエロいやつアップするからねー!」


 ナオはカメラ目線で元気よく宣伝する。

 その時、轢かれた男の一人が起き上がろうとしていた。

 満身創痍ではあるものの辛うじて死んでいなかったのだ。

 それに気付いたナオは車外に身を乗り出して水平二連散弾銃を構える。

 彼女は星原に「ちゃんと撮ってねー」と伝えると発砲した。


 散弾を食らった村人がひっくり返り、一度だけ吐血して死んだ。

 完璧な射撃を披露したナオは素早い動作で弾の再装填を行う。

 それが済むとリクに頭を押し付けて甘え始めた。


「りっ君、褒めてー」


「さすがナオだ! どんどん上手くなってるじゃねえか!」


「ふにゅう」


 二人が愛し合う間、銃声を聞き付けた村人が続々と走り寄ってくる。

 サイドミラーを確認したリクが星原を手招きした。


「ほら、さっさと乗れ! ドライブ配信しようぜ!」


「では失礼します」


 星原は後部座席に乗り込んだ。

 そこには気絶した佐伯がいたので端に押しやって座る。

 星原がドアを閉めた直後、村人の銃撃が始まった。

 車体に弾丸が当たる音を聞いて、ナオは焦って頭を下げる。


「りっ君やばいよ! 撃たれてる!」


「よし、一旦逃げるか!」


 決断したリクがアクセルを踏み込む。

 急発進した軽自動車が旋回し、銃撃を受けながら村から離れていった。


 星原は淡々とシートベルトを装着して撮影を続行する。

 座席にもたれかかるナオが、だらしない笑顔でピースサインを見せていた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >星原は後部座席に乗り込んだ。 >そこには気絶した佐伯がいたので端に押しやって座る。 ……佐伯ちゃん、一応まだ「気絶」で済んでんのね。自然回復するかどうかは怪しいが。
[良い点] 血や酒や薬物や諸々の体液が熱気と入り混じり、車内から表現し難い臭いを立ち昇らせていた。 おそらくこの世で1番嗅ぎたくない匂い。
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