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岬ノ村の因習  作者: 結城 からく


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第60話 奇妙な邂逅

※登場人物の佐野の名前を羽野に変更しました。

 猟銃を担ぐ佐久間は森の中を駆け足で移動していた。

 五人の青年を射殺した後、彼はすぐさま狙撃を中断した。

 羽野の率いる捜索隊が想定以上のスピードで迫ってきたからだ。

 猟銃は大人数との撃ち合いに向かないため、態勢を立て直すためにも追跡を振り切らねばならなかった。


 佐久間のそばに立つ樹木に銃撃が炸裂した。

 彼が撃ったものではない。

 後方にいる羽野が直感で狙った攻撃であった。

 弾痕を注視した佐久間は冷静に分析する。


(拳銃弾……なかなか高精度だ)


 樹木を観察するうちに、佐久間はそこに仕掛けられたワイヤートラップに気付く。

 闇に紛れたそれはよほど注意深く探さなければ発見は困難だった。

 佐久間は罠の前に分かりやすく足跡を付けてからそばを通り過ぎる。


 およそ一分後、後方で悲鳴が上がった。

 追ってきた村人の誰かがワイヤートラップの餌食になったのだ。

 佐久間は素早く方向転換すると、今度は痕跡を辿られないように意識して進む。

 もちろん新たなワイヤートラップにかからないように用心も怠らなかった。


「——薄汚い悪め。皆殺しにしてくれる」


 佐久間は憎悪を露わに走り続ける。

 彼は岬ノ村の破壊を諦めていなかった。

 否、ここからが本番と言えよう。


 佐久間の脳内では、村を中心にしたゲリラ戦が想定されていた。

 追い込まれれば離脱して仕切り直す。

 敵の攻めが甘ければ容赦なく突き崩す。

 間合いさえ保てば絶対に負けないという自信が佐久間にはあった。


 その時、佐久間の目の前に一人の村人が現れる。

 互いの存在に気付かず、生い茂る草木の只中で鉢合わせたのだ。

 羽野の追跡部隊とは無関係の完全なる偶然だった。


 佐久間は反射的に猟銃を向けるも、寸前で発砲を堪える。


「…………」


 彼は発砲による居場所の露呈を嫌う。

 故に引き金から指を外すと、そのまま突進していった。

 これに驚いたのは村人だった。

 村人は後ずさりながら手作りの槍を突き出す。


「うおおおおおっ」


 半身になって槍を躱した佐久間は猟銃で村人を殴り付ける。

 倒れた所に何度も銃床を浴びせて手際よく撲殺した。

 軽く息を乱す佐久間は、顔に付いた返り血を拭う。

 刹那、彼は目を見開いて振り返る。


 そこには占い師の星原がいた。

 彼女はスマートフォンを佐久間に向けている。


「皆様のリクエスト通り、迫力のある格闘戦を撮りました。場所も時間も完璧でした。これでわたくしの占いを信じましたか」


 平然とする星原は佐久間と死体を撮影していた。

 彼女の言葉は配信を視聴する人々に向けたものであった。


 佐久間は猟銃を握り締めて星原を凝視する。

 何かを確認するように鼻を動かした末、彼は興味を失ったように歩き出した。


「悪……ではないな」


 佐久間が振り返ることは二度となかった。

 一方、星原はスマートフォンに表示されたコメントに反応する。


「あのご老人を追跡? 占いによるとそれは適切な判断ではないようです。わたくしは導きのままに進みます」


 星原は死体を置いてその場を立ち去った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ナオはやっぱりあれが初体験だったのかな…だとしたらヤクもはいってるとはいあの躊躇のなさで今まで人を殺してなかったの奇跡だな。
[良い点] 第60部分到達、お疲れ様です! [気になる点] >佐久間は猟銃を握り締めて星原を凝視する。 >何かを確認するように鼻を動かした末、彼は興味を失ったように歩き出した。  佐久間の「悪センサ…
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