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岬ノ村の因習  作者: 結城 からく


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第58話 多発する問題

 森に入る前、羽野は拳銃を持って村長に告げる。


「狙撃犯を始末してくる。一時間もかからんだろう」


「うむ、任せたぞ」


 羽野が立ち去ると同時に、村長はその場にいた男に指示を出した。


「明かりを増やせ。暗闇は焦りを生むからのう」


「いいのか!? また撃たれるぞ!」


「羽野達が排除に向かった。居場所が知れる危険を考えれば、相手も迂闊に撃てんじゃろう」


 村長の指示を受けた村人達はさっそく松明を増やした。

 懐中電灯やライトも使って周囲の闇を払う。

 村の中央部は昼間のように明るくなり、森の闇が余計に際立つ。

 狙撃犯からすれば格好の的になるはずだが、村長の予想通り弾丸が飛んでくることはなかった。


 村長は村の人間を集めて状況説明を行った。

 その上で柔和な笑みを浮かべて見解を述べる。


「狙撃犯は生贄とは違う人間じゃろう。だが心配はいらぬ。すぐに我々の胃の中に収まることになるからのう」


 村人達は大笑いする。

 狙撃に動転した彼らだったが、残虐な気性を取り戻しつつあった。

 夜闇の不安が霧散し、集団意識による安心感が募っていく。

 一部の者は人肉料理をつまんで英気を養っていた。


 その様子に村長は満足する。


(羽野が獲物を仕留め損ねたことは一度もない。あとは逃げた女さえ見つければ……)


 村の外れから一人の男が走ってくる。

 血相を変えた男は、息を切らしながら村長達に報告をした。


「おーい、大変だ! 岬トンネルが燃えとったぞー!」


 治まりかけた動揺が再び噴き上がった。

 村人達は顔を見合わせて狼狽える。


「どういうことじゃ!」


「中の連中はどうなった!?」


「事故か!? それとも生贄の仕業か!?」


「たぶん他にも敵がいるんだ!」


「さっきの狙撃犯かもしれんぞ……!」


 一発の銃声が沈黙を生み出す。

 空に向けて拳銃を掲げるのは笑顔の村長だった。

 銃を仕舞った村長は表情を変えずに言う。


「とりあえず落ち着け。情けない姿を見せるでない」


 大多数の者はそれで口を噤んだが、勢いが止まらない者もいた。

 特に動揺する二人の村人が村長に詰め寄っていく。


「何もかも滅茶苦茶だ!」


「どうするんだ村長っ」


 村長の襟首を掴む寸前、二人はほぼ同時に倒れた。

 その弾みで首が胴体から離れて転がる。

 遅れて断面から血が溢れ出した。


 穏やかな笑みを湛える村長は、杖を模した鞘に刃を戻す。

 それは仕込み刀だった。

 持ち手を押し込むと何の変哲もない杖となる。


 村長は二人の首を一太刀で落としたのだ。

 欠片の殺気も見せない電光石火の早業であった。

 村長は二つの生首を見下ろして叱る。


「落ち着けと言ったじゃろ。ワシの話を聞け」


 今度は誰も異議を唱えなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] よし…村長と佐野を討ち果たしてしまえば…残りは容易く済みそうだ
[良い点] 更新ありがとうございます! [気になる点] >(佐久間が獲物を仕留め損ねたことは一度もない。あとは逃げた女さえ見つければ……)  ……え? これ、誰のモノローグ? まさか村長? だとした…
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