表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
岬ノ村の因習  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/100

第50話 狙撃手

 夜の獣道を歩く老人がいた。

 拉致されたリクとナオを救った男――佐久間である。

 佐久間は顰め面で猟銃を持ち、黙々と山を登っていた。


 彼は人目を避けたルートを選んで進む。

 車は麓に着いたところで乗り捨ててあった。

 移動は楽だがエンジン音で居場所を知られやすいためだ。

 佐久間にとっては、徒歩の疲労と手間より隠密行動できないリスクが問題だった。

 ちなみに使っていたのは盗難車なので惜しくはない。


 歩き続けていた佐久間が不意に足を止めて屈み込む。

 眉間の皺を深め、瞳は憎悪の炎を燃やしていた。

 彼の視線と意識は五十メートルほど先に向けられている。


 そこには五人の村人がいた。

 彼らは懐中電灯で周囲を照らし、逃げた生贄の捜索を行っている。

 ただし、あまり連携が取れておらず、佐久間の存在にも気付いていない。

 五人は捜索に回されたことに不満を抱き、それについて愚痴を洩らしていた。


 佐久間は膝立ちになって猟銃を構え、装着したスコープを覗き込む。

 拡大された視界の中で、照準が吸い寄せられるように村人の頭部を捉えた。

 佐久間は意識的に呼吸のペースを遅める。

 手ブレはほとんど無く、存在感を消して狙撃体勢を保っていた。

 彼は引き金に指をかける。


「悪だ」


 弾丸が愚痴る村人の額に風穴を開けた。

 その男は白目を剥き、呆けた顔で何が起こったか理解できずに倒れる。

 乾いた地面に鮮血が染み込んでいく。


「悪は殺す」


 別の村人の片目に弾が飛び込んだ。

 弾は脳内を掻き混ぜて頭蓋ごと粉砕する。

 村人は鼻から血と脳漿を噴き出して崩れ落ちた。


「くたばれ」


 二人の犠牲に仰天し、樹木の陰に隠れようとする男がいた。

 しかし、その前に首を撃ち抜かれて失敗する。

 地面に横たわって溺れる男は、必死に息をしようとしていたが間もなく絶命した。


「くたばれ」


 焦って銃を乱射する男は、胸を撃たれて転倒した。

 仰向けに倒れた男は、己の心臓が止まる瞬間を知覚する。


「くたばれ」


 逃げ出した男は後頭部に弾丸を食らった。

 勢い余って樹木に激突して倒れ、そのまま起き上がることはなかった。


 佐久間が発見した捜索隊は全滅した。

 五発の弾丸で五つの命を奪う、無駄のない完璧な狙撃だった。

 それでも佐久間の顔は微塵も晴れず、どろどろとした怒りと憎悪に支配されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 老人と海、老人と山ならぬ老人と悪やな [気になる点] 5連射もできるんだ…散弾を発射する描写もあるから単銃身のセミオートかな。(今ググった)金カムの谷垣が持ってたっけ
[良い点] 第50話到達、おめでとうございます!  ……ああ、佐久間の狙撃で村の人非人どもが効率良く消されていく光景に爽快感を感じる。 [気になる点]  しっかし、今の佐久間が殺戮バカップル見つけた…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ