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岬ノ村の因習  作者: 結城 からく


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第46話 略奪者

 佐伯が道路にぐったりと倒れている。

 彼女は気を失っていた。

 後頭部を地面に打ったが、幸いにも血は出ていなかった。

 倒れた弾みでショルダーバックに入れた遺骨が少しこぼれている。


 追突した軽自動車から若い男女が出てくる。

 派手なスーツを着た男はリク、地雷系ファッションはナオだった。

 村人に拉致されたものの、紆余曲折を経て逃れたカップルである。

 現在はカーナビを参考に岬ノ村へ向かう最中だった。


 ハイテンションのリクは、気絶した佐伯を前にはしゃぐ。


「やっば! 人間じゃん! ついついやっちまった! たはっ」


「あーあ、どうしようねー、死んだかなぁー?」


 とろけた笑顔のナオは佐伯のそばに屈み、指で頬をつつく。

 佐伯は反応しない。

 ただ、微かに呼吸をしていた。


 リクは佐伯を背負って持ち上げて言う。


「とりあえず運ぶか。道路に放置したら警察とか呼ばれそうだ」


「さすがりっ君! 頭いいねー」


「だろ! 中学の頃は成績良かったんだぜ?」


 自慢げなリクは、佐伯を後部座席に放り込んだ。

 ドアを閉めたところで、彼は路上に落ちた散弾銃に気付く。

 銃を拾ったリクは子どものように目を輝かせた。


「うわっ! 銃だ! これ本物か!?」


「ねえねえ、試しに撃ってみようよー」


「そりゃいいな! じゃあ的は……」


 リクは興奮気味に周囲を見回す。

 その時、山の方面からクワを持った村人が現れた。

 村人は「こっちから叫び声が……」と呟きながら近付いてくる。

 目を見開いたリクは村人に散弾銃を向けた。


「お前に決めたっ!」


 夜闇に発砲音が轟く。

 同時に二発放たれた散弾は村人の腹に炸裂した。

 破れた臓腑が飛び散り、村人は声も出せずに倒れて絶命する。

 壮絶な結果を見て、リクは散弾銃を振り回して大喜びした。


「おっほ、マジじゃん! モデルガンとかじゃなかった! 本物の銃だーッ!」


「すごい、一発だよ! りっ君は才能あるね!」


「ははは、それほどでもねえよ。今のはマグレ……いや、ちょっと実力かも?」


「うんうん、実力だよきっと!」


 ナオも興奮し、リクに抱き着いて首筋に何度もキスをする。

 にんまりと笑うリクは、ナオの尻を揉みながらキスを返した。


 二人は車内に戻ると、道路沿いに進み始めた。

 彼らはすぐに車で上がれそうな山道を見つけ、そこから道路を外れて突入する。

 軽自動車は悪路も遠慮なく加速し、山の中を豪快に進んでいった。

 蛇行運転でガードレールや標識にぶつかるが気にすることはない。

 リクは缶ビールを飲みながらしみじみと言う。


「あの爺さんを追っかけてよかったなぁ。なんか途中で見失ったけど」


「どこに行ったんだろうねー」


「絶対にミサキノムラだ。楽しいことを独り占めするつもりなんだよ」


「えー、許せなーい!」


 缶チューハイをストローで飲むナオは、ぷんぷんと可愛らしく怒る。

 リクは缶ビールを握り潰し、不敵に笑った。


「許せないから俺達も行くぞ。やりたい放題の殺戮パーティーだ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] バカップル再び(苦笑)。 [気になる点] >「うわっ! 銃だ! これ本物か!?」 >「ねえねえ、試しに撃ってみようよー」 >「そりゃいいな! じゃあ的は……」  とりあえず的が佐伯ちゃん…
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