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岬ノ村の因習  作者: 結城 からく


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第27話 真実の発露

 安藤が足を止めたのは小さな祠の前だった。

 連行してきた村人の前に回り込み、短機関銃を向けながら言う。


「さて、この辺りでいいかな」


 村人は後ずさろうとするも、松田がいたので踏み留まる。

 前後から挟まれたことで何もできずに固まってしまった。

 安藤は短機関銃を突きつけたまま問いかける。


「岬ノ村について教えてくれるかな。人数、武装、組織図、弱点……なんでもいい。素直に答えてほしいんだ」


「あんたら村を攻撃するつもりか!? 俺は絶対に裏切らんぞ! 野蛮なよそ者が」


 村人の叫びが途切れた。

 彼は地面を転げ回って悶絶している。

 安藤は短機関銃とは別にスタンガンを持っていた。

 それを村人に押し付けたのである。


「悪いけど時間がないんだ。答える気がないなら殺すよ。情報収集はまた別の村人を捕まえればいいからね」


 悶える村人の頭に銃口が押し付けられた。

 安藤はゆっくりと聞き取りやすい声で質問を投げかける。


「それで、あなたは、何か、教えてくれるのかな」


「ひ、ひぃっ」


 村人の忍耐が限界に達した。

 死の恐怖の前では、意地やプライドなど保てなかった。

 彼は訊かれたことに次々と答え始める。

 安藤は頷きながらそれぞれの情報を記憶していった。


 周囲を警戒する松田は、そのやり取りを苦々しい顔で見る。

 その目には少なくない嫌悪感が込められていた。


(……こいつ、本当に刑事デカなのか?)


 尋問を中断した安藤が顔を上げる。

 彼は松田に尋ねた。


「今、失礼なことを考えたね」


「自覚あるじゃねえか」


「冷酷とは言われるかな。最適解を選んでいるだけなんだけど」


 特に気にした様子もなく、安藤は尋問を再開する。

 彼は表情を変えずに村人を問い詰めた。


「他に隠していることはないかな。よく思い出してごらん」


「は、はぁ……ひ、ああぁ……」


 村人は頭を抱えてうずくまる。

 その姿勢のまま命乞いをし始めた。


「うう……どうして、こんな目に遭うんだ……お願いだ、助けてくれよ」


「僕達に協力してくれたら検討するよ。死にたくないのなら仲間を裏切ることだね」


 安藤は冷徹に告げる。

 すると村人は乾いた笑い声を洩らす。

 くつくつと背中を震わせる姿は薄気味が悪い。

 村人はじっと安藤を見上げる。

 その顔には直前までの恐怖ではなく、粘質な悪意がこびり付いていた。


「へへ、あんたら終わりだぞ……岬ノ村に手を出しちまった。逃げても無駄だ。必ず報復がやってくる」


 それを聞いた松田が村人を睨み、挑発気味に口を挟んだ。


「報復だと? みさかえ様ってやつの祟りでもあるのか」


 村人が不意に下を向いた。

 そしてぼそりと呟く。


「……おらん」


「あ? 何がだよ」


「みさかえ様などおらん! そんなものは存在せんのじゃ!」


 顔を上げた村人は、凄まじい形相で言い放った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! >村人の忍耐が限界に達した。 >死の恐怖の前では、意地やプライドなど保てなかった。  でしょうねぇ。保てるとしたら、聖人か死にたがり屋ぐらいのものかと。 …
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