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おまけ①

特にオチも無い、本当にただのオマケです。

というより、包み隠さずに言いますと宣伝です。

近日投稿予定の外伝作品のちょっとした繋がりとなっています。3本立てです。


よければ、ガリ感覚でどうぞ。

 



「お疲れ様でした。これで査定は全て終わりとなります。3日間も大変でしたね」

「いえ。どうもお世話になりました」


 ギルド受付嬢に礼儀正しく挨拶をしてから、チェニアはロビーを出た。


「ん~。終わったー」


 大きく伸びをし、後ろを振り返る。


 冒険者ギルド、パデス支部の荘厳な門構えは他の支部に比べていやに仰々しい。


(なんだか変なの)


 ちょっとした砦のように立派なギルドの門を見上げてチェニアは首を傾げた。なぜ、この支部はこんなにも豪華な造りなのだろうか。


 しかし、特にそれ以上の興味も沸かず、チェニアの足は東通りの市場へと向かっていた。


(みんなも寂しくしてるかな。お土産、何にしよう)


 ウイードスギルドで留守番している他三人のメンバーの事を思い出し、自然と顔のほころぶチェニアなのであった。







 今現在、チェニアは一人でランタール地方に位置する町、パデスに来ている。


 クエストや観光に寄った訳ではなく、他に事務的な用があっての事だ。

 数年に一回あるリーダー査定の件で呼ばれたのだ。



 Aランク以上のパーティーに昇格すると、貴族や行政関係者からのクエストも受注出来るようになる。

 しかし、依頼内容が重大な案件である事が多いため、受注するパーティーには技量以外にも別の要素が求められるのだ。


 つまり、重大なクエストを任せられるだけの信頼性や実績などが査定されるのである。


 通常は各支部から送られるギルドマスターの報告書などで査定されるが、パーティーリーダーも定期的に面談をする義務がある。


 面談場所は所属するギルド支部によって異なるが、ウイードスギルド含むミッスル地方ギルドの半分ほどはパデス支部での面談となる。


 チェニアはそのために来たのだ。






 3日間の泊まりがけの査定も終わり、ようやくリーダーとしての義務を終えたチェニア。


 後はウイードスに帰れば良いだけだが、パデスの町は彼女にとっても初めての町という事もあり


(少し観光してこうかな)


 という気分になっていた。




 東通りの市場は周辺の農村からの出張店が多く、農作物や乳製品、その村の特色を活かした特産品などが多く売られていた。



「はーいっ、たっぷりボリュームの特大丸パンがお安くなっておりまーすっ! ぜひ買っていってくださーいっ!」

「ドリアドの木製の手作りチャームもあるぞー! さあ、買った買ったー!」

「あの王室も絶賛! エクアル村のワイルドベリージュース! 昔からの特産品だよー!」


 近くの村から出向していた店の前でチェニアは足を止め、ビンに入ったジュースを見た。


「おっ、お嬢ちゃんお目が高いねー。このベリージュースは一級品だよ」

「そうなんだ」


 看板娘らしき少女が歯を見せて笑う。


「お使いかな? そんな良い子にはサービスして割引しちゃう! だから買ってー!」


(私はお子様じゃない。けど、安くしてくれるみたいだし黙っとこ)

「2本買おうかな」

「はいっ、まいど!」


 トミー、アイ、コリンら三人に良い土産が出来たと、満足するチェニアなのであった。


 他にもいくつかの店を回り、良さそうな物を買っていくチェニア。


(これは受付さん達。こっちはサブ達。このヘアピン可愛い。コレットに買ってあげよう。あの曲者おじいちゃんマスターにはこの『濃厚スライム激にが健康エキス』でも買おうかな。酒ビンに詰め替えとこ。にしししっ)



『どっかで見た事あるチンチクリンだと思ったら、やっぱりかよ』


(げっ)


 そんな楽しいショッピングに突如として冷水を掛けられたかのように止まるチェニア。


 聞き慣れた声に思わず苦い顔になる。

 続く二つの声が彼女をさらに渋くする。


『ほんと。緊張感無くウロチョロして』

『ふん。まるで子猫だな』


 すぐ後ろまで近づいた三つの気配に、チェニアはそっとため息をついて振り返った。


「よお、チェニア~。奇遇だな」

「ごきげんよう。奇遇ねえ」

「奇遇だな」


 そこにはモブド、ワキーナ、エキストらAランクパーティーリーダーの三人が不敵な笑みを並べて立っていた。


「流石はSランク様は呑気なもんだな。やることやったら、ショッピングかよ。大したもんだ」

「それ程でも~」

「褒めてねえよ!」


 チェニアは何時もの眠たげな表情のまま三人を見比べた。


「あれ? なんで三人がここに居るの?」

『Aランクリーダーだから!!』

「あ、そっか」


「このチビがあ~!!」

「ほんっとうっに生意気!」

「おのれえっ!」


 いきり立つ三人の発する覇気に通行人達がざわついて避けていく。

 それに気づいたチェニアがなだめにかかる。


「まあまあ、せっかく晴れて査定も終わったんだし、ここは穏やかにいこーよー」

「ああん? 茶かしやがって······」

「それで誤魔化せると思ってんの?」

「愚弄する気か!」


 そうやって四人が騒いでいるところへ、通りかかった老人が声を掛けた。


「おや、若者達よ。何をそんなに苛立っておるのじゃ?」


 モブドらリーダー三人は苦い表情のまま老人に向いて首を横に振った。


「大した事じゃねえさ」

「あたし達の問題よ」

「気にするな」


「ほっほっほっほ」


 老人は朗らかに笑い、その場のチェニアら四人を見回した。


「お前さん達、別の町の冒険者じゃな? しかも、かなりの使い手と見た」


(へえ?)


 意表をつかれたような三人とポーカーフェイスのままのチェニアに、老人は微笑んだ。


「こう見えて、ワシはここでちょっと前までギルドマスターをしてての。おかげで冒険者を少し見るだけで大体の実力が分かるようになってのう。職業病というやつかな」


 老人ほ柔らかい物腰のまま、四人の後方を指差した。


「本来のパデス支部はあっちの北通りを逸れた所にある。まだ行った事ないなら一度行ってみるといい」


 言いたい事は言ったというように、老人は四人の返答も待たずにそのまま行ってしまった。


「······なんだあの爺さん」

「本来のパデス支部って何かしら?」

「知らん」


 モブド、ワキーナ、エキスト三人は訝しげな視線を宙にさ迷わせていた。


「······」

(本来のパデス支部?)


 そろそろ宿に戻って帰り支度をしようと考えていたチェニアであったが、老人の言葉に興味を抱き、北通りへと足を向けた。


 歩き出したチェニアに三リーダーが気づいて追いかける。


「おい、どこ行くつもりだ?」

「······ストーカー?」

「ちげえよっ······いや、違くねえかもしんねえけど、んなこたどうでもいい。さっき出た話のパデス支部に行くのか?」

「うん。本来のってどういう意味かなーって」

「別に大した意味でもないんじゃない?」

「でも暇だからねえ」

「まったく。付き合う身にもなれ」


(あれ? 私、付き合ってくれって言ったっけ? ま、いっか)


「ねーねー、三人はパーティーへのお土産買ったー?」

「ああ。美味そうな酒があったからな」

「あたしはハチミツよ。みんなでスイーツでも作ろうと思って」

「我は断然肉だ。バトルアックス並みの枝肉を手に入れてな」

「へえー。三人とも意外に仲間想いだね」

「見た目通りって言ってくれ」

「出来る女でしょ?」

「将は家臣を養うのが当然だ」


 チェニアが普通に話を振れば、すんなりと親しげな会話が生まれるのが、この四人の不思議な関係であった。



 そうこうしている内に、なんとなくで始まったクエストはすぐに終わりを迎えた。



 林を少し切り開いたくらいの道の先に、目的地らしき場所が見えてきた。


「あん? んだ、あそこにもギルドがあるじゃんかよ」

「あら、本当ね」

「ぬ?」


 素朴な木こりの通り道のような先には、これまた昔ながらの味の漂うコテージのようなギルドが立っていた。


 庭先に入る四人。


 庭は丁寧に手入れされており、所々の花壇には可愛らしい花が風に揺れ、その風の中にほのかな薔薇の香りも混じっている。


 ギルドは母屋らしき建物と、厩舎。さらに、もう一つアパートのような建物からなっていた。


 それだけではなく、裏庭にはちょっとした果樹園と畑に植物園的な施設もあるのだが、四人からは見えなかった。


「あら、素敵な所じゃない」

「なんか気の抜けるような所だな······」

「ぬう。我はこういう女々しい場所は苦手だ」


 チェニアは近くのつる薔薇に近づき、重たげに垂れた白い薔薇を指先に乗せて、そっと鼻を近づけた。


(良い香り······薔薇の匂いって好きだな)


「んだよ。お前みたいな奴でも薔薇とか興味あんだな」


 モブドが周りを見回す。


「冒険者の集うギルドにしちゃあ、こう、気取った宿屋って感じの庭だな」

「でも、こういうギルドってたまにあるよね」

「チェニア、こんなバカ男どもには華の世界は分からないわ」

「ふん。食えぬ植物など腹の足しにならんわ」


(こういうギルド、好きだな。少し冒険者らしくない趣向かもしれないけど)


 冒険者とは夢溢れる職業だと若者に人気であるが、その現実は命を賭けた殺伐とした物である。


 モンスターの大半は人命を容易く奪う力を持っており、当然ながらそんな相手と戦えば命を落とす事は珍しくない。


 そんな冒険者ギルドは大体、独特な雰囲気を醸した宿になる事が多いが、チェニア達が居るここはその雰囲気が無かった。


「本当にここギルドなのか?」

「鳥目ね。あそこにマークがあるじゃない」


 母屋と思わしき正面の建物の入り口には、冒険者ギルドの紋章である、握手を交わした人の手と剣のマークが描かれた看板がかかっていた。


「ああ、確かにギルドだな。しかし、あのマーク、ちょいと変わってねえか?」

「そうだな。我らの紋章はシンプルだが、あの看板は何やらゴチャゴチャとしてる」


 看板の端には、マークを囲うように杖や薬草やハンマーの絵などが描かれており、まるで落書きのようであった。


(古い看板だ。でも、特殊な魔法薬でコーティングされてるみたい。ほとんど劣化してない)


 魔法に詳しいチェニアは、すぐにその看板が見た目よりも古い物である事に気づいた。



「こんな所じゃあ、上級クエストの依頼は無さそうだな」

「木の実や薬草を採るのが似合いそうねえ」

「ふん。モンスターの討滅。それこそ冒険者の華よ」



 冒険者はモンスターを討伐するのが主な仕事だが、それだけの職業ではない。


 モンスター討伐以外にも、薬草の採集や地形、環境の調査。生態系のデータの収集。

 ダンジョンなどの内部調査、行商用の馬車の警護に、隊商の安全ルート確保。

 単なる討伐だけがクエストではない。いわゆるボディーガード的のような依頼も舞い込むのだ。


 それらはいずれもモンスターに関連するもので、冒険者の対モンスター能力は重宝される。


(考えてみれば、冒険者って結構いろんな仕事あるなあ。私達もたまに討伐以外のクエストやるし)


 チェニアら四ツ葉も、地質学者やモンスター専門の学者を伴ってのダンジョン探索に何度か赴いた事がある。


「冒険者って、結構色んな役割あるよね。モンスター倒すだけじゃなくて、お宝探したりとか。あれワクワクして好きなんだよね」

「あん? Sランク様でもんなネコババみてえなクエストやる事あんのかよ」

「皆はやんないの?」

「あたしがガラクタ集めなんてすると思う?」

「我は大物しか興味ない」

「偏食~」


 そう言ってからチェニアがふっと腹に手を当てた。


「そう言えばそろそろ昼食の時間だね」


 チラリとギルドを見る。


「お腹空いたなあ」


 その呟きに、モブド、ワキーナ、エキストの三人がズイっと前に出た。


「仕方ねえなあ。何か奢ってやるか」

「あら、あたしがチェニアにご馳走してあげるから、貴方は帰っていいわよ?」

「寝言を抜かすな。飯は我が付き合ってやる。貴様らはその辺りで野イチゴでも食うがいい」


『······』


「おいっ、チェニア、俺と飯食いてえよな?」

「あたしよね?!」

「我だろう?!」


 一斉に振り向いた三人。しかし、そこにはチェニアの姿は無かった。


「って、居ねえ!」


「おーい、三人ともー」


 既にギルドの入り口を開けていたチェニアが三人を手招きする。


「良かったら一緒に食べない? 奢るよー」

『······』


 三人はバツの悪そうな顔をして、その後に続いた。


もう少しだけ続きます。

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