㉗──宴
エピローグ的な話です。短いです。
一つの区切りとなっております。
「四葉の皆さんに感謝の意を捧げ、カンパーイ!!」
『おおおーっ!!』
村長の音頭と共にジョッギが上げられ、村人達は歓声と共にビールを一気に煽った。
その表情は喜びに満ちていた。ついさっきまで希望を失いかけていた顔は全て饗宴の渦に飲み込まれて消えてしまったらしい。
「皆さん、本当にありがとうございました!僕らに出来る事なんてこんな事くらいですが、どうぞゆっくりしていって下さい!」
「うん。ありがとう。今日は遠慮なく美味しい物をたくさん貰うね」
頭を下げ続けるワス少年に笑顔で応えたチェニアは仲間達に振り返った。
「みんな。せっかくこうやって歓迎してもらってるんだから、遠慮しないでご馳走になろう」
「おう、そうしよう」
「そうね」
「うん、せっかくだし」
トミー、アイ、コリンの三人も笑顔で応えた。あっちこっちに残った傷はまだ痛々しい模様をありありと伝えていたが、反面、表情は爽やかであった。
四葉はフォロウに勝った。フォロウは消滅した。
この報せがサナグ村にどれだけの活気を与えたかは──もう語るまでもないだろう。
流石の四葉の面々も、クエスト終了時には疲労困憊であり、チェニアですらしばらくは動けないでいた。
そして、日が傾き始めた頃になってようやく村へ報告のために帰還し、村人達が森を調べてフォロウの消失を確信したのであった。
今は村人達の感謝の祝宴を受けて、四葉は今日の疲れを癒していた。
「うおおっ、うめえ!この肉うめえ!?」
「このジュースおいし~!ブドウが渋くない!」
「こ、これは珍味なキノコ!一体何のキノコだ?!」
疲れていたのもあってだろう。四葉は何時もよりも更に良く食べてご馳走を堪能した。
怪我だらけの三人を眺めながら、チェニアもジュースをゆっくり飲んだ。
(ヒールする余裕もないくらいだったな。魔力がすっからかん。みんなもボロボロ。私達らしくない姿だ)
しかし、チェニアはにこやかな表情で満足感に溢れた様子でご馳走に手を伸ばした。
(だけど、この姿こそ私達四葉の本当の姿かもしれない。私が思い描いていた······)
最強でなくていい。
ただ、最高であって欲しい。
弱くて傷つこうが、毎日ボロボロであろうと、悔いの無い生き方を仲間と共にしたい。
それが、チェニアが願っていたパーティーの姿だ。
「ねえ、チェニア。その手にある宝石は?」
「ん?これ?これはフォロウの欠片だよ」
「えっ?嘘?!それ、フォロウの一部なの?」
驚くアイの声にトミーとコリンの二人も目を丸くする。チェニアの掌には黒い宝石があった。
「へえ!それがフォロウなのか」
「でも、実体は無いはずだよね?」
「うん。よくは分からないんだけど倒すとこの石を落とすんだ。これが正体なのかもね」
「へぇー。それ、どうすんだ?」
「ギルドに提出。証拠になるし、これで研究解明が捗るから」
「お手柄だね、チェニア」
「うん、みんなのね」
トミー、アイ、コリンの三人は照れたようにジョッギに口を付けて俯いた。
「なあ、チェニア」
「ん?なに?」
「どうして今回のクエスト受けようと思ったんだ?」
「あ、あたしも気になった」
「何か思う所があったんだろうけど」
「んー······。内緒」
「え~?」
チェニアにはもう一つ夢があった。
幼い頃に少しだけ見た夢だ。
『いつか、絵本の中に出てくる勇者のような人間になりたい。困ってる人を助けてあげれるそんなカッコいい勇者に』
その夢も今日叶ったような気がしていた。
宴は夜遅くまで続いたと言う。
彼ら四葉の冒険はまだ続く······。
お疲れ様でした。
もう少し続きますが、ストックが残り僅かになった関係で少し間を空けます。
早ければ一週間後の土曜、日曜には再開すると思うので、このまま連載として留めておきます。
この次の章もぜひご一読いただければ嬉しいです。




