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⑱──チェニア

チェニアの視点です。

 

 さてさて。


 やーっと長い報告が終わった。まったく、私達はブラックワイバーンとの激戦の疲れが癒えてないというのに。人使いの荒いギルドめ。


「んん~······ふうっ」


 ──ポキポキポキ──


 背伸びしたら背中の骨が悲鳴を上げた。大分固まっていたようだ。まだ若いのに~。これじゃあっという間に私はお婆ちゃんだ。


「みんな終わったかな?」


 今回はみんなで報告のためにギルドに来ている。そう、私達Sランクパーティー『四葉』が四人全員揃って登場だ。

 なんと言ってもたった四人でブラックワイバーンの討伐を果たしたのだ。前代未聞、超絶怒涛の精鋭パーティーである。



 さあ、ここで私の素晴らしい仲間達を紹介しよう。



 まずは──ばばんっ。

 我が四葉の前衛にしてメインアタッカーのトミー。


 普段はニヒルでナイスガイな男性。物静かで落ち着いたアダルティな物腰とクエスト中の熱いハートの二面性を併せ持ったタフガイっ。

 痩せてるけど沢山食べるのが趣味で、私が一番最初に勧誘したメンバーでもある。




 続いて──じゃじゃんっ。

 同じく前衛であり、斥候役でもあるトリックスターのアイ。


 同い年くらいとは思えない色気と大人びた魅力を持った美少女。あらゆる種族のスキルを持った唯一無二のミラクルガール。

 でも、その中身はいたって普通の女の子。可愛い物と甘い物には目がないぞっ。




 最後に──どどんっ。

 四葉のアイテムマスターにして名狙撃手、サポーターのコリン。


 強力な矢によって敵を弱らせる戦闘スタイルと、ユニークスキルの力を活かして私達の装備やアイテムを強化してくれる出来るボーイだっ。

 最年少とは思えない程に冷静なコリンは、カッコよかったり渋い物が好きなロマン派だっ。




 この個性的かつ最強な三人が私の仲間だっ。

 私、トミー、アイ、コリンの四人で四葉なのだ!




 ···············。

 なのだが········私達には致命的な弱点が存在する。

 いや、弱点とは言えないのかもしれないけど、特殊な事情があるのだ。



 その事情というのが、全員が秘密を持ってるということ。悪く言えば互いに隠し事してる。


 私はサトリというユニークスキルを持っている事を隠している。このスキルは他人の思考や記憶を読み取れるスキルだ。

 そんな私のスキルにより、明らかになった三人の隠された秘密とは?



 トミー。異世界人。元しゃちくさらりーまん。追放に怯えてる。


 アイ。異世界人。元じぇーけー。追放に怯えてる。


 コリン。異世界人。元ちゅーにびょー。追放に怯えてる。



 以上が三人の正体。まあ、元なんちゃらかんちゃらの称号は、異世界用語らしいので私にはイマイチ分からないが、ジョブとかみたいな名称だろうということは分かっている。


 問題なのはそこじゃない。異世界人だというのは別にいい。とんでもない話ではあるけど、別世界が存在してそこから転送されてきたというのはまあ良いだろう。


 問題なのは、三人とも追放に怯えてるという事だ。



 私は三人が生まれ育った世界の文化の全てを知る訳じゃないので何とも言えないのだが、彼らの世界には変わった書籍物があったらしい。


 それが『追放系』というジャンルの創作物。

 Sランクパーティーとかに所属する人間──主人公が、クズだ無能だカスだ役立たずだゴミだ死ねだの罵倒されて追い出されるという中々に刺激的なコンテンツだ。読んだ事ないけど、なかなかにシビアでシリアスな小説だ。


 ともかく、三人はそんな小説の影響を受けてか、自分達もいづれは似たような運命を辿ると考えているようだ。



 冷静に考えてほしい。私が、このチェニアちゃんが、『ザーコ!バーカ!無能!ゴミ!キモっ!クズ!カス!』とか言うと思うかね?


 まあ、なんにせよ。少し思い込みが激しい仲間達なのだ。心配なんて要らないのに。

 リーダーの私が言うと親馬鹿というか、リーダー馬鹿になってしまうかもしんないが、みんな凄く優秀なんだから。


 トミーの攻撃力、アイの補助と撹乱、コリンの援護とサポート。そして私の指示と魔法。

 これらが絶妙なバランスで噛み合ってるおかげでSランクの力が出ているというのに。



 それに、実力も大事だけど三人にはもっと良い所がある。

 それはみんなすごく良い人達という事だ。


 仲間想いだし、真面目だし、優しいし、私のようなチンチクリンの言う事とか、下らない冗談を聞いてくれる。おかげで私は夢だった自分の理想的なパーティーを手に入れられたんだ。


 だから私が三人を追い出すなんて事は絶対にあり得ない。もちろん、事情によってパーティーを解散したり、本人が望んで出ていくという事はあるかもしれないが、そうなりそうになったら全力で回避する。というか逃がさないぞ。





 Sランクの称号は手に入ったけど、私達にはあと一歩の勇気が足りない。本当に自分を受け入れてもらえるかどうかという不安を消せないのだ。



「みんな居るかな?」


 ギルドの裏方の廊下から受付カウンターに出る。

 酒場を覗いてみると、三人は既にテーブルに着いて待っていた。気を遣ってか、水しか飲まないで。


「みんなお待たせ。早かったね」

「お疲れチェニア」

「お疲れ様チェニアー」

「チェニアお疲れ様」

「今日は調書作るだけで昼になっちゃったね。クエストは休みにしてご飯にしよっか」

「おお、腹減った」

「あたし、賛成」

「ちょうどいいね」

「はい、では本日のクエストです。みんなでワイワイお昼ご飯食べようクエストです」

「ははは、そんなクエストなら毎日受けたいな」

「チェニアは今日も好調ね」

「なら、気合い入れて臨もうか」




 色々あるかもしれないけど、今日も私達四葉は平和だ。ドタバタする事もあるけど。


 だけど、こんな少し奇妙な日常が私は好きだ。私と、仲間達のこんな日常が──


この次からは一話読み切りの日常回になります。

お疲れ様様でした。ぜひ、これ以降も楽しんでいただければと思います。

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