⑯──アイ
アイの視点です。
「ふぅ~」
疲れたーっ。
長い調書作りがやっと終わった。
やっぱりこの間の砦の戦いすごかったもんね。
ブラックワイバーン。ワイバーンの稀少種っていう事もあってギルドの方でも情報を集めたいとかなんとか。
確かに今までの敵の中でも1、2を争う強さだった。あんなに苦戦したのは白銀のフェンリル以来だったなぁ。
でも流石Sランクパーティー『四葉』。いや、あたしなんかが語るのもおこがましいかもだけど、やっぱり凄い。
まさかたった四人であんなのに勝てるなんて。
あたしの名前はアイ。と言っても、これは仮の名前。本当の名前は愛。まあ、おんなじか。
あたしは元々この世界の出身じゃなくて別世界の日本から来た。そう、いわゆる転生者!
転生者と言えばファンタジー!転生者と言えばチートスキル!転生者と言えば無双!
はい。そんな事なかったです。
あたしはチート改造人間とも言うべき器に転生したんだけど、それは失敗作だった。
沢山のスキルを持ち合わせ、そんな存在は唯一無二らしいっちゃらしいんだけど······。
それらのスキルのほとんどは斥候、隠密、仲間の補佐などで、あたし自身はクソザコナメクジ。戦闘力が低かった。
そんな事実も、転生者であるという事実も、どちらも隠しながらSランクパーティーで活動している今日この頃。
いや、本当に運の良い事に、あたしは弱いんだけど味方が強すぎてその事実すらかき消されてる感じ。というかこのパーティーはガチで強い。まさにチート無双ってやつ。
でも、四葉の良い所は実力だけじゃない。皆が良い人ばかりだという事。
トミーは大人の落ち着きというか、やっぱり年長者らしい頼もしさがあるし、コリンは年下男の子らしさもあって可愛いけど、すごく気配りも出来る良い子だ。
でも、なんと言っても我らがリーダー、チェニアが本当に良い子っ。
チェニアはリーダーというだけあって面倒見良いというか、とにかく他のメンバーの事を本当によく見てる。あたしが困ってたり悩んでると、言葉にしてもないのにぜーんぶ分かってくれる感じ。
まるで心を見透かされてるみたい。それくらい他人の気持ちに敏感な子なのだ。しかも優しい。
しかも出来るリーダーというだけじゃなくてチェニアったらお茶目でチャーミングなのがまたズルい。
なんと言うか天然ちゃん?みたいな所あるんだよね。不思議っ娘と言うか。たまーに何考えてるのか分かんない時もある。
でも、強くて優しくて面白くて不思議なリーダーという非の打ち所の無い子なのだ。
そんな仲間達に恵まれたパーティー四葉はまさに天国っ。
だから大丈夫、だとは思うんだけど······たまに不安になる。
あたしがザコだってバレたあかつきには──
『アイ、よくも今まで欺いてくれたな』
『僕らの目を誤魔化せると思ったのかい?』
『アイ。このウルトラチャーミングリーダーのチェニアちゃんの権限により君は追放だっ』
とかってなるかもっ!
·········。
まあ、流石に無い。はず。と思いたい。だけど、やっぱり不安になったりもする。
あたしなんて居なくたって四葉はきっと強いままだと思う。あたし一人欠けたところでSランクパーティーという称号に揺るぎはないんだと思う。
だから考えちゃうんだ。あたしの価値ってどうなんだろうとか。それで考えても分からないからどんどん不安になっていって、いつも必死に戦ってる。
それはきっとここに居たいからなんだと思う。縋っていたいのかもしれない。
いつかは見放されるかもしれない。でも、もしかしたら、こんなあたしでも、弱くても良いよって皆が言ってくれるかもしれない。
そんな風に思わせてくれる場所なんだ。このパーティー『四葉』は。
だから、あたしの秘密も、この気持ちも全部話したい。それでちゃんと自分にも向き合ってありのままで居たい。
それで受け入れてもらえたら、きっとそれは──すごく幸せな事だと思う。
「よし······」
これからも頑張る。いつか、あたしがあたしとして認めてもらえる日まで。
お疲れ様です。次話に続きます。




