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⑮──トミー

トミーの視点です。

 


 砦のブラックワイバーン討伐から三日経った。

 今日はギルドの調書作りに呼ばれて朝から大変だった。


「疲れた······」


 冒険者をやってて事務仕事をやるとは思わなかった。なんだか社畜時代を思い出すな。





 俺は元々この世界に居た人間じゃない。いわゆる転生者ってやつだ。あるいは転移者と言うべきか。今は色々あってSランクパーティー『四葉』で冒険者やってる。


 ここではトミーと名乗ってるんだが、俺が転移者であることは他のメンバーにはバレてないようだ。

 隠す必要も無いのかもしれんが、あまり目立ったり注目を浴びたりしたくないと言うのと、カミングアウトするタイミングを逃してしまったのもあり、黙っている。だが、やはり皆を欺いてるようで気が引ける時もあるが······。


 もう一つ。自分の全てを打ち明けられるほど皆の信頼を得ているか分からないからだ。果たして信じてくれるか、受け入れてくれるか······。


 他の三人はみんな良い奴らだ。アイはすごく気遣い上手だし、コリンはいつだって冷静なフォローをしてくれる。


 特に、リーダーのチェニアは年下とは思えないくらいにしっかり者で、俺らを引っ張っていけるだけの力を持った実力者であり、パーティーの雰囲気を良くするムードメーカーだ。

 他人の心をピタリと読み当ててるような程に、こっちの悩みとか困ってる事に対して先手を打って対応してくれる理想的な上司のような存在だ。


 彼女が居なかったら俺は多分野垂れ死んでたろうし、こんなに恵まれた日々を送れてはいなかったろう。


 最近は少しづつだが、やっと他のメンバーと打ち解けてきた気もする。


 話してみると普段はクールなアイは年頃の女の子らしい一面を持っている事も分かった。まるでラノベのヒロインみたいに可愛いくてドキッとすることもある。

 コリンは同じ男同士、男のロマンというか感性が分かり合えたりして嬉しかった。年の離れた弟のような感じだ。その内好みの女とかみたいな下世話も出来ればいいな。



 実力と称号だけじゃなくて居心地もいいんだ。いきなり放り込まれた異世界には戸惑ったが、今ではこのパーティーこそ俺の人生そのものだ。




 ············だからこそ。俺は不安なんだ。



 残念ながら、俺の実力はSランクに届いていない。攻撃的だけならあるいはSランクかもしれない。


 だけど、それだけだ。俺にはアイのようなスキルは一つも無いし、コリンのような支援や補助の能力も無い。

 ましてや、戦局を打開したり、傷ついた仲間を癒したり出来るような万能な魔術師のチェニアには遠く及ばない。


 ただ単にでかい剣を振り回してモンスターを攻撃するだけの脳筋。それが俺の正体だ。しかし、その事は周りには気づかれてないようだ。多分、皆のサポートが優れているからだろう。


「うぅ、ううぅ」


 ヤバい。改めて考えると胃がキリキリしてきた。

 今はまだその事実に皆気づいていないみたいだから俺もパーティーに居られるが、バレたらどうなるか。


 きっと──


『ええ~······トミー、脳筋だったんだ······』

『そうか······しかも異世界だとか社畜だとか訳の分からない事を口走るとはね』

『トミー、君には失望したよ。リーダーとして君のような無能は見過ごせんな。クビ』


「う、うわああああぁ!?」


 思わず叫んだら周りの冒険者らがギョッとして見てきた。


 しまった。こういう噂とかもマイナスポイントになる。気をつけよう。




 本当に四葉は最高のパーティーだ。実力だけじゃなくてメンバーの人格とかそういう点からして。

 まるで子供の頃に思い描いていた冒険の仲間達そのもののように理想的で素晴らしい奴らなんだ。

 俺は四葉が好きだ。このパーティーが俺の居場所だ。


 だけどきっと分不相応な場所だ。

 俺なんか居なくてもこのパーティーは最強で、Sランクのままだろう。その事実に皆が気づくのは時間の問題だろう。いくら誤魔化しても銅が金になれる訳ないんだ。



 それでも、頑張ってれば何時かはきっと──



「······うしっ。これからも頑張るぞ」


 いつかは俺のこの本心を話したい。そして、変わりなく仲間で居させて欲しい。


お疲れ様です。次話に続きます。

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