サウナで疲労回復、どころか疲労感しか味わえない
東山がサウナに入ってしまった。俺が湯船から出られないのはアレがいきりたってしまったからだ。そこで、東山の後追いをしようとするショタコン男に俺はこう提案した。
「ねえ、俺じゃダメなの?」
と自分のを見せながらに。その男は俺の手を掴んできて、湯船から一緒に出るよう合図をした。そして、二人。物陰に隠れて、汚い行為をする。
「ふふっ、今日はとびっきりに可愛いね!」
男のが太ももで擦られる。脳内が気持ち悪いでいっぱいだった。けれど、俺がこれを耐えなきゃ東山が襲われてしまう。
「え?いつも可愛いと思うけど??」
「いつもは金取んじゃん」
「今日だって、貰わないと、生活費が……」
自分のよりも大きな手で強く激しく扱かれる。やばい、足がふらふらとしてくる。あ、背中にキスマーク付けられた。それ一個一万円だわ。
「じゃあ、お友達に手出ししてもいーい?」
「……クッソ、汚ねぇ」
東山とした時とは大違いだ。体温が一気に上がって、呼吸が乱れる。訳が分からない、目がチカチカする。ビュルル、と出した直後は立てなくなるくらい、身体がだるくなった。
「ねえ、まだイケてないんだけど」
その男は咥えろと言わんばかりにソレを俺の口元に持ってくる。俺はだるい身体を引きずって逃げた。
「や、嫌だ……」
「怯えてるサクラくん、可愛いっ♡♡」
仰向けで押さえ付けられて、何度も何度も身体にキスされた。俺はだるさと気持ち悪さでいっぱいで、それどころじゃなかった。寝転がったまま動けなかった。最終的には、奴の精液を顔面にかけられた。死にたくてたまらなくなった。
「……ミア」
でもこんなことしている場合じゃなかった。全身を洗い流して、東山の元へと駆けた。東山はサウナで一人だった。
「サクちゃん、何があったの?」
「何ともないよ」
平気な顔してそう言った。東山が何ともないなら何ともないんだ。そう自分に何度も言い聞かせた。けど、あの光景が脳裏に焼き付いて離れない。
「これは?」
東山が心配そうな表情で、俺の身体に付いたキスマークを押そうとする。その穢れに触れて欲しくなくて、俺は身を引いた。
「触んないで」
そう冷徹に言い放った後で、後悔が押し寄せてきて、俺の言葉で固まってしまった君の手を、指を絡めて繋ぎ止めた。けれども、東山は絡めた指を解いて、
「……ごめん」
とだけ言った。俺は訳が分からなくて、
「こちらこそ、ごめん」
と謝っておいた。二人の間に気まずい空気が流れる。この重たい空気を破ったのは、俺でも東山でもない、サウナのドアが開く。冷たい空気が流れ込んでくる。ここの銭湯の利用客がサウナに入ってきたのだ。複数人。あ、目が合った。ショタコン男がいた。
「行こう、サクちゃん」
何かを察知した東山に、強引に手を引かれて、飛び込んだのは水風呂。ザッバーン!!という大きな音が館内に響いた。
「冷たっ!!!」
俺はすぐさま水風呂から出たが、東山は若干のぼせてたようで気持ちいいって言っていた。そんな様子にほっこりしたのもつかの間、
「サクちゃん、さっきの人さあ……殺していい?」
と彼は俺の隣りに腰掛け、悪魔のように耳打ちしてきた。水風呂には足しか浸かってないのに、背筋が凍った。
「何で?」
「あのクズ教師を前にした、僕みたいな顔してたから何となく」
殺人犯ってのは、よく分からない。罪悪感に溺れたと思えば、ケロッとした表情でまた殺人を犯そうとする。それに俺は怖気付いて、
「ふっ、アイツは俺のATMだから」
なんて無意味に鼻で笑って、嫌いな奴を庇ってしまった。俺のその反応に彼は、ふーん、とだけ言って、
「なーんもっ、整わないね!」
ってサウナの効能を可愛く嘲笑った。