社会不適合者に背徳感はありません
東山は大型ショッピングモールの屋上にいると言っていた。俺は朝のHRを抜け出して、急いで階段を駆け下りる。
「西海、帰んの?」
「体調悪い!」
同級生の不審がる声を振り切って、鍵のかかっていない自転車を無断で拝借した。車通りのない赤信号なんか無視して、無我夢中でペダルを漕いでいた。途中、大型トラックに耳が痛くなるようなクラクションを鳴らされた。ぐわんと俺を避けるように曲がったトラックの前方部分。
「危ねぇだろーが!!!」
と怒鳴られた。だけどそんなのもどうでもよかった。俺は自転車を走らせる。自転車で二十分の距離を十三分で走りきった。
屋上に駆け上がると、東山が清掃のおじいちゃんと仲良さげに話しているのが見えた。
「ミア……?」
息を切らして声をかけると、彼は目を輝かせて振り向いた。パチッと視線が合うと、今までの彼との記憶が鮮明に蘇ってきた。
「あっ! サクちゃん!」
「おぉ、君の愛する人が来たのかい」
清掃員のおじいちゃんが微笑ましそうに俺を見た。でも、俺の視線は東山の方に釘付けだった。というのも、
「えっ、ちょっ、何でズボン履いてないの?」
彼はズボンを足元まで下げたまま、俺に向かって駆け寄ってきたからだ。走りにくそうに足をもたつかせながら。
「え? ああ、サクちゃんの電話番号見たくって!」
何も気に止めてないような、満面の笑顔を俺に見せて、ジャンプして俺に抱きついてきた。俺はその勢いに負けて、バランスを崩し、後ろに倒れ込んだ。
「……っ、痛って!」
尻もちをついた俺の胸の上で気持ち良さそうに頬擦りする彼。それだけじゃ、物足りなくなったのか、俺の首に手錠がかかっている両手を回し、俺の顔を引き寄せた。
「ちゅー、しよ?」
とその可愛い顔で煽ってきて、俺は我慢できなくなって、こんな風通しのいい場所で、東山とキスをしてしまった……。
でも、その背徳感も火に油を注ぐようなもの。勿論、その一回だけでは足りなくて、お互いに求め合うように何回もキスをする。柔らかな唇の感覚が気持ちいい。俺の腹に東山の固くなったアレがあたってる。あぁ、東山も感じているんだと思うと、やけに嬉しかった。
「ねぇ、サクちゃん。イキたいよ、僕もイキたい……」
涙ぐんだか細い声で、東山は俺に甘えてきた。パンツからアレの形が浮き出ている。それを見ていると、乱れていた呼吸がもっと乱れてきて、俺に理性なんかもう残ってなくて、東山と気持ちよくなりたい本能でいっぱいだった。
「ミア、一旦、あの物陰に行こっか」
と東山の身体を抱いて、建物の影へと移動した。そして、東山のパンツの中に手を入れる。
「んっ、サクちゃん……怖いよ……」
「大丈夫だよ、気持ちよくするから」
東山のと自分のとを合わせあって、片手で扱いていく。もう片方の手は無意識に彼のふわふわなおしりを揉んでいた。
遠くでパトカーのサイレンが鳴っている。ギーッと立て付けの悪い扉が、音を立てて開いた。
「ここにはいなさそうだな。あっ、おじいさーん!」
と警察官が何人か清掃のおじいちゃんの元へ駆け寄る足音が聞こえた。
「この少年、見ませんでした?」
「ほう、わしは目が悪いからのぉ。どれどれ?」
警察官とおじいちゃんの会話に耳を澄ませていたら、俺の隣りで東山は真っ赤な顔して、
「あっ、なんかやばい……!なんか、くる……!!」
と身体をしきりにビクつかせていた。
「ミア、声抑えて」
彼の口を塞ぐようにキスをすると、彼は身体を強ばらせて、白濁乳の液体を飛ばした。俺の制服に全部かかっちゃった。
「……ごめん、なんか変なの出ちゃった」
「ふふっ、大丈夫。ミアのだから嬉しいよ」
って和やかに微笑んでいると、
「ああ、この子ならそこに……」
というおじいちゃんの声が真後ろから聞こえてきた。咄嗟に後ろを振り向くと、おじいちゃんの後ろに警察官が二人いた。
「君達はここで何をしているんだ……?」
そんな警察官の困惑した言葉を無視して、俺は急いでズボンを履いた。東山はおしりを丸出しのまま四つん這いで逃げようとしていた。