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エンジェルライフ・もう一つの真実⑤医療指導のつもりで赴任したういかと、朋美は負傷した人の救急措置に追われる。一旦帰国が、決まったが、シリア軍の攻撃が迫っている!次回最終回!

赤十字のバックヤードで、救急医療の指導を目的に赴任したういかと、朋美。実質的な従軍の医療部隊に組み込まれていく状況に、朋美は、一旦帰国することを提案する。ういかも納得し、あさこから帰国を許可された。帰国を前に、負傷者がどんどん運び込まれる。シリア政府軍は、赤十字施設にまで進軍をしてきた。ういか、朋美は、赤十字のスタッフは、脱出できるのか!?

シリアの国境付近に近いトルコにキャンプ地を置く赤十字の救護施設で救急医療の指導に来ている早夏ういかと、宇田朋美。

指導とは名ばかりで、直接負傷兵の治療に関わる状態に追い込まれることになっていく。


猛スピードで敷地にジープが飛び込んできた。男たちが駆け付けケガ人を運び込んでいる。その後も次から次へとジープが走りこんできてケガ人がおろされる。重症者はいないようだ。足や手を打たれているようだが、自分で歩いている者もいる。兵士もいれば、民間人と思われる人もいる。ういかたちもケガ人に駆け寄った。


ういか:朋ちゃんそっちの若い子見てあげて、この人は、足を撃たれちゃってるけど貫通してるから消毒して終わり。ねえ!包帯は自分たちで巻いて。

足を打たれた負傷兵に包帯を渡した。

ういか:そっちの子は、

血まみれのタオルを取ると手のひらが半分なくなっている。

ういか:朋ちゃんこの子止血しないとっ出血性ショックでやばいかも・・

朋美:わかりました。 貴方も、あと、自分で包帯巻けるね! ういかさん!その子の縫合わたしやります。

ういか:自分で傷口抑えて、高く上げて、そう、そうやって待ってて。そっちの年配の・・見せてみて・・えーっつ 口から頬に抜けたってこと・・傷口小さいから

兵隊さん、このおじさんの頬にこれ塗って、包帯は、こんな風に下あごから頭に行ってそう、巻いて、下がって、下あごそうそう、その繰り返し、できるね。

朋美:ういかさん変わります。その子の手、私が縫合します。

ういか:了解、じゃあ頼む。こっちは、右足骨折かな・・ああ折れてるわ・・ギブスにそのまま入れてこれも兵隊さん!ぐるぐる巻けばOK・・できるね。

朋美:ういかさん、ちょっと手伝ってください。掌が半分なくなってるんだけど皮が引っ張り切れなくて

ういか:こっちから押すから・・どう 

朋美:無理です。しょうがないからこの骨は切除します。

ういか:そうだね。麻酔なくてもみんな強いね。もういない!みんな手当てできた!

ウー:私の方は、軽症だと思ってた子が・・残念でした。ここに来るまでに大分出血してたんですね。

従軍の医療部隊に収容できない軽症者がここに来るんですが。軽症と判断されてもけがをした時間がわからず出血量が多いと容体が急変してしまいます。今の子も若かったのに残念です。


ういか:これで、ちょっと落ち着けるか・・・おんなじ撃たれても傷口が全然違いますね。どうしてなんですか?

ウー:残念なことなのですが、シリア政府軍は、ロシアの支援を受けているのですが、国際法違反の銃弾を使っていることが多いんです。殺傷能力が高く人に当たると大きく肉片をえぐります。先ほどの手のひらが吹き飛んだ子が撃たれた銃弾はたぶんロシア製の違法な銃弾です。年配の兵士の頬を抜けた銃弾は戦闘用の銃弾でもし違法なロシア製だったら頭が吹っ飛んでいるところでした。

朋美:ここに来た人が軽傷ということは、従軍の医療部隊には、相当な重傷者がいますね。

ウー:重傷者と言うより遺体の方が多いでしょう。せめて親元に返してやりたいので医療部隊までは連れて帰ります。敵もわかっていて医療部隊に収容された兵士は戦力にはならないし、医療部隊に生き残りが増えれば、介護する人が割かれて戦力はさらに落ちます。無駄なミサイルや銃弾は使いたくないので医療部隊は、お互い攻撃しないのが、暗黙の了解です。医療部隊が先に飽和した方の前進が止まり戦局が決します。


その夜

朋美:ういかさん、やっぱりこれでは教えてる時間なんてありませんよ出直しましょう。

ういか:そうだね一人の看護師としては役に立つ自信はあるけど・・見捨てるようだけど出直した方がよさそうだね。

ういかは、あさこに電話した。

ういか:夜分にすいません。・・・・・・・・・と、言うわけで移動も危険すぎて帰るに帰れない状況で・・

あさこ:わかった救援ヘリで迎えに行けるように自衛隊から要請してもらう。計画が決まったら連絡する。

すぐに帰れる準備だけしといて、持って行ったものや送ったものは救援物資として残してきていいから。


翌朝

ういか:あさこさん、わかってくれたよ。帰って来いって。赴任地で状況が違ってたことはよくあるけど、命がけで看護するのはちょっと違う。怖い思いをさせて申し訳ないって。

朋美:よかったですね。わかってもらえて。


ウー:昨夜、反政府軍の拠点が政府軍に大規模に空爆され多くの負傷者が出ているようです。もうすぐ多くの負傷者が運ばれてきます。

朋美:前線の従軍医療部隊は?

ウー:空爆となると・・・おそらく壊滅状態だと・・・

あさこから連絡が入る。

今日の午後には、近くのドイツ軍のヘリが迎えにくる予定になった。それに乗ってとりあえずドイツ軍キャンプへ避難することになった。

ういか:ウーさんゴメンナサイ。そういうわけで出直すことになりました。

ウー:わかりました。相当危険な状況になります。あなた方を巻き込むわけにはいきませんから。

朋美:レポートは、まとめましたのでクラウドにアップしました。日本からも支援を続けます。

ウー:よろしくお願いします。

大型の軍用トラックがケガ人を乗せて滑り込んできた。重傷者が次々と運び出される。

ういか:朋ちゃんトリアージして!

朋美:わかりました。あなたは歩けるわね。ちょっと見せて、これ、自分で巻けるね。

ケガ人に包帯をわたして、朋美は、トリアージを続ける。

朋美:この子は?従軍の看護師?ういかさんこの女の子、血胸です。骨折もあるかも、すぐにお願いします。

パーン乾いた銃声がした。

朋美:何ですか?

ウー:安楽死です。助かる見込みのない兵士を楽にしてあげています。

朋美:何で!ここまでやっとこれたのに・・ひどすぎます。

ウー:ケガ人が多すぎると非難が遅れて全員殺されてしまいます。再び戦えない兵士は安楽死させられることも少なくありません。

朋美:そんなぁ・・・・

朋美は、溢れる涙を吹くこともせず無表情で患者を診ている。

朋美:この兵士は、輸血しても・・もう無理。無表情で黒いシールを張った。

ういか:女の子の応急処置終わった! 次は?

朋美:そっちの壁に・・

ういか:この赤マークだね。出血なし・・脈もあるし・・気絶してる? 

ういかが何やら薬をかだせた。ううっつと声を出し気が付いた。頬を叩き叫びかける。

ういか:大丈夫!ここは、安全だから!兵士は涙を流しういかに抱き着いた。

次々に負傷者が運び込まれる。

朋美:この子何歳?10歳ぐらいか・・

若い兵士が意識を失っている左の太ももの後ろが吹き飛ばされていた。

朋美:ういかさんこの子大至急で輸血! 

ういか:了解!

ういかが輸血の準備を始めると兵士が寄って来て、ウーさんに何やら言っている。

ウー:医療部隊の兵士が輸血がもったいないからやめてくれって言ってます。助からないって、

ういか:何言ってんの全然助かるって足はわかんないけど・・

兵士がけがをした若い兵士を連れて行こうとする。

ういか:なにすんのよここは、赤十字! 兵士は手を出すな!!

兵士は、勝手にしろっと出て行った。

朋美:この女の子も看護服・・従軍看護師?若すぎる・・一体何歳から徴兵?がれきの中から救出されたんだ・・・やばいな・・

ういかさん腰から下、圧迫骨折の疑い皮膚の色から時間たってます。大至急で

ういか:血栓動いてるね。危険だな ウーさんこっちの子は輸血入れてるから太ももの止血お願いします。

朋美:重傷者は、もういません。ウーさんありがとう止血むつかしいですね。私が縫合します。

照明持ってきてください。

左モモの裏がほとんど吹き飛んでいて、傷口が大きい。止血がうまくいかないと命は助からない。皮を思い切り引き寄せ

縫合していく、・・ひと針・・ひと針・・丁寧に・・助かると信じて・・一時間以上かけて何とか傷口を閉じた。

朋美:ういかさんその女の子はどうですか、

ういか:一見安定しているように見えるけど、血栓が動いたら一気に容体が急変するかも・・・

血栓溶解薬(t-PA)を打とうか、どうしようか迷ってる。打った方がいいかな。

朋美:今は顔色も良いし今じゃないかも・・腰の骨折まわりで内出血している可能性が高いですし・t-PAは最後の手段かな。

ういか:私、この子についてるわ。

朋美:お願いします。


その時だった。上空にヘリの爆音が近づき敷地内に降り立った。ドイツ軍兵士が下りてきて、日本のナースを救助に来たと告げる。ウーさんがこの人たちだと教えると数人の兵士がういかの両腕を抱えて連れて行こうとした。

ういか:なにすんねん!!。この変態!!

兵士の腕にぶら下がりながら兵士の股間を蹴った。他の兵士が後ろから、ういかを羽交い絞めにして連れて行こうとする。

ういか:やめろ!あほ!この子についてないと容体が急変す可能性が有るから、もう!ガブッツ!!

思いっきり手にかみついた。

兵士:こっちも命がけで助けに来てるんだ。空から見えたが、政府軍の戦車が迫っている。もう時間がないぞ!!すぐに逃げないなら置いてゆく。

朋美は既に違う兵士に抱きかかえられている。

朋美:この子も一緒に連れてって!

兵士:しょうがない。一緒に連れていけ!

朋美:ういかさん!

ういか:朋ちゃん!そのこと逃げて!私はこの子置いて、

      私だけ逃げれんて・・・!

朋美: ういかさん!

ういか:    いいからいけ!いけって!

ういかが兵士の股間を思いっきりけった。

兵士:ううっつ うずくまりながら おいていけ!


朋美と少年兵を乗せヘリが飛び立った。


ういかが少女の看護兵を大丈夫かと覗き込むと、唇が青くなっていた。いちかばちか・・・t-PAをその子に打った。

血栓溶解剤で血栓は溶けるが同時に出血箇所が有ればそこから出血がひどくなる。

ういか:やばいな・・少女のお尻の下に血がにじんできた。

朋美が残していった輸血の器具を少女にセットして輸血の為に少女の細い血管に針を刺そうとした。

その時だった。

ひゅーdっ・・ドっガーン・バーン! 大きな爆発音がした。グイングイングイン変則的なエンジン音のあと、地響きとともにドドドどうぉー砂煙がテントに入ってきた。

落ちた!・・・・

ういか:まさか・・・

ういかは、外に走りだした。まさか・・・どうして・・・・・・目の前に炎に包まれたヘリが横たわっていた。

座り込むういかの頭上を”ヒューッ”風を切る音が抜ける。次の瞬間!”ドッガーン”ういかは、後方へ吹き飛ばされた。

赤十字キャンプは、政府軍に取り囲まれ包囲されていた。

遠くからヘリの音が聞こえる。何機も・・何機も・・ドイツ軍の支援部隊が向かってきた。

仲間のヘリが撃墜されたのを受け、大規模な支援部隊が出撃してきたのだ。あっという間に政府軍の戦車をミサイルで、せん滅し、歩兵兵士も逃げていく。

赤十字キャンプに何機ものヘリが着陸して、兵士が赤十字職員を救助にやってきた。救護兵も駆けつける。

救護兵:大丈夫ですか? 

ういか:この子をお願いします。

救護兵:あなたも大けがですよ。

ういか:外のヘリに子供と仲間が・・・

救護兵:残念ですが・・

救護兵に抱えらえると、ういかは気を失った。

ドイツ軍のヘリが赤十字のスタッフも乗せ飛び立った!。

・・・・撃墜されて燃えているヘリと、少年、・・・朋美を残して・・・


イスタンブールのトルコ赤十字病院

ウー:ういかさん! 気が付きましたか。

ういか:あっ あの女の子は・・?

ウー:助かりました! ドイツ軍の医療施設で診てもらえました。もう大丈夫です。適切な救急処置のおかげです。勉強になりました。

ういか:よかった!・・朋ちゃんと、少年兵は・・

ウー:・・・・・n・・ ヘリの兵士も全員・・・

ういか:私がもたついてたから・・・

ウー:あそこで女の子を動かしていたら助かっていないでしょう。ヘリが素早く離陸し砲撃をかわして離陸していたら、ドイツ軍の大規模な救援部隊は出撃していないでしょう。シリア政府軍と大規模な衝突は避けたいですから。私やういかさん、それに赤十字のスタッフも包囲したシリア軍の砲撃で殺されていました。結果的には、撃墜されたヘリが引き金となり大規模なせん滅作戦となり、私たちが救われることになりました。私たちが生き残ったのは、墜落したヘリと一緒に燃えてしまった魂のおかげです。

ういか:・・・とも・・・ゴメン・・

・・・・・無言で・・・泣いた・・・・・・・



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