エンジェルライフ・もう一つの真実③カイセリの夜の蝶は、ういかのファンだった!
昨夜、置いてかれたういかは、ご機嫌斜め。朝から朋美にいじわるくあたっている。カイセリの街で遊べるのも今日で最後。明日からは、赤十字のキャンプでの医療指導が待っている。夜の街を飛び回る蝶は、ういかに逢えて・・
③
ホテルに置いていかれたういかは、明け方から目を覚ましてソワソワしていた。我慢できずに朝5時朋美に電話をする。
ういか:もしもし、今どこ?
朋美:部屋で寝てます。まだ早いですよね11時出発って言ってませんでした?
ういか:昨日、どこ行っとったん?
朋美:街ブラで飲んでました。
ういか:えーーっ信じられへんわ、私を置いて!飲み!ありえへん・・
朋美:すいません。何度も電話したんです。公演明けでお連れじゃないかって・思って・・
ういか:公演なんかへの河童じゃ!私を置いて・・しんじられません。
朋美:プっあっ切れた。怒ってるなーー何度もは電話してないからな・・まっいいか・・
3時間ほど爆睡して、朋美は朝食会場に来た。
砂漠の街とは思えない高層ビルが立ち並ぶ。日は既に高く上がり中までは射してこない。
見るからに豊かそうな家族が窓際で楽しそうに笑いながら食事をしていた。あの霞かけた街のはずれのその先に
シリアとの国境がある大国が勝手に引いた地図上の線など砂漠には存在しない昔から住んでいた人たちの家が建ち
その家々を結ぶ道が有るだけだ。幸せそうな家族の先に同じような家族の厳しい生活が営まれている。
赴任に手を挙げてみたものの自分が何をしてあげられるのか・・・朋美は、戸惑っていた。
ういかを避けているわけではなかったが、一人で、歩きたかったのは事実かもしれない。
そこへ、ういかがやってきた。
朋美:おはようございます。
ういか:プイっ
わざとしかとして通り過ぎるとドリンクバーで牛乳をぐびっと飲んだ。
朋美は、あえて追わずにバイキングを取りに行った。今朝3時まで飲んでいたとは思えない食欲で肉を中心に山盛り
盛り付けた。ういかはと、見回すと、すでにパンとコーヒー、フルーツを少し盛り付け既に窓際に座り食べていた。
朋美は、何もなかったかのようにういかの前に座った。
ういか:なに? 自由時間はいつも一緒じゃなくてもいいんだよ。
朋美:きげん直してくださいよ。ホントに疲れてると思って気を使ったんです。5時に電話してきて今まで何してたんですか?
ういか:二度寝・・三度寝か・・四・・どうでもいいわ・突っ込めって・・
朋美:やっぱり疲れてるんですよ。知らない国ばかり周り、知らない人の前で講演するんですから。ましてやエライザの瞬発力に反応しながら・・・相当なストレスだと思いますよ。
ういか:まーな、私やからエライザに付いていけるけど・・普通は、無理やな。
話せば、すぐに、きげんが直る。
朋美:今日もキャンプ地に持っていく日用品の買い出しぐらいでしょ出発が早いから遅くまでは飲めないけど、9時ぐらいまでなら良いんじゃないですか。今日は一緒に行きましょう。
ういか:おーっ、はよう買い物行くぞ!
席を立っていくういかに・・
朋美:まだパンもほとんど食べてないじゃないですか・・
ういか:私、朝はどうでもいいの・・
朝食会場を出て行った。朋美は残った肉をむしゃむしゃと噛みちぎり残さずぺろりと食べきった。出っ張ったお腹を
少し気にするとエスプレッソを一気に飲み干し、大きなため息を付き、
朋美:行くか!
朋美は部屋に戻って身支度を整えるとロビーへ降りた。ういかはいない。しばらく待ったが、ういかは来ない。
まさか、今度は仕返しで先に行ったのかとも思ったが・・・威勢はいいが、ビビりなういかが私を置いて行くはずもないと、部屋に見に行った。
朋美:コンコン ういかさん!ういかさん!!ゴンゴン! ういかさん!
ういか:うーーn あーっ・また寝てもうた。 はいはいゴメン ガチャ。
朋美:どうしたんですか?
ういか:ゴメン また寝た・・歯ーー磨いてたら落ちた・・ゴメン
朋美:やっぱり疲れてるんですよ。私一人で行ってきましょうか?
ういか:トルコまで来て、寝てるだけで、砂漠に赴任って!ありえへんやろ!行くて、行く!
ういかはカバンだけ持って飛び出してきた。
朋美:ういかさん歯磨き粉・・ふいてください。
ポケットティッシュを渡した。ういかは、口のあたりをふきながら
ういか:何から行く!
朋美:忘れちゃいけないものからが良いんじゃないですか。後は、時間の限り・・
ういか:忘れちゃいけないもの・・何
朋美:生理用品ですかね。女性兵士なんかはティシュ丸めて何とかする見たいですけど・・白衣ですし
ういか:どんなんが良いのかな?
朋美:ナプキンはだめです。かさばるし、捨てるところも困ります。
ういか:入れんの苦手や・・・
朋美:なれるしかないですね。こっちのは結構大きめですから練習してください。
ういか:私のこじんまりと、キュットしてるからなー・・・言わすな・・
朋美:私も使ってみないと・・・この辺じゃないですか。
衛生用品を探すが、見つからない。
下着売り場にやってきた
朋美:下着類は持ってきてますけど現地で買えるものをためして使って、持ってきたものはとっておいた方がいいです。
あちこち擦れたりします。日本のものとは、素材が全然違いますから。
ういか:さすがバックパッカーだね。観光とは違って何か月も現地生活しないと気が付かんわ・・
朋美;例えば、これだめです。このタグ、ちょっと高いのはタグもカッコいいんですけど、このタグが擦れるんで、
こっちはいいですよ。綿100%本物の綿花のです。
ういか:なんじゃこれ!だっさー ブルマか!
日焼け止め、その日焼け止めが落とせる石鹸、塗るタイプのスキンガード、何種類かの靴の中敷き・・
つまようじ、ういかの想像できないようなものを買い込んで・・
朋美:絶対必要なものは買えたと思います。衣料品店に行ってみましょうか。
こじゃれた服がそろっている店にやってきた。
朋美:衣料品は国ごとと、言うか地域ごとで変わります。宗教や環境によって素材や形が様々でその場所じゃないと
買えないものも多くあります。
ういか:日本だったらユニクロなんかほとんどおんなじ物が流行するけどね。
朋美:ユニクロだって中国に行ったらデザインも変わりますよ。
この顔を隠すベールだけでもアバヤ、ヒジャブ(ヒジャーブ)はスカーフやストールのような大きい布で
頭髪を隠すタイプ。イスラーム世界の女性でポピュラーなものです。こっちは、ヒマール、
ヒマールはヒジャブより、隠す範囲が広がり、背中まで隠せます。ブルカ、ニカーブ、チャドル、ブルキニ
隠す場所や面積、開ける場所や素材で名前が変わります。
ういか:むりむり・・覚えれん! ベールでいいわ。
朋美:どこの国の女性もおしゃれは大好きですから制限のある中で工夫してるんですから、覚えなくても理解は
してあげてください。ベールの細かな着こなしを気づいて褒めてあげるのは現地の女性と仲良くなる秘訣です。
このタイプのヒジャーブは簡単で良いですよ。黒は、マストです。洗い替えで何枚か・・派手な色も何色か・・
ういか:いろんな色があるんやね。
朋美:ういかさんこれ巻いてみて・・うーn・ういかさん目がきれいで大きいから無地が似合います。この濃い紫なんて
カッコよくてエキゾチックですね。
ういか:そうかな!ほな、買っとくわ。
朋美:私は、こっち柄物で明るい色が刺してある。目が細くて地味だからベールに目が行くように・・
女二人が時間無制限でファション選びに入ったら太陽もあきれて通り過ぎる。
ホテルに戻りながら・・
ういか:軽いものばかりだから持てるけど、スゴイ量の買い物になっちゃったね。
朋美:衣料品はトランクに詰めちゃうので大丈夫ですよ。
ういか:食べ物は要らんのか?
朋美:基本的にみんなと同じものを食べます。ベースキャンプの炊き出しです。おやつ系もあるそうです。
日本のカップヌードルとか喜ぶんで、支援物資として、日本から直送しています。私の好きな一平ちゃんも
大量に入れときましたけど現地の人は見慣れないもの食べないので私たちで独占できます。
ホテルに戻り荷物を整理しながら
ういか:あーぁ腹減ったー
朋美:ういかさん、朝ごはんのトーストも結局残して、フルーツちょこっとだけだったから・・これ、詰め終わったら何か食べに行きましょう。
ういか:これは入り切らんぞ・・Wuu・・ぎゅっ
朋美:大丈夫です。良いですか・・ひっくり返して・・こっちのファスナー開けて・・ほら入ったでしょ。
ういか:こんなところでも経験で差がつくんやね。
朋美:よし! 行きましょう!
ホテルを出て
朋美:イスラム地域に赴任するのでそっちの料理が良いですか。それとも最後の日本食?中華?
ういか:前向きモードに入ってるからイスラム料理の食べ比べかな・・
朋美:わかりました。
しばらく、歩くとイスラム系の音楽の流れる店があった。
朋美:ここにしましょう。あんまり厳格な感じじゃないしメニューも選びやすそうです。豚肉料理はさすがにないでしょうけど
ういか:十分、イスラム感出てますけど・・
メニューを見せて
朋美:ほら、酒類もワインもあります。観光客用の入門編の店ですよ。今日は遅くまで飲めませんから、もう、行っちゃいますか!
ういか:そやな・・もう3時回ってるし・・・
朋美:まずは、ビールですか!すいませーン!ビール2本とサモサ、これ2個、それとこれ2個、お願いします。
ういか:早いな・・なんでも、
朋美:とりあえず頼んどきましたから・・メニュー見て、回り見て、ゆっくり選んでみてください。
ういか:このシシケバブってケバブと違うの
朋美:日本のトルコ料理店とかでやっている大きな肉の塊じゃなくて、日本でいう串焼きです。ウシか、羊かとりです。キョフテはハンバーグみたいなものです。
ういか:私これ行ってみるは、すいません!
ビールが運ばれてきた。追加の注文をした。
朋美:砂漠のナースに乾杯!
ういか:乾杯!グビグビっカーーッツうnma-- Who--!昨日1日酒抜いてるから、最高だね。
朋美:ホテルでも飲んでないんですか?
ういか:誰かに置いてけぼりにされて、ふてくされて、寝てばっか!
朋美:たまには、何にもしないのも大事です。エライザもういかさんもずーと走りっぱなしですから・・スイマセン!白ワインデカンタで!
ういか:ペースはや!
朋美:あっ きたきた メルジメッキ・チョルバス レンズ豆のスープです。これからこれが主食です。チョルパスは、
スープです。レンズ豆は主食です。持ち運びも楽だし日持ちするのでキャンプ生活では欠かせません。
ういかはスープをすくって飲んでみた。
ういか:うーーn味ないね。
朋美:日本人には薄味に感じて、豆の臭みが気になりますよね。これは、慣れるしかありません。レモンたらすと食べやすくなります。
朋美が、ついてきたレモンを絞ってスープに入れた。
ういか:おーっ 大分食べやすくなった。
朋美:キャンプじゃきっとレモンなんてないと思いますから・・・豆の味に慣れるしかないですね。ここは、観光客用ですから食べやすい方です。
ういか:サモサ追加しよう! 酒のつまみには、これいいね。手で食べる餃子みたいな感じで。 すいません!ロゼ。
朋美:次!ロゼもデカンタで・・
ういか:よっしゃ! 飲むか!
6時を回りこの店にはお客がいなくなった。
朋美:ういかさん次、行きましょ! まだ、行けるでしょ?
ういか:あったりまえじゃ!
ういかは、この辺が限界なのだが・・・
裏路地に入り込み飲み屋を物色する。
朋美:この看板見てください。ネオンライトって言うんですよね。昭和の映画見たいです。女の人のセクシーな漫画ですかね。入ってみましょう。
ういか:あんまり人いないね。
ボーイがやってきた
ボーイ:BOXで良いですか?チャージが掛かります。
朋美:いくらですか
ボーイ:1時間で10ユーロです。
朋美:大丈夫です。スリーバーレル有ります。
ボーイ:はい有ります。
朋美:ボトルでください。
ボーイ:ボトルでは売っていません。
朋美:そうなんだ・・じゃ、ロックでダブルで2杯。ういかさんは?
ういか:ジントニック! 1杯! 朋ちゃん、肝臓も2個あるんちゃうん??
朋美:両親も弟も飲まないんですけどね。
ういか:出身はどこなの?
朋美:四国の愛媛です。地元では日本酒が多いですね。
ういか:それってウイスキー?
朋美:ブランデーです。バックパッカー時代に見つけて一番強い、一番安い酒です。アルコールが35度くらいです。
旅行中って結構衛生的にやばくて、お風呂も入れなくて、これで、あちこち洗ったり旅行の必需品でした。
ういか:ブランデーで洗う?
朋美:水も清潔じゃないし最後の手段ですけど、わりとすっきりします。その気の男におごってもらった時にボトルでもらってきて水筒に移してリュックの中に常備してました。
ういか:サバイバルだね。
店の照明が落とされバンドらしきメンバーがステージに上がった。
ういか:バンド演奏かな・・
朋美:そうですね。
スローバラードが流れる。あたりを見回すとカウンターは、お客が増えていた。BOX席は、ういかたちしかいない。
ほーっ! 歓声が響くと、セクシーなドレスの女が現れた。中央の金色のポールにまとわりつくと回りながら
上着を脱ぎすてた。豊満な胸でポールを挟むと天井まで登り足だけで支えてえびぞった。
ういか:エーーっ ポールダンス? そういう店だったの!
朋美:そうだったみたいですね。あの女の人のネオンライトって・・・
見惚れていると、女が踊りながら二人のBOXにやってきた。テーブルの前で妖艶な踊りをしばらく続けると女が朋美に頬ずりし
カミラ:朋! 私よ!また会えたね。
朋美:??誰??
カミラ:とも! わたし!
女は朋美の顔を両手で包むと笑って見せた。
朋美:エーっ カミラ! 全然わかんなかった!
カミラは笑いながらステージに戻ると下着をずらしながらセクシーなポーズで観客を挑発した。
ブラジャーをずらし、外して投げた瞬間、ドラムフィルとともに照明が落ち暗闇をブラジャーがひらひらと舞って、ういかの顔にかかった。
拍手と喝さいの声とともに照明が点くと、カミラは、ステージから消えていた。
ういか:うwaaa エッチって言うよりアクロバティックで、綺麗だったね。すごいスタイル良かったし・・
朋美:びっくりしたね。・・・・
朋美は、口ごもって言葉が出ない。
ういか:これ!どうするの? もらって良いの?と、胸に当ててみた。私にはちょおと大きすぎるかな・・
そんな様子を見ていた男たちが、ういかにステージで踊れとはやし立ててくる。カミラがカウンターで飲み物を受け取ると
男たちは静かになった。カミラは、カウンターの男たちの頬を人差し指で引っかきながら朋美のBOXにやってきた。
カミラ:朋!また会えたね!こんなとこに飲みに来るんだね。ジプシーローズだったか・・
朋美:違います。こんな店とはあ思わなくて・・明日からシリアのバックヤード行きなんで、同僚と飲もうかと・・
全然わかんなかった。セクシーで、恥ずかしくなっちゃいました。
カミラ:こんなことでもして稼がないと、歌ってるだけじゃ稼ぎが足らなくて。
ういか:知り合い?
朋美:昨日たまたま知り合って、一緒に飲んだの。ジャズのボーカリスト!。仕事の先輩、早夏ういかさんです。
ういか:ういかです。よろしく。
カミラ:だよね! エンジェルライフのういかでしょ。 さっき、踊ってるとき、みてて、もしかしてって、えーっ本物のエンジェルクルーに会えるなんて・・
ういか:私って、そんなに有名かな・・ね、かな!朋ちゃん
カミラ:朋の仕事ってもしかしてエンジェルクルー!?
朋美:はっハイ・・まだ新人ですけど・・
カミラ:すごいね。エンジェルクルー二人と一緒にいるんだ、私!すごいね。写真撮ってもらって良い?
朋美:ういかさん大丈夫ですか?
ういか:もちろんです。はい、こっちに来て
朋美:私、取りますね。
カミラ:ダメダメ!朋も入って! Hay!
カミラがカウンターの男に声をかけた。
男がカミラの携帯で写真を撮ってくれた。
朋美:SNSにあげても良いけど明日以降にして。
カミラ:あげても良いんだ。ありがとう!娘が驚くわ。私、次のステージが有るから行くね!。
朋美:私たちも明日、早いからもう行きます。
カミラ:了解!じゃあね。朋の活躍をテレビで見てます。Bay!
カミラは、ういかの持っていたブラジャーを指にひっかけてバックヤードに消えた。
帰り道。ういかは、ご機嫌だ。
ういか:そんな有名かな!な!私は、暗がりで見ても・もしかしてって、な!そんな有名なんや!
朋美:えへっ まあぁ凄いですよね。
ういか:あんたは、一晩一緒に飲んでたんよね。それでもな・・もうちょっと頑張ったらな・・
ういかのご機嫌な夜は更けていった。