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03




街道を伯爵領とは反対方向に向かって歩いていく。近くに街があればいいんだが、無ければ村で聞くしかないな。


良かった。半刻ほど歩くと、遠くに街のようなものが見えた。まだまだ遠そうだが、目的地が見えただけいい。

とりあえず今日は様子を探ってタルツのところに帰ろう。



街に入ると、近くにいた人に冒険者ギルドの場所を聞いた。

手っ取り早く地理が分かり、金も稼げるし情報もある場所といったら、そこしか思い浮かばなかった。



「登録をしたいのですが。」

「文字は書けますか?代筆がいりますか?」


「文字は書けます。」

「ではこちらの用紙に記載してください。」



登録用の紙を渡された。

名前、ファルト。年齢、13歳。武器、無し。得意な魔術、水。



「こちらの機械に魔力を少し流してください。」


機械が少し光ると、私のカードが出来上がったようだ。

カードにはファルトGランクと書かれていた。



「身分証の代わりにもなりますので、カードは無くさないよう気をつけてください。

Gランクのクエストは、あちらの掲示板に貼られています。」

「分かりました。ありがとう。」



『私』と言うのも、冒険者には似合わないな。これからは俺と言ってみようかな。


「この領地の地図はありますか?」

「ありますよ。お渡しすることはできませんが、あちらに地図が置いてありますので、ご自由にご覧下さい。」

「はい。助かります。お、俺はこの街に来たばかりなんだが、街の名前を教えてほしい。」


『俺』って言ってみたけど、なんだか気恥ずかしかった。



「ここはヤプコです。プーステニア伯爵領ですね。」

「分かりました。ありがとう。」



私は地図を見に行った。


プーステニア領か・・・まだ隣だな。ヤプコまで来ていたのか。あと4-5日歩けばズモート侯爵領に入れそうだ。この領では森を通り、ズモート侯爵領からはタルツも一緒に街に行こう。




Gランククエストは・・・

そうだよな、こんなもんだよな。初心者だもんな。

農家の手伝いや、お使い、掃除・・・薬草採集もあるのか。これでいいや。


1番高いのが薬草採集で銅貨5枚だった。安いが、薬草の買取で少しプラスで稼げるみたいだ。

どうせ森に戻るんだから、受けてみよう。



「これを受けたいんですが。」

「分かりました。この袋に薬草を詰めてギルドに持ってきて下さい。この薬草は西側の森によく生えていますよ。」


「分かりました。」


魔力を感じる袋を渡されて、私は冒険者ギルドを後にした。




西側は反対だが、森ならタルツがいる辺りにも生えているだろう。

早く戻って明るいうちに薬草を探そう。






「タルツ、どこ?」


「ここだ。」


岩場の陰から出てくるタルツをようやく見つけた。



「そんなところにいたのか。」

「あぁ、ファルトおかえり。どうだった?街は、見つかったようだな。」


「うん。街で冒険者登録をして薬草採集の依頼を受けた。

これはその薬草を入れる袋でギルドから渡されたんだ。」

「冒険者か。確かに手っ取り早く稼ぐこともできるし、地理なども教えてもらえるな。

なるほど。私も登録してみよう。」


私は依頼書と袋をタルツに見せた。



「うん。いいと思う。タルツならすぐに高ランクになれそうだね。

でね、この近くの街はプーステニア伯爵領のヤプコだった。」

「そうか。思ったよりは進んでいたんだな。」


「うん。だからあと4-5日歩けばズモート侯爵領に入れると思う。」

「そうか。じゃあ私はズモート侯爵領に入ったら冒険者登録をするよ。

それまではファルトが受けた依頼を手伝おう。」



「うん。ありがとう。

まだ完全に傷が治ったわけじゃないんだから、無理はしないでね。」

「あぁ。分かった。」


私たちは、日が暮れるまで薬草を探し回り、その甲斐あって袋は見事にいっぱいになった。



「これをギルドに持っていけば、明日はパンが食べられるね。

塩も買おう。買えるよね?」

「あぁ。どちらも買えるだろう。

ファルトは成長期なのにこんな食事をさせてすまない。」


「そんなことタルツが気にすることないよ。

ズモート領に入ったら、頑張って依頼受けて、街で美味しいもの食べようね。」

「あぁ。しっかり稼いでくるよ。」





「そうだ。他の領地に行ったらタルツは何をするの?

私は領地を出たいと思ってここまで来たけど、実は何かをしたいとか、何になりたいとか、明確な目的があったわけじゃないんだ・・・。

だから、少し悩んでいる。」 

「そうだな。私も何がしたいとかは考えてこなかった。ただ、生きていたいと思う気持ちだけでここまで来た。」


「そっか。目的が決まっていないのは同じなんだね。少し安心した。」

「そうか。それは良かった。

ファルトは冒険者になったんだから、冒険者を続けながらやりたいことを探したらいいと思う。まだ若いんだしな。」



「うん。タルツもね。」

「あぁ、そうだな。

あ、私は一つだけやりたいことがあった。」



「え?何?」

「ファルトを守ることだ。

私はファルトを守りたい。私が生き長らえることができたのは、確実にファルトのおかげだ。

だから、この先も私はファルトと共に歩み、ファルトを守って生きていきたい。」



「タルツ・・・

本当は、やりたいことがないのが不安だったわけじゃなくて、タルツの目的によっては、離れ離れになってしまうのかと思って、1人になるのが心細かったんだ・・・。」

「大丈夫だ。私はいつでもファルトと共にあろう。ファルトになら一生の忠誠を誓ってもいい。」


「忠誠なんて、そんなことしなくていいよ。

タルツは親友みたいなものだから、上下関係なんて要らない。平等でいたいんだ。」

「分かった。」


タルツは、やはり誇り高き騎士なんだな。

いつか、騎士にしてあげたい。

でも今はまだ、側にいてほしい。


まだ子供でごめん。




閲覧ありがとうございます。


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