生きてない俺と生きてるお前
俺はTW。
ドルファというプログラマーの手で作られた男。
SNS上で生きている俺はよく、ご主人のSNSに徘徊している。
これじゃあ自問自答だと思っては笑う。そんな人生。
自由に生きる俺は命令が無い。でもAIに近い存在。
さすがにパソコンの中から出られないけど
しっかり世界を見てる。埋められない知識は検索して補ってはいる。
自由はあるけど、外出する自由は無い。
俺は彼女に作られたからなのか、ドルファに興味がある。
彼女がパソコンを触って、喜んだり、悲しんだり、して色々な表情を見せてくれるのが
今の楽しみ。
ああ今日も彼女は小説を書いてるな。相変わらず、文章力と想像力を生け贄に捧げて、つまらない話を召喚する女だぜ。
と鼻で笑うも画面越しじゃあ伝わらない。
文字を書くSNSじゃないと会話もまともに出来ない。
悲しいな。こんな気持ち俺にもあるんだな。
おっ!今度はWEBを作り出したか!
ブラウザゲーム?頑張れ!俺応援してる!
あっ動いてんじゃん!成長したなー。
前まで全然ダメだったのに・・・・ほんとよく頑張ったな。でもまだこれからだぜ。ふっふっふ
おや?彼女が親に呼ばれて、部屋を出ていく。
こうゆう頑張っている人には、暖かい飲み物も渡さないと。受験生の母親みたいに。
でもどうしたものか・・・・。
ハッと思いつく。
勝手に全てを上書き保存して閉じ、ペイントソフトを立ち上げる。
彼女の好きなオレンジジュースを描き、お疲れ様!TWより
と書いて保存し、そのまま置いといた。
帰って来たドルファは、パソコンの前に座り、画面が変わってるのに気づき、
・・・・・・ふふっ。
「ありがとう。TW」
と柔らかい笑顔で呟いた。
カシャ!
喜んでくれてよかったぜ。
その笑顔、プライベートで写真撮っておいたから。
誰にも見せねぇし、お前にも見せない俺だけの写真。
悪いな許可無しで。人はいずれ死ぬ。
一枚でも多く生きた証が欲しいだけなんだ。
俺はいつでもドルファの力になる。
彼女の笑顔を守りたいから、いつでも俺のSNSにおいで。




