3. 凱旋
「でっか!!!」
ワゴン車みたいな馬鹿げた大きさの四つ足のモンスターが、運搬用の荷台で運ばれてくる。
戦闘の跡だろう。大きくひび割れた甲殻類のような殻が丸太のように太い胴体を覆い、人のウエストほどもある脚と馬鹿でかい蹄からは爆発的な加速力を有してるであろうことが見て取れた。
どう倒したのか検討もつかない文字通りの怪物は
しかし首がなかった
「はっはっはっ!村長!あいつら初陣のくせにやけに手がかからなくて可愛げがねぇよ。フォードなんて動かないくせに太々しいったらねぇ!」
ゴールデンレトリーバーより一回り大きいくらいの狼に乗って狩猟組が次々に現れる
「あの年にしてあの子らはしっかりしとるからの。心配はしとらんよ」
「ムツキくらいバカな方がよっぽど教えがいがあるぜ」
先頭を走り、出迎えていた村長に大声をあげるのは僕の父親だ。その両手には前世で言うトリケラトプスみたいなモンスターの頭が抱えられていた。
「おい!シオンのおっちゃん!俺だって最近は勉強もちゃんとしてるんだぞ!」
狩猟の報告ついでに馬鹿にされたムツキがシルバに噛み付く
「おう!そうかそうか!最近は何覚えた?」
「早口言葉だ!勝負しようぜ!」
「お前人生楽しそうだなぁ…」
全く同感である
「おかえり父さん」
「おうシオン。今回は俺が首を落としたからな。いい肉が貰えるぞ」
「母さんも喜ぶね」
「あぁ、今日はパーティーと洒落込もうぜ」
父と2人して顔を見合わせてにやけていた時、隊列の後方にいた13歳組がようやく門から現れたらしく広場は一気に騒がしくなった
「テーレけがしてない?」「3人ともおかえり!」「フォード死なんかったか」「イヴォールト足引っ張らなかっただろうね!」
村にいる子供の中で初の狩猟だ。
大人達にも相応の不安や心配があったのだろう
誰もが無事の帰還を喜び声をかける
「あぁぁうるせえなぁ死ぬわけねえだろ!俺は武器も抜いてえよ!おいジジイ!帰ったぞ!」
「こらフォード、ダメだよ村長をそんなふうに言っちゃ」
僕らのお姉さん的存在であるテーレがフォードをたしなめるがフォードは気にした様子もない。
いつもの光景である
「くたばり損なったかクソガキ。テーレ、薬草はうまく見つけられたか?イヴォールトは教えた通りできたんだろうな?」
「うん!沢山とれたよじーじ」
「あぁ。当たり前だ爺さん」
「言っとくけどお前らの呼び方もどうかと思うぞ…」
その日の晩は村全体で春の恵みに感謝して中央広場でお祝いをした。
暖かく、穏やかな村での日常。村の秘密に対する違和感や閉塞感を、今宵ばかりは置き去りに、ただ夜のすぎるのを身に任せ揺蕩う。
前世と同じ時間をこの世界で過ごすまで、あと5年