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2. 子供たち

 セレナとエン兄が布を巻いた木刀を打ち合わせる。

短い雑草の上で行うステップやフェイントも堂に入ったもので、お互い様子を伺いながら何度も木刀同士で鈍い音を奏でる。



 この村では13歳で大人についてモンスターの討伐に出始めるため、8歳から訓練を行っている。モンスターとの戦闘は命も、生活も懸かっている。訓練に手を抜けるはずもなく、毎日そんな環境に身を置いていれば自然と実力は付いてくる。まぁ、娯楽のないこの村では体を動かすことくらいでしか時間をつぶせないので訓練を楽しんではいるが。

 この1対1のチャンバラもその一環であり、一つ年上で一年長く訓練してるエン兄が優位か。女性はこの時期体の成長が男性より早いため体格に大きな差はない



 あ、突然セレナが目を大きくつぶった。



 エン兄がその隙をついて一気に距離を詰める。

 セレナは右からの袈裟切りを後退りながら慌てて防ぐが足がバタついている。それを見逃してもらえるはずもなく、エン兄の足払いでセレナは尻餅をついた



「目に汗が入ったぁぁああ!!!ノーカンよ!ノーカン!卑怯じゃない!!」


「モンスター相手に同じことを言うんですか?」


「ぐぅ…」


 エン兄はにこやかに結構キツイことを言うタイプなんだよなぁ。


「ぐうの音は出てるけどエン兄が正しいね。一旦休憩にしようか」


 時間もそろそろ3時を回る。腹に物を入れた方がいいだろう。

  短く生え揃う雑草の上にそのまま腰を下ろして、昼ごはん代わりに持ってきた干し肉を噛みちぎる。モンスターを狩って暮らすこの村では基本食事は山菜と肉なため、米が恋しくなる。しかも干し肉かったいんだよなぁ。歯が折れたりしないか毎度心配になるよ…





カンカンカン!


 広場のすぐ隣、物見櫓から鐘の音が軽快に鳴り響く。


「狩猟組が帰ってきた!」

「今年の初物だからきっと大きいわよ!」


 狩猟組帰還の合図に三人は揃って飛び上がった。鐘の音が鳴り終わって少しすると、居残り組の子供達が広場に集合して来る。



「おっすお前ら!今年はイヴ兄達も狩り出てるんだろ?大物取れたかな!」


 三時を過ぎた涼やかな気温の中汗を垂らしながら走ってきたのはセレナや僕と同じ10歳のムツキ。僕と同じ黒い色の髪も乱れて、よほど急いで来たんだろう。ちょっと鼻水もたれてる。相変わらずバカだな


「フォードがいますからね。大丈夫でしょう」

「フォードがいれば大抵のことはうまくいくわ」


 成人前の子供達の中で最年長である13歳は3人いる。フォードはその中の1人で、子供達のリーダー的存在だ


「それもそうだな!じゃあ今夜は宴かもな!」


 大きな獲物がとれた時には宴を開くこともある。夜遅くまで火を焚いて盛り上がるのでみんな楽しみにしているのが雰囲気で分かった。もちろんシオンもその一人だ


「あぁ、仮に問題があるとしたらフォードのやる気くらいだ」




「あぁ?ガキども、フォードは全然やる気なくて訓練もしてねぇだろ。3個下で女のセレナにも勝てないんじゃねえか?」


 初物とあって広場には大人たちも集まってくる。

 その中の1人であるオヤジが会話を聞いて絡んで来た。ちなみにムツキの父親である。親子そろってアホっぽい



「やったことないけど、そりゃ1対1の試合で剣の勝負をしたら私が勝つわよ。でもそうじゃないわ」


「大人達はほとんど知らないけど、フォードの強さは力ではないよ」


 セレナとシオンの返答に、オヤジが怪訝な顔でさらに言葉を続けようとした時




 厚く重厚な扉が音を立て、狩人達の凱旋を告げる

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