プロローグ
転生というやつなんだろう。
シベリア高気圧が日本に押し寄せてきた初冬に生まれた僕は捨て子として施設に預けられ、養子にとられた。
引き取ってくれた里親は厳しくも優しい人だったが、僕は真っ直ぐには成長できなかった。どうしても、自分は生みの親から愛されなかったのだという思いが卑屈にさせ、愛に飢えさせた。
今になって思い返せば、大恩ある育ての親によくあんな態度をとれたと思う。決して言ってはいけない言葉も、言ったことがある
生みの親の居場所を突き止め、家には置き手紙だけ残して会いに向かった15歳の冬。夜行バスを降りながら、吐く息が白いことに気付いて軽く舌を打った。
カイロでも買って来れば良かったか。こんな田舎ならコンビニも少ないだろう。
バスが出る音を背にそんなことを考えていたら、時刻表の裏から突然こちらに向かって飛び出してきた浮浪者のような風貌のおっさんと目が合った。
――ドン、と胸に衝撃が来てから1まばたき。刺されたのだと理解した。
助からないだろうと直感的に分かった。その包丁は、心臓のある場所に刺さっていたから。心臓から外れていても、肺がやられているだろう。
溢れ出した見たこともない量の血をみて、感じたのは恐怖でも痛みでも無く後悔だった
――嘘だろ。父さんと母さんに育ててくれた恩も返せてないのに、こんな形で。血の繋がりなんかに拘って、こんな。こんなことなら。
ごめんなさい、父さん母さん。生んだのが誰かなんて本当は興味なかったんだと思う。悲劇の主人公でいたいだけだったんだ。あなた達はあんなに愛してくれていたのに。
最後に一言だけでも伝えられたら
「こ"…め"ん…なさ"ぃ」
血反吐が混じってほとんど声にすらなってない。
意識を失う直前、そういえばおっさんの目がやけに自分に似てたなと一瞬気になった
次に目を開けるとそこは既に、剣と魔法の異世界である