27.空の湖⑧
「ご、きげんよう、シルフィお母様…。」
「…ヴィア、どうしてそんなにボロボロになってるの?」
きょとんとするシルフィお母様は、本当に分かっていないのだろう。…シルフィお母様はきっと、絶叫系アトラクションが平気な人間なんだろうな。
「運ばれる時、あの風、の中で気持ち悪く、なってしまった、ので…。」
「……ごめんなさい、ヴィア!ルゼとか私とかラウルも全然平気だから、分からなくって…。」
ようやく分かったようで、眉を八の字に下げて謝ってくるシルフィお母様。そしてシルフィお母様はやっぱり絶叫系強い人間だった…。
……それにしても、ラウルって??
顔に出ていたのか、シルフィお母様が教えてくれた。
「そういえばヴィアには紹介していなかったわね。…ラウルはね、私の守護精霊なの。属性は花と時と水。」
守護精霊…!!ゲームでは出て来たけど、この世界では初めて見る…!シルフィお母様の指に止まって、気持ちよさげに撫でられている、黒い身体に藤色の二つの尾を持つ鳥みたいなのが、お母様の守護精霊のラウルなんだ…。
「そして、精霊種は…ウァ・フェアルよ。よく知られている水色のではないけれどね。」
「可愛いですね。…もしかして、さっきの蝶々もラウルだったり?」
「えぇ、ラウルよ。変化の術を使ったの。」
何か、凄い…。…確か、その人が召喚出来る精霊はその人の魔力量、属性に関係しているって本に書いてあったから…上級精霊であるウァ・フェアルを召喚できる人の条件は、属性が花・時・水のいずれかで、魔力量が…AA級以上!!…まさか、シルフィお母様の魔力量は、AA級以上?!
…説明すると、魔力量というのはランクに分けられていて、一番下がC級で、それからB級、普通でA級、それからAA級、S級、一番上がSS級で分けられている。
なんだAA級とか思われるかもしれないけど、AA級の魔力でも100万人に10人ぐらいの割合で、それ以上の魔力ランクともなると…確率が、もの凄く、少なくなる。
ちなみに、ヒロインの魔力量はAA級。それに加えて光の魔力だから、希少性が凄く高かったんだよね。レイヴィアの魔力量は、たぶん――。
「――ヴィア?」
「な、なんでもありません。お母様の魔力量、すごいなって思って…。」
考え込んでいたからか、お母様に心配げな表情をされてしまった。
「私の魔力量はAA級だから、そんなに凄くはないわよ?それに――」
いえいえ、十分凄いです…。――レイヴィアの魔力量は、人並みのA級だったので…。それでも闇の魔力だったから、一撃一撃の威力は十分強かったんだっけ…。
そして続いたお母様の言葉に、私はびっくりすることになる。
「――ルゼの魔力量は、S級だもの。」
……!? お父様、意外とすごかった…。私の後ろで黙りこくっていたお父様をチラリと見て、私はその光景に驚いた。……お父様が、片方の手で頭を抱えるようにして、泣いていたのだ。
え!?!?
……あのお父様が、泣いた!! あの!!お父様が!! いつも無愛想で無表情で朴念仁で、ゲームでは実の娘が死刑に処されるのを見ているときでさえ泣いていなかった、あの!!お父様が!!泣いた!!
驚きを通り越してまた一周して更に驚く…。ゲームと普段のお父様を知っているだけに、驚きが何倍にも膨れ上がっている。
「――シル。」
「…なぁに、ルゼ。」
立ち尽くして涙を流すお父様に、やわらかく微笑むお母様。
「どうして、あんなことをした?意味は、あったのか?」
「…あらあら、何のことかしら。きちんと言ってくれないと、相手はいつまでも分かってくれないのよ?ルゼは、よく知っているでしょう?」
「なぜ…記憶を変えた。…なぜ、シルは、ここにいる。」
――記憶を変えた。そのことをお父様が知っているということは、シルフィお母様が本当の記憶に戻したのだろう。
「――魂の結び鳥、ウァ・フェアルを使用した、禁忌とされる魔法。それは、想いと魔力量が強ければ強いほど、守ろうとするものが価値のあるものほど…成功率は、高くなる。」
まるで教科書を読み上げるかのように言うシルフィお母様。
「――死者の魂を条件の会った場所で、限られた時にのみ、現世に繋げる魔法。……それが、私が死んでしまった今もなお、ここにいられている理由よ。…魂の結び鳥、という名称は、昔ヴィアには聞かせてあげてたわね。」
「……。」
通りで、ルイシス様でさえも知らないことを知っていたわけだ。まさかお母様が教えてくれていたからなんて、思いもしなかったけど。
「……なら、どうして、俺の前に出てきてくれなかったんだ。魂を繋げられるというなら…どうして…。」
「…私を、諦めて欲しかったから。だって、会えたとして、また会える日があると期待し続け、未練を振り払えずに死んでいくのは、一番嫌でしょう。」
また、やわらかく微笑んで、お父様に返すお母様。
「…どうして、記憶を変えた。」
「――私の心臓を、あの人たちに奪われないためよ。ヴィアが鍵だと、気づかれたくなかったの。」
…心臓?どういう意味だろう…。
「…シルはいっつも、そうだ。黙って行動して…。」
「えぇそうよ。」
「なんで、言わない。家族から受けてた仕打ちだって、最初に会った時言ってくれてれば…っ!」
「別に、私が病弱体質になったのはそれだけが原因じゃないわ。」
「我慢して、何がしたい。黙って行動して、何がしたい。そんなに俺は、頼りないか?」
「心配をかけたくなかったからよ。」
「心配をかけたくないから、黙って死んでいったのか?!」
…話の大体は分からないことばっかりだった。だけど、お父様が怒っていることはよく分かる。怒りながら、哀しく思っているのも、よく分かる。久しぶりに会えたのに、どうしてなんだろう。…私には、よく分からない。
「――…全部、隠すためだったの。私の秘密は、使い方を誤ってしまえば、この世を滅ぼしてしまうかもしれないから。ルゼだって、知っているでしょう?…ヴィアにも危険が及ぶかもしれなかったのよ?」
…さっきから出ている、お母様の秘密って何だろう。お父様はやっぱり知っているみたいだけど。
『レイヴィア ミセテアゲル。カコノキオクヲ ムスンデアゲル。』
囁かれるような声が頭に響いた。…ラウルだ。私に、過去を見せてくれるのかな。
「…ラウル、見せてくれる?」
お母様とお父様が話している最中だから、小さな声でラウルに聞いた。
『イイヨ。 ホントハ メイレイガナイトデキナイケド シルノ カラダカラ ハナレテ シュゴセイレイジャナクナッテルカラ デキルンダ。』
どうやらラウルは、本来なら守護している人間の命令がないと精霊術は使えないけど、守護していた
シルフィお母様は死んでしまい、身体からは離れたからもう自由に精霊術を使えるよ、ということを教えてくれたらしい。…私がお母様とお父様との会話でハテナをいっぱい浮かべさせてたのに気付いて、私がいろんなことを知っていないと思って教えてくれたのだろう。…優しい、けど、私は守護精霊の仕組みは流石に本で読んだから知ってるよ…。
『フェアル・ゼル・ラウル。』
「――ラウル!!ヴィアに精霊術を使っては……っ。」
お母様が、ラウルと私に気付いたのか、止めてきた。…だけど、私はもう、ラウルの精霊術にかかってしまっていて。
意識が沈んでいき、身体が後ろへと倒れていくのが分かった。…そして、支えてくれた誰かも。
…お父様の匂いがする。お母様の焦った声も、分かる。
――だけど、五感は徐々に切り離されて、いつしかそれすらも分からなくなる。
『コッチ、オイデ。』
私は暗闇の中にいるラウルに付いて行くしかなかったのだった。
ブクマなどなど、ありがとうございます(*- -)
奇跡は…続きませんでした。残念、無念!! 来週ぐらいから、またチャレンジします!
しかも前の後書きに書いてあったこと現実におきませんでしたね!……そして空の湖編二話に収まりそうに無いですね! ――言質というものを、覚えてもっと頑張ります!!
次の更新は明日か明後日です、言質を覚えたんならきっと平気です…(多分)。




