25,空の湖⑥
『――ねぇラウル、もう、茨みたいなヴィアではなくなったわね。』
黒い身体に藤色の尾をしたウァ・フェアルのラウルにふと囁く。
『――ソウ。ダケドマダ キエチャイソウナノハ カワッテナイ。』
『…そうね。でも、ヴィアが持っている記憶に関係があると思うの。だから、そこは変えてあげられないのかもしれない。』
『…シル ハ キエテ ホシクナイ?』
『えぇ。…ラウルは人間みんながみんな私みたいに死んでも魂だけの状態でたまーに喋れると思ってるかもしれないけど、違うのよ。』
『ソウ ナノ?』
『私はラウルっていう特別な守護精霊がいるから。それと、私の魔法にも関係があるから。』
その魔法こそ、私が見つけられなくしたかった秘密だった。…だって、それはヴィアに――。
『――シル レイヴィアタチ イル。ミエ ル。』
『――そうね。』
ルゼ。
あなたは私を探し続けた。…不器用で、親の愛を知らずに育ったあなたは根は優しく暖かった。
だからこそ、ヴィアにどう接すればいいか分からなかったんでしょうね。…私の、責任だわ。
……ルゼ。あなたが思っているよりずっと、私はあなたのことが大好きなのよ?
だからこそ、傷つけたくなかった。同じく大好きな、ヴィアも。
『……ラウル。黒い蝶になって、迎えに行ってくれる?』
『ワカッ、タ。』
ルゼ。私、あなたのことが大好きなのよ。地獄のような家から、救ってくれたあなたが。
…守護精霊にラウルって名付けた理由、分かるかしら。――鈍感なあなたなら、分からないかもね。
◇◇◇
「――ここが、シルに婚姻を申し込んだ場所だ。」
「――綺麗…。」
「…シルは、花が好きだったからな。」
好みを熟知してる…。――お父様に短時間接して分かったことは、お父様は根は冷淡じゃないということ。お母様がお父様と婚姻したのもよく分かる…ような気がした。
「特に好きだった花は――ブロワリアだ。」
お父様が、青紫の綺麗な花々の前に立つ。これが、ブロワリア…。
「…なんだか、お母様みたいな花ですね。」
「あぁ。花言葉もシルにあっているんだ。…花言葉は――」
…そういうと、言葉に詰まったお父様。どうしたんだろう。……すると、目の前を黒い蝶が通った。
「お父様、黒い蝶が――。」
「…黒い蝶?どこにだ?」
「目の前ですよ?ほら、今ブロワリアに止まって――」
『ハナコトバ ヲ』
…鈴のような、小さな囁きが耳に入る。…周りには、聞こえてない??
「お父様、本当に見えないんですか? 今、花言葉を、って言いましたよ?」
「…レイヴィアには、見えているのか?」
コクリと頷く。どうやらお父様には見えてないらしい。…どうしてだろう??
『シル マッテル ヨ? アイタイ ッテ。』
お母様が…?――もしかして、眠る場所って…。…なら、花言葉を言えばよかったり??
「お父様、ブロワリアの花言葉!」
「あ、あぁ。……ブロワリアの花言葉は」
また、言葉に詰まるお父様。
……あ、黒い蝶が消え始めちゃってる。
「――思い出して~!!」
お父様の腕を掴んでガタガタ揺する。
多分、‟深い深い、夢の中。浅い浅い、水の中。沈む沈む、雪の中。煌めく煌めく花の中。囁く囁く新緑の中。”の‟煌めく花”がブロワリアのことだと思う。それで、‟囁く新緑”は庭園だと思うんだけど…。
「お父様が花言葉思い出さないと何もできませんよ~!!私花言葉知らないし!!」
「……。」
だんまりお父様。早く思い出して…! 私が焦っている理由は、黒い蝶が消えかかっているから…。なんか、黒い蝶が消えたらダメになっちゃうがするんだよね…!勘だけど!!勘だけど!!
「…お父様~!お願いです、早く思い出してください!!」
「―――あ。」
どうやら思い出せたらしい。花言葉は、何?!
「……祈り。…ブロワリアの花言葉は、祈りだ。」
「祈りですね?! ―――祈り!!」
思い出せたことに満足げなお父様…。そして、蝶が消える寸前に花言葉が言えて安堵している私。
――まさかお父様、実は天然説。
…そんな説が浮かび上がった瞬間だった。
………そして、ブロワリアの花がほのかに光った。…これが、煌めく花、なのかな?
これはお父様にも見えているようで、驚きの表情を浮かべている。
『やーっと着いたわね、ルゼ、ヴィア。さぁ、おいでなさい。眠りの園へ――。』
――まばゆい光に包まれる瞬間、お父様の表情が嬉しそうなわけでもなく、泣きそうに見えたのは、気のせいだったのかもしれない。
ブクマなどなど、ありがとうございます(*- -)
前の更新日見ましたか?? なんと、奇跡が続いております!
ブクマやいいね、評価、閲覧をしてくれる皆さまがいるおかげです。本当にありがとうございますm(__)m
次か次の次くらいで空の湖編終わりますm(__)m その後もう一話?二話?ぐらいお話か番外編か別視点付け足して学園編に入るかなぁと…。奇跡が続くよう、執筆頑張ります!
新作も良ければ…。
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↑「愛する気は無い」と言ってきた冷血公爵様に、溺愛されている件。 ~冷血公爵は愛する呪われ姫を守るためならどんなことも行います(もちろんどっかの家紋の没落も)~




