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⒛空の湖①

「……おおぅ。」


ほかほかお風呂上がりの私はベッドにダイブして、改めて王族御用達の別荘って凄いんだなと実感した。


だって、お風呂も凄い豪華で綺麗でいい匂いだったけど、ベッドも良い匂いでフカフカフワフワなんだもの!


うぅむ…。公爵家に負けてない豪華さだ…。



午前中から夕方すぎまでかかって別荘地に移動して、美味しすぎる夕食を食べて、気持ちいいお風呂に入って、フカフカのベッドにダイブしたら、当たり前だけど疲れと快適さで眠くなる。


うつらうつらしていた所をイリアに起こされて、髪をとかされる。


「ふわぁ…。」

「お嬢様、これが終わったら寝ましょうか。」

「うん…。イリアは?」

「私はアヴィと明日の準備をしていますので。アヴィ、薔薇の香油持ってきて。それと、この瓶も処分しておいて。」

「はい、先輩。」


アヴィ、相変わらず仕事早い…。そしてイリア、相変わらずアヴィを使ってる…。


「アヴィもイリアも、明後日か明日ぐらいに休暇あげるから、休んでていいよ?せっかく別荘地に来たでしょ?」

ブラック労働阻止のため、別荘地でゆっくりと休んでもらうため、休暇をあげると二人に言ったけれど――。


「「いえ、大丈夫です。」」


珍しく息の合った二人に、ばっさりと否定された。


「私がお休みを頂いたのなら、お嬢様のお世話は誰がするのですか?」

「え、えーと…。」

他のメイドは確かに私のお世話をしてくれそうにない。


「あ、アヴィとイリア、それぞれ別の日に休暇取れば、イリアが休んでるときはアヴィが――」

「アヴィにお嬢様を任せられるわけがありません。」


イリアは遠慮とかじゃなくて、本当に休暇がいらないみたい。


「でも、休みたくなったらいつでも言ってね!」

「大丈夫です、休みはいらないので。」

「え、それは流石に…!……それで、アヴィは?お休みいる?」

「俺も「アヴィは休んでも別に平気ですよ。」


イリア、中々辛辣だな…。


「俺もいりませんよ。」


アヴィの表情が微動だにしていないのは流石だ…。


「アヴィも、休みたかったらいつでも言ってね!」


「かしこまりました。」


その返事に満足して、香油の綺麗な瓶を見て見たり、鏡の装飾に気圧されたりしながら、私は髪が整うのを待った。



――それにしても、なんでイリアとアヴィは仲が悪そうなのかな?



…うーん、分からん。


*  *  *

「ではレイヴィアお嬢様、おやすみなさいませ。」

「…灯りを消しますね。」


バタンとドアが閉じられて、部屋に暗闇が広がった。


まぶたを閉じて寝ようとすると、風でカーテンが揺れて、窓の向こうに星空がちらりと見えた。


「…ちょっとだけ。」


好奇心にはやっぱり勝てず、こっそりベッドを抜け出して、バルコニーに出る。


そして上を見上げると、たくさんの星が広がっていた。



…そういえば、星空が人気で、貴族の別荘地にここらへんはよく使われるとかなんとか、本に書いてあったっけ…。



ぼんやりと星空を見上げていると、ふと声が掛かった。


「一人で外は危ないですよ。」


「…ルイシス様?」


斜め上の階のバルコニーから、ルイシス様がひょっこりと顔をのぞかせていた。



「ちょっと待ってくださいね。」


てっきり部屋から出て、階段を使ってここに来るかと思っていたのだが…。



「わ?!」

ルイシス様はなんと、バルコニーの手すりに足をかけ、こちらのバルコニーに飛んできたのだ。


見てるこっちは心臓止まりそうになったけど、当の本人は涼し気な顔だった。


「王族教育の一環でして。」

「飛び移ったりするのがですか…?」

どんな状況を予想してそんなことやってるんだろう…。王族って…大変なんだな…。


「まぁ、他にも色々やらされましたね。死なない程度に。」

「死なない程度に…。……死ぬ一歩手前とかはあったってことですか?」

「――星空が綺麗ですね。」

話を逸らされたので、こちらも深入りを辞める。だって知るのも怖いし…。


「はい。…連れてきてくれて、ありがとうございます。」

「いえ、婚約者として当然ですよ。」


そこからは、暫く沈黙が流れた。そして、ルイシス様が口を開いた。


「フィーリア公爵夫人とは、仲良く出来ていますか?」

「はい!フィーお母様は今回用事で来れなかったので、今度、一緒にどこかへお出掛けしようと思ってます。」

「そうですか。……僕は、母上とはそんなに仲が良くないんです。」


…ルイシス様が、自分のことを話すのは、とても珍しい。私は静かに耳を傾けた。


「病弱な弟にかかりっきりで、幼少期も、王太子となった今も、あまり会話をしていませんから。…フィーリア公爵夫人は素晴らしい母です。だから…」


「どうか、大事にしてくださいね。」


「…もちろんです。」


ルイシス様は、表情を隠すのが、上手い。私が知っている人の中で、誰よりも。だから、中々本心がつかめない。だけど、少し見えたルイシス様の感情(ほんね)は、儚く、切ないような、そんな、感じだった。



そして、不安を抱えているような、感じだった。




「――ルイシス様。大丈夫です。」


何が大丈夫かは、自分でもはっきりとは分からない。



だけど、ルイシス様が抱えている不安を少しでも良くしてあげたくて。


我慢して、隠すことが得意なルイシス様を、少しでも元気づけたくて。



「……あなたはどうして、そんなに強くあれるのですか?」


「…ルイシス様?」


ルイシス様が吐息とともに零した呟きは、私の耳には届かなかった。聞き返すも、何でもないと言われたので、言及はせずにそのままにする。


「……それでは、良い夢を。」


「…ルイシス様。」


「レヴィ?」


呼びかけてから、ハッとする。な、何を言うつもりだったんだろう…。



「……ルイシス様も、良い夢を。」


ルイシス様はほのかに微笑んで、自分の部屋のバルコニーに戻ったのだった。


ルイシスの運動神経欲しい。


ブクマなどなど、ありがとうございます(*- -) そして更新が大幅に遅れてしまいすみません…!

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