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⒘町歩き(という名のデートらしい)③


――藍色の髪、見られちゃった…!


どうしよう…!


「おい、あの人レイヴィア様じゃね?」

「だよな…藍色の髪だし。…ってことは、隣のは王太子殿下なのか⁉」


―――ヒソヒソ話してるつもりなんだろうけど、丸聞こえなので!



…私が混乱していると、ルイシス様が上着を頭に被せてくれた。


「何の真似ですか…?」


冷たい声が、静かになってしまった店内に響く。


「すみません~!私のせいで、私のせいで…!」

「あの、別にあなたのせいではないんですよ!…悪いのは、あなたを転ばさせた床ですから!」


…我ながら、何言ってんだと思う。店内も、ポカンとした雰囲気になったような…。

だけども、涙をポロポロ流すファナレアを見てると放っておけなくなっちゃって…。


ふと、ファナレアのしゃくり声が消えた。泣き止んだのかしら、とファナレアの顔を覗き込む…。


――しかし、ファナレアは困惑した表情になっていた。


…当然と思えば当然か。いきなり、藍色の髪の不吉な人に、床が悪いんだよって言われたんだから…。



「あ、そ、そうですか…。ありがとうござい…ます。」


困惑させてしまって申し訳ありません…。反省してます…。

しかし、ルイシス様とアヴィが肩を震わせているのは見当違いの反応…。


「――皆さん、お騒がせしてしまってすみません…!…掃除しないと……きゃっ!」


ファナレアの可愛い小さな悲鳴が聞こえたので、ファナレアの指先を見ると…。


小さく血が滲んでいた。ガラスの破片で切ってしまったのだろう…。


思わず、ファナレアに駆け寄って――。

「大丈夫です…か!?」

――私は無様にも転んだ。濡れた床で滑って。


「レヴィ、大丈夫ですか!?」「レイヴィアお嬢様、大丈夫ですか?!」

――いや、悪役令嬢のこっちより、ヒロインのファナレア助けてあげてね!?


「――わ、私は全然大丈夫です!それより、ファナレアさんの方が重症?…だと思います!」

「あちらは全然平気です。…レヴィ、それより顔が濡れているようですので、これをどうぞ」


そうして差し出されたハンカチは――。…あれ、何か見たことがあるような…?


「そ、それって…」


どこで見たかを必死に思い出そうとしている私には、ファナレアの声は聞こえなかった。


…そもそも私、なんでファナレアの家が『デ・レアーヌ』だって知ってるんだっけ…。



レストランに、異国市に、ハンカチに…。


―――あ!…まさか、これ、運命の出会いイベントでは⁉



運命の出会いイベント。

幼い頃、ワガママ婚約者レイヴィアがアクセサリー目当てで異国市に行くとき、お財布と称してルイシス様も連れて行って…。ワガママ散財恥知らずのオンパレードのレイヴィアに疲れてきたルイシスは、休憩したいと駄々をこねるレイヴィアを連れて、ヒロインの親のお店、『デ・レアーヌ』に行き…。

そこで飲み物を落としてしまう、という失態を起こしたヒロインのファナレア。

そして、ファナレアを罰せようとしたレイヴィア。

そこに割って入ったルイシスは、恐怖で涙を流してしまっていたファナレアに涙を拭くようにとハンカチを渡して――!


その後、学園で再開するルイシス様とファナレア。ファナレアは最初はルイシス様のことを覚えていなかったけれど、のちに思い出すことになる…。



ん?


なのに…。



目の前には、ハンカチが差し出されている。



――え、これどういう状況?



ルイシス様が持つハンカチを、ファナレアが持ち続けて…。ルイシス様に、返さなくっちゃ、運命の出会いイベントが成立しない!!…のに、私がハンカチを差し出されている、だと?


――私のせいで、ストーリーを狂わせてはいけない!



「――…シスル様。私はもうハンカチがありますし…。そのハンカチはファナレアさんに貸してあげてください!ファナレアさん、泣いてますよ?」

正体がバレてしまった以上、偽の名前を呼ぶ必要はないんだろうけど、シスル様と呼んでしまう。


「――レヴィがそういうなら」


ルイシス様は上手に微笑み、ファナレアにハンカチを渡した。


る、ルイシス様が内心で心底嫌がっているのが分かる…。


―――だけど、それでいいのよ…!運命の出会いイベントに、ハンカチは必要なアイテムだから!


今は凄く嫌そうな感じだけど、将来はファナレアを好きになるし!!


「…あ、ありがとうございます!また会えたら、返しますね!」

「返さなくてもいいですよ。」

ルイシス様、返事が素っ気なさすぎです…!


「――レヴィ、帰りましょう」


そう言ってから、ルイシス様は座っていた私をヒョイと抱き上げて、スタスタと店から出て行ってしまった。


◇◇◇

「――ル…シスル様」

「どうしましたか、レヴィ?…頭に被せてある僕の上着が嫌でしたか?」

「いえ、それは別に――ではなくて、そろそろ…降ろしてください」


ルイシス様、そろそろ降ろしてください!切実な願いです…!周りからめちゃくちゃ注目されているんですが…!


「あぁ、レヴィがあまりにも軽いので、降ろすのを忘れていました」

「お世辞ありがとうございます…。それより早く降ろしてください…」

「いえ、お世辞では…」


――ふぅ、やっと降ろしてくれた…。


「…レヴィ、最近よく食べていますか?」


ギクッ。



「…や、やだなぁ~。いっぱい食べてますよ~」

目がきょろきょろしていたりしてないよね…。冷や汗だらけになってないよね…。



「最近レイヴィアお嬢様はあまり食事を召し上がっていませんね」


…アヴィ。…裏切ったな。


「報告ありがとうございます。…それで、レヴィ?なにか悩みでもあるのですか?」

「――い、いえ…」

ないないないないないないです!ほんとーにないないないです!


「…シャ」


…思わず、ビクッとしてしまった。…ルイシス様は、それで確信してしまった。



「…シャルラム公爵閣下のことですね?」


あまりにも分かりやすすぎる自分に呆れてしまう…。



「…正解、です」


――ルイシス様に睨まれたら、嘘は誰でもつけないと思うのです…。



ブクマなどなど、ありがとうございます(*- -)


連日投稿出来ました…!明日も頑張ります!

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