⒈前世の記憶
レイヴィア・フィ・シャルラム公爵令嬢は未来に極悪の令嬢になる人物である。
…正確にいうと、乙女ゲーム『FlowerWish』、略してハナネガの悪役令嬢になるであろう人物である。
ゆるく波打つ、ハナネガの世界で不吉と称される藍の髪に、灰色の瞳をした悪役令嬢レイヴィア。髪は不吉だとしても、見た目は絶世の美少女の見た目とは裏腹に、中身は真っ黒なのだ。
時には義弟・義妹を徹底的に虐め、義母を自殺に追い込み、婚約者を束縛でがんじがらめにしたり、侍従たちを玩具にしたり…などなど。
悪よりもヤヴァイことを平気でやる(むしろ楽しむ)ような極悪役令嬢である。
そしてハナネガの主な舞台、ロゼ・リリィ学園に入学して〜の、首席入学したヒロインちゃんに水をぶっかけたり、ドレスを破いたり、監禁したりも…。
――それ以外にも、令嬢令息を強制退学させたり、無実の罪でゼロいっぱいの弁償金を払わされたり…まぁとりあえず、レイヴィアは人の苦しむ顔が大好きな極悪令嬢なのだ。
…ハナネガ内でそれぞれに付けられるイメージフラワーでも、レイヴィアは花言葉が「呪い」の黒百合を付けられているぐらい、レイヴィアは残忍かつ残酷すぎる。
そしてそんなレイヴィアは、私が覚えているエンドだと、当然のように十分の九の割合で死ぬ。
…なぜ藍色の髪に灰色の髪の、見るからに異世界風の見た目をした私がゲーム知識とかを知っているのか?
それは単純かつ、認めるのは難関だ。
――私は、平凡庶民日本人だったときの記憶、前世といわれるものを思い出したのだ。
…そして、そんな私の今世は…死ぬ確率90%の死亡フラグたちまくり悪役令嬢、レイヴィア・フィ・シャルラムだったのだ。