story4(6)_side葉月
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最近分かったこと。コンビニの前で声をかけてくれる男性が実は篠塚君で、それでもって何度も絡まれているところを助けてもらっていたということ。
「俺のお願い一個だけ聞いて」くんが、まさか篠塚くんだったとは驚き半分、納得半分。
何でだろうと考えたときに出たのは、距離だ。絶妙なその距離感っていうの。彼は絶対に私が嫌がる距離感には入ってこない。それが意識的だろうと無意識的だろうと私にはその距離が有り難かった。遠くなくて怖くない距離。これってなかなかに難しいの、自分でも分かってるの。戸惑うと頭が真っ白になっちゃって動けなくなる。フリーズ。何言えばいいの? どうすればいいんだっけ? 少し前に出来ていたことすらパニックで真っ白。
こういう時、私を理解してくれる誰かがいて無理矢理にでも手を引っ張って行ってくれて……。それで、それで。なんて考えて考えて考えて。結局入って考えるだけに留まってしまったり。
望んでるようで望んでいない変化を受け入れてみたい気持ちはあるんだ。
といういつもの下らない自問自答を繰り返すけれど、彼に関しては通用しない。
割りと初めからタメ口なのも私のことを葉月さんと呼ぶことも彼にとっては日常茶飯事な出来事なのかもしれないけれど、私は慣れなくてソワソワ。
ソワソワしてるのを悟られるのも恥ずかしいし、気にしてませんよの態度は冷たく見られるし、正直どういう態度をとればいいのか、未だに模索中。
この間、公園で話したあと彼は家まで送ってくれて。そしてお決まりのごとくこの言葉を残していくのだ。
「俺のお願いまた一個聞いてよ」
今度はどんなお願いなんだと少し楽しみになりかけていることに私はまだ気付いていない。
「今回はちょっとハードルが高いかなぁ」
なんていう篠塚くんに少しムッとしながら「大丈夫よ」と余裕ぶってみる。
何が来てもどんと来いってね。片眉を上げてその先を促すと彼は「夏祭りへ行こう」と言い出した。
夏祭り……、行ったことないけど想像しただけで地獄。暗いし、人混みだし、兎に角私には不向きな行事であることに間違いない。
それに行こうというキミはいったい何を考えているの?
戸惑いを何処に打つければいいのか分からず、思わずキミの服の袖を掴んでしまう。
「大丈夫だよ、葉月さん」
ポンポンと頭を撫でられ、少しだけ安心が戻ってくる。
もしもその腕を引っ張ってギュっと抱き締めてもらえたならば、もっと私は安心することが出来るのだろうか。
「俺のお願い聞いてくれるんでしょ」
当たり前のように放たれるその言葉を私は当たり前のように受け入れる。
きかないという選択肢は初めからなかった。何故と聞かれてもそれは分からないのだけれど。




