story4(5)_sideキミ
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葉月さんと話していたら、何やら俺の視線の向こう側に派手なナリをした見慣れた三人が見える。
何やってんだ、彼奴ら……。今日に限って、どうしてここに来てんだよ。お前らに会うと面倒くさいから、今日は朝から大学にも行かずにいたってのに……。というか、講義はどうした、講義は。俺が言えた口ではないが、それでもタイミングがいいんだか悪いんだか分からない(絶対悪い方だ)奴等に俺は恨めしい視線を送りたくなる。
見間違いなら、どれだけよかっただろう。パチパチといくら瞬きをしても消えてくれないから、どうやら見間違いではないらしい。
お前ら、頼むから邪魔すんなよ。こっち来んなよ。と、葉月さんにバレないように念を送る。距離的には声も聞こえないし、こちらの会話も向こうに聞こえはしないだろう。しかし、彼奴らは動きが五月蝿い。特にマルコメ。春一が一緒だし、彼奴があの二人を何とかしてくれるかと思いながらも、視界の端にちらちら入ってくる奴等に俺は内心イラッとしていた。
お前ら早よどっか行け、と。
ここから彼奴らにガンを飛ばしたところで気付かないだろうし、逆に目の前にいる葉月さんに不審がられてしまう。
葉月さんが気づく前に早くどっか行ってくれ。という、俺の願いも虚しく彼女は何かを感じ取ったのか、突然後ろを振り返った。
「ん? あれって篠塚君のお友達じゃない? 一緒にウチの店来てたよね?」
色んな事に敏感な彼女が気付かないはずがなかった。
「あー、そうだね。でも、気にしなくていいから」
とは言っても、律儀な彼女がそのまま素知らぬ振りなんてするはずもなく(葉月さんの良いところなんだけどね)。
「挨拶だけでも」
「あっ、ちょっ……」
俺が止める間もなく、彼女はスッと立ち上がり、彼奴らの方へと行ってしまった。
「あの……」
葉月さんが声をかけると、悪ぃと片手を顔の前にやる春一。
春一は悪くない。悪くないけど……。
俺は邪魔をした元凶共ににこにこと笑いながら声をかけた。
「お前ら、何してんの~」
折角の葉月さんとの時間を邪魔されて明らかに不機嫌な俺。
お前ら分かってんだろうな?
という意味を込めた笑顔を奴等に向ける。因みに俺は葉月さんの後ろにいるから、葉月さんには俺の表情は見えていない。
「あっ、あれー? シノ、こんな所で偶然だなー」
取り繕うようにマルが言うけど、俺の機嫌が良くなるわけもない。
「あの、この間篠塚君と一緒にウチの店に来てくれてましたよね?」
こいつ等の相手なんてしなくてもいいのに、優しい葉月さんはマルコメと春一に声をかける。
「うん、そう! 俺等、シノと同じ大学で。つーか、高校から一緒だったんだけど――」
お喋り好きなマルとコメが言わなくてもいいような事までつらつらと葉月さんに話す。高校時代は校内、校外問わず喧嘩三昧だったとか、春一や俺ばかりが女にモテていたとか。本当、こいつ等余計な事しかしないし、言わねーな。葉月さんは文句も言わず、にこにことそれらを聞いていた。
「お前ら、喋りすぎだから」
葉月さんにごめんね、と言うと大丈夫だと言ってふわりと笑いかけられる。
思わず彼女に触れたくなってピクリと反応した手をきゅっと握りしめた。葉月さんを怖がらせたくはない。不用意に他人に触れられる事を彼女はきっと嫌がるから。
「っていうか、お前らはいつまでここに居るつもりなのかなー? 俺と葉月さんの邪魔しないでくんなーい?」
にこりと笑いかけてやると、俺の本気が伝わったのか「あ、そういえば俺等この後用事あるんだったー」なんて言ってマルコメはそそくさと去っていく。
「悪かったな、邪魔して」
春一は俺の肩をポンっと叩いてそのまま奴等の後を追っていった。
「あれ? 篠塚君、みんな行っちゃったけど、良かったの?」
目を丸くしながら、可愛らしく首を傾げる葉月さん。
「いーの、いーの。今は俺と葉月さんの時間なんだから」
俺がそう言うと、納得したのかしていないのか、「そっか……」と不思議そうにしながらも彼女は頷いてくれた。
その日は彼女の時間が許す限り、公園で二人で話をして、その後は彼女を家まで送って、そして「またね」と言って別れた。




