第10話
残りのオーク5匹の内2匹は普通のオークではなく上位種だと思うと言っていた。確かに他のオークは棍棒装備だったが、冒険者あたりから奪ったであろう皮の鎧と刃毀れの激しい鉄の剣を装備しているのと、斧を装備しているのがいる。
【オークサージェント】というらしい。軍曹なのにあんなにだらしないお腹でいいのか!!と言いたくなるのは色々影響を受けすぎなんだろうか。
レッツブートキャンプ!!とか言って動き始めても嫌だなとか思ってみたが、さすがは軍曹!焦げた仲間の死体を見つけて何やら騒ぎ出した。
もう1体の斧持ち軍曹さんは家畜の入っていた檻の中へ走ってくる。正直豚顔の巨体が全力で走ってくる姿は怖いとしか言えない、思わず逃げたくなるが檻の中心部に【クレイプラウ】を発動して動きを封じる。バランスを崩して尻餅をついたタイミングで背後から首を刎ねる。
初めてゴブリン達を殺した時には感じなかったが目の前にオークの胎児の死体が目に入った途端なんて言うか、直接命を奪う感覚になれなきゃいけないんだと思ったら胸がザワつく、虫だとか生き物だとか屁理屈こねてもしょうがない。
こうやって首を刎ねたり、さっきみたいに動けないところを刺したり最初は特に何も感じないと思ったけど正直心は痛んでいるんだと思う、生きる為に必要なことだからしょうがない知らない誰かを守る為に、元いた場所に戻る為に、意識が塗り替えられていく。
でもそんなことより俺が作ったソフトを使ってくれているユーザーの為に生きて戻らなければ!!不具合があって報告をそのまま放置とか絶対ダメ!そんなの俺は許せない!
そうだ、魔物はバ・・・
『司くん、なんかいけない方向に意識が行ってるよ』
ミーデ先生(眼鏡)に叱られた。精神的な負荷を軽くするのに思考がどうやらトリップしたらしい。危ない危ない、さて残り4匹。
檻の中から連中の動きが丸見えだ。1匹が何やらボーラの様なものを持って振り回し始めた。焦げた死体を見て魔術が使えると判断したんだろう、さすが軍曹でもなそれは悪手だ、何故って
【ピットフォール】
そう単純な思考しかしてこないこいつらにはお誂え向きな魔術だ、魔術の名前が英語なのは今更だが俺がイメージし易いだけって理由だ。単純に
【落し穴】
って叫んでらなんか締まらないよね。4匹まとめて落し穴に落ちてくれたので瞬殺しよう。昨日の重力魔法はさすがにゼロを纏わないと使えないので
「単純に俺がチートなんだろうな、【サンダーアロー】」
穴に向かって雷の矢を何本も放つ、それが吸い込まれるように穴に刺さっていく。中は見てみないとわからないが多分全滅させてるだろう。とりあえず
今転がっているオークや苗床になったゴブリンやコボルトから判定部位を採集してする。偶にファンタジー系の小説でオーク肉は食えると書いてあるが、臭みが強く毒性もあり食べるとかありえないそうだ。
「みんな、ありがとう見ててくれて。こいつらの処理をしたいから手伝ってくれないかな」
ゴーレムで死体を運ぶのを手伝ってもらってさっきの落し穴を拡張した穴に死体を投げ込んでいく、全部入りきるか心配だったがなんとか全部入った。
「サラ、最後の締めをお願いしたいんだけどいいかな」
遠征中はやることがなく、ちょっとふてていたサラを呼んで穴の中の死体を燃やして土をかぶせて完了。騎士団に討伐完了報告をしに行かないといけないんだっけなんか近隣巻き込んで大げさな事になりそうだったけど、片付いたから良しとしよう。
---一方、騎士団ベースキャンプでは----
騎士団長以下各班の班長が円卓を囲んでいた。
「あとどれ位で準備は整う」
「もう1,2時間ほどで」
邪気の森に突如現れたというオークを討伐する為新人ばかりの今の戦力でどこまで戦えるか、魔術を使えるものはそう多くはない。オークの元に辿り着く前にゴブリンやコボルト等他の魔物の襲撃に備えなければならない
「そういえば、司殿は何処ですか?」
「誰か見たか?」
「「見ていません」」
異世界から召喚された少年の姿が見えない、彼に何かあれば騎士団長達は管理責任を問われる。
「急ぎ探せ!!!森を焼くつもりで構わん!!」
「・・・団長そんなことしたら司殿まで焼き払ってしまいます」
とオークへの対応と司の捜索とで大慌てだった。
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