能力診断
ノエルの勘を頼って歩き出してから1時間、三人は村に着いていた。
「私の勘はあってたでしょ。」
得意げにそう言うノエルに綾太は言った。
「どう見ても町じゃなくて村なんだけど、そこはいかに?」
ギクッとなったノエルは苦し紛れの言い訳をした。
「きっと限りなく村に近い町なのよ。そうだわ、そうにちがいない!」
そんなやり取りをしていると、村の男の人が話しかけてきた。
「旅のものですかな?ここはメヌの村ですよ、残念ながら町ではありません。」
笑顔でそう言う村人。一方ノエルは無言で綾太の方を向いた。
「てへ、やっちゃった。」
ノエルは頭にこつんと手を当て舌も少し出す。いわゆるてへぺろというやつであった。
そんなあざとい行動に綾太は切れ気味に言った。
「てへ、じゃねぇ!誰が村に連れてけって言ったんだよ!エルフの勘はその程度なのかよぉ!」
「うるさいわね!野宿にならなかっただけましじゃないの!」
ノエルは逆ギレする。
そんな二人に村人が再び言った。
「町を探してるんでしたら、一番近い町でトレノブの町が半日程歩いたところにありますよ。」
「ありがとうございます。」
村人を無視して言い争いを続ける二人に代わって、ティーナが礼を言った。
宿の前に着くと能力診断と書かれた隣の店があった。
「なぁ二人共、あそこ行ってみていいか?」
「ふん!好きにすれば。」
「私は賛成です。綾太さんの能力も気になりますし。」
まだ怒っているノエルと、綾太の能力に興味のあるティーナは、綾太の意見に賛成した。
「よし、じゃ行こう。」
そう言って店に入ると、中はこじんまりとしていた。机と椅子が二つしかなく、机の上には水晶玉がおいてあり、奥の椅子には老婆が座っていた。
「一回1000コインだがやっていくかね?」
老婆が言う。
ちなみにコインというのは、この世界の通貨である。
「ああ、お願いする。」
そう言って老婆にコインを渡した綾太は椅子に座った。
「では、始めよう。」
そう言って老婆は水晶玉に手を近づけ詠唱しだした。
「己の力のわからぬ哀れな子羊に慈悲を、傲慢な人間に力を、知識の神よ、今この時のみ我の魔力を糧として力を。」
詠唱を唱えると水晶玉が光りだした。光が収まると老婆は能力について語りだした。
「お主の能力がわかったぞい。お主の能力は摩擦を操る能力じゃ、詳しことをいうと、手の触れたもの、大きいものは触れたところから半径10m以内の摩擦を操れる。ちなみに何か所も摩擦を消すことは、できないのう。せいぜい一か所じゃな。」
淡々と説明する老婆の話しを聞いた綾太は、一言お礼をいい、後ろにいたノエルとティーナと隣の宿に戻って行った。
三人部屋をとった三人は部屋で話していた。
「それにしても摩擦の能力だったなんてね。ティーナの予想が当たったじゃない。」
そうノエルが言うと、少しがっかりしたように綾太が答える。
「能力がわかったのはいいけど、何とも微妙なのうりょくだなぁ。」
「そんなことはありませんよ綾太。戦闘の時は相手の体に触れ摩擦をなくせば相手は立てませんからほとんど勝ったも同然でしょうし、雨の日や雪の日は、摩擦を大きくすれば転びません。他にもいろいろと応用の利くいい能力だと私は思います。」
ティーナがそう言うと綾太はこの能力がそれなりに使えると思い出した。
「そうだな、ティーナはフォローしてくれるし優しいな。」
綾太がそう言うとティーナははにかんだ。
「そ、それほどでも。」
赤くなったティーナに気付かず、綾太は自分のベッドに向かった。
「綾太寝るの?じゃあ私も寝ようかしら、手出したら殺しからね。」
「俺にそんな度胸はねぇよ。」
そう言って二人はベッドに横になる。
二人が寝るのなら私もと、ティーナもベッドで横になった。
綾太は摩擦を操るという、なんとも微妙なチートの能力について考えながら眠りについた。