能力の仮説
トレノブの町に向かって歩き出して2時間が経過した。綾太御一行は、森の中に居た。
「なぁノエル、ここさっきも通らなかったか?」
「き、気のせいじゃないかしら。」
疑いの目でノエルを見る綾太にノエルは誤魔化すように答える。
ノエルに先頭を任せた綾太たちは絶賛迷子であった。
「ノエルに案内を任せるんじゃなかった・・・。」
がっくりとしながら言う綾太にノエルが反論した。
「だいたい綾太が私に案内なんて任せるのがいけないのよ!」
それに対してさらに綾太が反論した。
「エルフだったら森のことは詳しいと思ったんだよ!」
「そんな偏見捨てなさい!だいたい綾太が最初から先頭に立ってれば良かったのよ!」
「私がやるって言ったのお前だろうが!」
「ふん!綾太がやろうとしなかったから仕方なくやってあげたのに何よ!」
二人が醜い言い争いをしていると、ティーナが二人の間に入り言った。
「喧嘩はやめてください。二人共お腹が空いてるから機嫌が悪いのでしょう。お弁当を作ってきたので、お昼にしましょう。」
お腹の空いていた綾太とノエルにはティーナの声が天使の声のように聞こえた。
「弁当あるのか?」
綾太が確認をとる。
「はい、頑張って作りました。」
すると綾太の顔に笑顔が溢れ出した。
「いやっほい!ティーナは優秀だな!あそこの似非エルフとは大違いだ。」
綾太は喜びのあまり、ティーナに抱き着きながら言う。
「ティーナにいきなり抱き着くロリコンに似非エルフって呼ばれる筋合いはないわ。」
ノエルは冷たい目で綾太を見る。
抱き着かれてるティーナは顔を赤くして言った。
「は、放してください。抱き着かれると恥ずかしいです。」
「おおう、すまん。」
綾太はティーナを放した。
「気を取り直して、お昼にしましょう。」
三人は弁当を食べ始めた。
弁当を食べ終わり休憩をする三人。そんな中ティーナが綾太に質問をした。
「そういえば綾太さんの町の時に使った能力ってなんなんですか?」
「あー、滑る能力のことか、イマイチ俺にもわかんないんだよなぁ。」
これまで二度の戦闘で使ってきたが能力の詳しいことはまだわかっていなかった。
「私なり仮説を立ててみたんですよ。」
頭の良さそうなティーナの仮設が気になった綾太は、ティーナに言った。
「どんな仮説なんだ?」
「まず最初に無精ひげの男を転ばせた時です。あの時は確かに地面はツルツルになっていましたが、最後の蹴られて滑って行くときほどツルツルではない感じがしました。あのレベルの滑りだったら受け身は取ろうと思えばとれたはず。次に最後の蹴りの時です。あの時の滑り方は異常でした。まるで何も抵抗を受けていないかのように滑って行きましたからね。」
よく戦いを見てたなと思う綾太にティーナが仮設の最終的な結論を言った。
「二つの意見を合わせると、どちらも地面の抵抗に関係があります。滑ることに関しての抵抗、つまり綾太さんの能力はおそらく‘‘摩擦を変える能力‘‘だと思います。」
理にかなった仮説を立てたティーナに綾太は感心しながら言った。
「すげぇよティーナ!こんなの能力使ってる俺も思いつかなかったぞ。」
「ふふ、それほどでもないないですよ。」
嬉しそうにティーナは答えた。
「ほら二人共、長ったらしい話は終わりにしてそろそろ行くわよ。」
「おう。」
「はい。」
ノエルがそう言うと二人は返事をして立ち上がった。
「ちなみにノエル行く方向は分かったのか?」
そう不安そうに綾太が聴くと、ノエルは自信満々に答えた。
「当然じゃない、こっちよ。」
歩き出すノエルに二人は付いて行く。
しかしまだ不安の残る綾太は再びノエルに質問をした。
「ちなみになんでこっちの方向だってわかったんだ。」
「そんなのエルフの勘に決まってるじゃない。」
そう答えるノエルに綾太は不安しかなかった。