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精霊会で起きた戦争から数か月が経った。戦争の爪痕は精霊たちによって修復され今はもう痕は残ってすらいない。

そんな中精霊界で起きた変化と言えば真新しい大きな家が建ったことだけであろう。そんな大きな家に住む五人は有意義な時間を過ごしていた。

「綾太ー。そろそろ起きないと朝御飯できちゃうわよー。」

大きな家の中の一室に眠る綾太を起こしに来たノエル。ノックして綾太の部屋へと入る。

綾太は眠そうに眼を擦り起き上がる。

「おはようございますノエルさん。」

「いつまで寝てんのよ。朝御飯覚めるわよ?それと敬語で話しかけないでって言ってるでしょ。」

「・・・ごめんなさい。」

「まぁいいわ。とりあえず早く来てね。」

部屋からノエルが出て行くと綾太はクローゼットを開けて私服へと着替えを済ませ、下の階にあるリビングへ足を運んでいく。

「おはよう綾太。」

「おはようございます綾太さん。」

椅子に座って朝食を待つメリアラとティーナが挨拶をする。ノエルは先程挨拶したので何も言わない。

「皆さんおはようございます。」

丁寧に挨拶をすると、メリアラとティーナの顔がムッとなる。

「敬語はいいっていつも言ってるのに。」

メリアラは先程のノエルと同じようなことを言う。

綾太は精霊界で起きた戦争で記憶を失ったのだ。そしてその記憶は数か月過ぎた今でも戻ってはいない。そんな綾太にとって他の四人の女の子は赤の他人に等しく、そんな女の子が自分に親切にしてくれてること自体がむず痒い気持ちであるのに、タメ口で話すことなどもってのほかなのである。

「まだ慣れないもので・・・。」

綾太は困ったような笑みを浮かべる。

「メリアラちゃんそんなに急かさないの。綾太君の記憶だっていつかは戻るわ。」

今日の朝食当番であったステラが朝食を持って来た。

「分かってるけどもう何か月も経つんだよ。あと何か月、何年待てばいいの?」

メリアラは泣きそうになる。そしてそんな状況に朝食の場は暗い空気になってしまう。

「・・・・・すいません皆さん。」

そう言って綾太は謝罪をすると席を立ち朝食食べないまま家を出て行った。

「メリアラちゃん・・・。」

「わかってる!わかっているけど!!辛いの・・・。綾太は・・・・綾太は僕にとっての初めての友達だもん!!」

あの戦いで綾太を信じていたメリアラにとってはあまりにも辛い結末だった。そのことはここにいる全員が理解している為、誰も責めようとは思わなかった。

「今はそんなこと言っていても仕方ありません。綾太さんを探しに行きましょう。」

「そうね。何処に行くかも分からないしね。」

ティーナとノエルは席を立ち玄関へと向かう。

「片付けたら私も行くわ。」

朝食を片付け始めているステラは玄関から出て行く二人にそう告げる。

「メリアラちゃんはどうするの?」

ステラがメリアラに優しく問いかけると、顔を俯かせるメリアラは玄関から急いで出て行くのであった。


綾太の足取りは家を出てから徐々に早くなっていた。今の自分が嫌で仕方がない。記憶を戻したくても戻せない自分が嫌だ。タメ口で話せない自分が嫌だ。そんな気持ちを胸に抱えたまま綾太はひたすら早歩きをするのであった。

そして綾太は気づいたら大きな平原へと来ていた。記憶を失ってから平原に来たことなどなかった綾太であったが、この平原に懐かしさを感じていた。

「ここに似たところに来たことがある・・・?」

平原をゆっくりと歩いて行く。ここにいれば何かが思い出せそうな綾太は一歩一歩を踏みしめていた。

するとバサッと羽ばたく音が聞こえる。

「メリアラさん。」

ゆっくりと地面を足につけ綾太の目の前に歩み寄る。

「ねぇ、この場所に見覚えない?」

「見覚え?」

メリアラからの突然の質問と先程から感じていた違和感を照らし合わせる。

「見覚えは無いですが違和感は感じます。」

「違和感?」

「ここに似た何処かで何か大切なことがあったような。泣いてる女の子がここにいたような。」

メリアラは硬直する。そして頬を涙が伝って地面に落ちた。

「メリアラさん!?」

泣いているメリアラは涙声になりながら言う。

「ごめんね。こんな赤の他人が泣いても変なだけだよね。」

涙を拭き始めるメリアラ。

そんなメリアラを見て綾太は昔の記憶を僅かに思い出していた。

昔こんな場所で独りぼっちだった女の子を助けてあげた記憶。綾太はその時何を言ったか思い出せないけど今泣いている少女を前に告げた。

「俺は、俺はメリーと友達になりたいです。記憶が抜け落ちて曖昧だけど、俺は友達に、仲間になりたいです。」

拒絶されるのが怖くて足が震える。それでも伝えなきゃいけない。そんな想いが綾太の喉から声を出す。

「だから、俺と友達になってください。」

メリアラは俯いた顔を上げる。そこには柔らかな笑顔と涙があった。

「前と違ってカッコよくないし軽々と愛称を使ってくれたし敬語のままだけど。」

問題点を幾つも指摘されてどんどんと足の震えが大きくなる綾太。

「でも、断る理由は何もない。だからこんな僕でも良いならもう一度友達になってくださいッ!!」

平原に最高に綺麗な花が咲き開いた。それは一点も曇りも無い純粋な喜びだけによるものだった。

綾太は時間が止まったような感覚に陥った。自分は何を迷っていたのか、何を恐れていたのか、こんなにも簡単であったのだ。ただ一言友達になってくれと頼む。それだけでこんなにも楽になれたのだ。

「あーいたいた。おーい二人共ー。」

ノエルが手を振ってこちらにやって来る。その後ろからティーナとステラもやって来る。

三人はメリアラの泣き顔を見て驚くが、笑顔だった為何も言わずに微笑むのであった。

「ほら、帰るわよ。私お腹空いたわ。」

ノエルは家の方へと歩いて行く。

「それもそうですね。家に帰ってご飯を食べましょう。」

ティーナがノエルの後を追いかけると、メリアラとステラもその後を追いかける。

綾太は四人が歩き出しても平原に立ち止まっている。この景色を記憶に焼き付けているのだ。もしこの場所と似たところに行けたら何かを思い出せるかもしれないという期待を胸に。

「綾太ー帰るよー!」

四人が綾太の方を笑顔で見ている。

記憶を失った俺でもようやく帰る場所ができた。そんな嬉しさを胸に彼女たちの元へ走って向かう。

「今行きまーす。」

もし願いが叶うのであれば、こんな平和な生活がいつまでも続きますように・・・。

一つ目のENDはこれにて終了です。二つ目はまた後日出そうと思います。

あと興味のある方のみだけでいいのですが新作を出すことを考えています。良ければ見て行ってください。

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