楽園に残る永久の盾
時は少し遡る。
綾太が小瓶の中の液体で回復してから起きたことである。
「・・・・・ここは?」
消えそうな意識が不思議な空間にたどり着いた綾太。そこは一面が灰色だった。
「代償と共に力を手に入れる覚悟はできたか?」
綾太が振り返るとそこには白くもやもやとした盾の意思と呼ばれるものが浮かんでいた。
「くれてやった知識は五分の三。残りも欲するか?」
「・・・・・・。」
「まだ決断が出来ぬか。その甘えが命を散らしていくということを理解するべきである。」
「命を?」
「この戦場でお主の仲間が役にたてたか?たてるはずもない。お主たちにはこの戦場はレベルが高すぎる。しかし今お主たちはこの戦場にいるのだ。なら答えは決まっておるだろう。自分よりも強者しかいない戦場。策も力も全て相手の方が上手。そんな状況でお主の仲間に待っているのは死のみだ。」
綾太の中に仲間と過ごした日々が思い返されていく。輝かしかった日々はここで終焉を迎えてしまうのか?そんなことは誰よりも綾太本人が許すはずがなかった。
「・・・・・取引だ。俺の記憶を代償にお前の全てをよこせッッ!!!!」
「お主の意志。見してもらったぞ!!」
盾の意思は綾太に入り込み同期する。
そして綾太は目覚めるのであった。
赤く発光する身体からは魔力が漏れ出していた。その膨大な魔力は精霊王も驚かざる負えなかった。
「私の力は100%が限界じゃないんですよ。体は持ちませんがこの状況ではどちらにせよ死ぬだけです。ならせめてこの精霊界ごと破壊するとしましょう。」
溢れ出る魔力は更に増していく。その膨大な魔力のせいで精霊王ですら近づけないでいるのだ。
「防護障壁。」
精霊王がそう呟くと精霊王の前に魔方陣の盾が現れる。
「2000%です。まだまだ上がります。そんな障壁で守りきれますかね?」
ヴェリダルの体が悲鳴をあげている。至る所から血が噴き出し始め、至る所に傷ができ始める。
そして漏れ出した魔力は渦を巻きだした。
「5000%・・・・。ここが限界みたいですね。じゃあ終わりを告げましょう。」
魔力の渦がヴェリダルの右腕に圧縮されていく。
「この世界にッッッ!!!!!!」
右腕から魔力の渦が放たれる。その渦は全てを貫かんばかりの威力を持っていた。そして精霊王の障壁に当たるが紙のように貫いていく。
精霊王の表情に絶望に変わる。精霊王の後ろの方角には精霊界の心臓が存在する神殿があるのだ。
「私は盾だ。何も通さぬ絶対の盾。貫かれることも砕かれることもないその盾こそが私の全て・・・。」
誰も聞いたことのない独特な詠唱が魔力の渦巻く音共に戦場に聞こえる。
綾太は精霊王より後ろで盾を構えて待機していたのであった。
「だから私は全てを守ろう。何が代償であっても私は全てを守る盾になろう・・・。」
綾太の前まで魔力の渦は迫る。
「全てを防げ、楽園に残る永久の盾ッッッ!!!!!!!」
赤い魔力の渦と盾から展開される紫の魔方陣がぶつかり合う。
綾太は歯を食いしばる。何故自分がこんな世界にいて何を守るのか分からくなった綾太だが、自分の後ろには守らなきゃいけない大事なものと大事な人たちがいることだけは分かっていた。
「人間如きがぁッッッ!!!!」
威力の増す魔力の渦に綾太は押される。
「守らなきゃ・・・・・全部俺が守るんだッッッッ!!!!!!!」
押されていた綾太は踏みとどまり堪える。すると徐々に魔力の渦の威力が落ちていく。
「ここ・・・まで・・か・・・・。」
完全に魔力の渦が無くなるとヴェリダルは膝から倒れ、体が消えて行くのであった。
戦場に終わりが訪れる。精霊界で起きた戦争はここで幕を下ろしたのだ。
綾太が起き上がるとそこはベッドの上であった。
「ここは・・・?」
ハッキリしない視界がだんだん治っていく。
視界がハッキリするとそこには自分のベッドを囲む4人の少女がいた。
「綾太!もう起きて大丈夫なの?」
「痛むところはありますか?一応全て回復するまで直したのですが足りなかったら言ってください。」
「良かった・・・。良かったよ。約束守ってくれたんだね。」
「傷が治ってよかったわ。私も重傷だったけど流石に綾太君ほど無茶はしなかったわよ。」
4人の少女たちが綾太を囲みそれぞれ喜びを表す。
しかし綾太は何も反応することができなかった。今の綾太にとって彼女たちは初対面なのだから。
「・・・・・。」
綾太は黙る。
「綾太?」
心配になったメリアラが綾太に話しかける。
「ごめんなさい。」
いきなり謝った綾太に4人は驚く。
「貴女たちが誰だか俺にはわかりません・・・。」
綾太は4人の少女に正直に告げる。
するとメリアラが綾太の手をギュッと握り、顔を覗き込んできた。
「じょ、冗談は止めてよ。質が悪いよ?」
メリアラの声は震えている。
「ごめん・・・。」
綾太は顔を俯いて謝ることしかできなかった。
そんな絶望に満ちた空気の中精霊王が現れた。
「綾太君をあんまり責めないでくれよ。綾太君は記憶を代償に精霊界と君たちを守ったんだから。」
精霊王の表情にいつもの笑顔はなかった。ただ真剣そのものであった。
「でも、でもそんなの酷すぎます。一人で背負い込んでそんなの・・・。」
ティーナの眼から涙がこぼれる。
「そんな状況に君たちがしたことを忘れていないかい?」
その言葉に全員が表情を暗くする。
「仲間が、いや君たちが大切であったから綾太君は自分の記憶を差し出したんだ。君たちがもっと強ければ話は変わったかもしれないのに。」
「そんなのわかってるわよッ!!言われなくたってわかってるわよ・・・。」
ノエルは泣きながら精霊王に言う。
「私たちだって自分たちの無力さがぐらいわかっているわ。」
「・・・。」
冷静に見えるが気を抜いたら涙が出てきそうなステラ。そして自分の過ちで綾太を気づ付けたことにショックを受け何も言えないメリアラ。
「・・・・・そうかい。なら俺ができる今出せる最大限のお礼をしよう。間違えるなよ?これは君たちにではなく綾太君にだ。綾太君が拒否したらこの話は無しになる。」
そう言って精霊王は綾太の横になるベッドの横に移動する。
「綾太君。精霊界に大きな家を作ったんだ。綺麗な自然に囲まれ何も不自由がない。しかも精霊界からも何時でも出ることができる魔方陣付きだ。どうだい?綾太君はそんな家に住みたいかい?」
綾太は精霊王から提示された報酬に暫く悩んだ後に答えを出した。
「その家に住みたいです。でも欲を言えばそこに居る女の子たち4人と一緒に。」
「ふーん。何で?」
少しニヤッとした精霊王は直ぐに表情を戻した。
「俺が記憶を代償にしてでも守りたかったあの娘たちと暮らせば記憶が戻るかもって思えたからです。仮に戻らなくても俺が南川綾太だってことに変わりはありません。だからまた昔みたいに過ごすには時間がかかるかもしれないけど、いつか俺の知らない俺に戻れたらって・・・。」
綾太は精霊王の顔を見上げる。
「いい答えだ綾太君。それじゃあ綾太君は今日から治療に専念して君たちは先に家を見に行くといい。案内は精霊がしてくれるさ。さぁそうと決まったらサッサと行く!」
そう言って4人を部屋から出す。
その時扉から手錠のかけられた男が見えた。
「あの人は?」
「綾太君は気にしなくていい。あれは綾太君の敵でもあったし俺たちの敵でもあった男だからね。あの戦いで唯一残った敵さ。」
「そうですか。」
あまりあの戦いを思い出したくない綾太は直ぐに話をやめた。
「じゃあ綾太君ゆっくりと傷を治せよ。」
そう言って精霊王は部屋から出て行くのであった。
残された綾太は睡魔に耐えられず眠りに着くのであった。
次回で異世界に行けたけど微妙なチートだったは完結となります。
ENDは2つ用意しているのでどちらも見てくれると有難いです!
それでは次回また会いましょう!!




