赤き予兆
盾に拳がぶつかるたびに戦場に鈍い振動何度も響く。
「人間の限界はここまでですかッ!!」
「精霊の愛した朽ちぬ盾ッ!!精霊の愛した朽ちぬ盾ッ!!精霊の愛した朽ちぬ盾ッ!!」
張った精霊の愛した朽ちぬ盾がことごとく砕かれるため、相手の攻撃が来るたびに張り直す綾太は防戦一方であった。
「90%ですッッ!!!!!」
大きく振りかぶったヴェリダルの腕は赤く発光する。
「精霊の愛した朽ちぬ盾ッッ!!!!!!」
綾太は自分の全てを守備に回すが、そんな行動は一瞬にして無駄となる。
「・・・・・盾自体が耐えられませんでしたか。」
ヴェリダルの赤く発光した腕は真っすぐと盾に伸びている。その腕は盾を貫き綾太の腹に深く突き刺さる。
綾太がむせると大量の血が地面に吐き出される。
「人間にしてはなかなかできる方でしたよ。十分楽しめましたよ。最大の敬意を持って言いましょう。」
ヴェリダルは崩れ落ちた綾太を見て告げる。しかし称賛を贈られた綾太の眼にはもう何も映っていなかった。
立ち去ろうとするヴェリダルの前に魔方陣が現れる。
「やあやあ魔界人代表のヴェリダル君。随分派手に暴れてくれたみたいだねぇ。」
現れたのは精霊王であった。いつも通りヘラヘラと笑顔を浮かべている精霊王のはずなのに、ヴェリダルはその笑顔に違和感を覚えていた。
「その汚い笑顔の仮面を取り払ってから話すのが礼儀では?」
ヴェリダルがそう言うと精霊王は長い間をあけてから口を開いた。
「そうだね。なら・・・・・・・・・・よくも好き勝手してくれたな。」
精霊王の表情から笑顔が消え去る。残ったのは殺意と怒気だけであった。
「いい加減にしろよ魔界人。殺戮しかできない生物の分際で、暴れていいと思うなよ。」
この時ヴェリダルは生まれて初めて恐怖を覚えた。この男は自分を遥かに凌駕する存在で、決して勝てる相手ではないということに恐怖を覚えたのである。
「さぁお前の死に場所はここだ。素手でじっくりと殺してやるよッ!!!」
精霊王は小瓶を倒れている綾太に投げつけヴェリダルの視界から消える。
小瓶は綾太の上で止まると、勝手に砕けて中身の液体を降り注いでいく。その液体は綾太の傷をみるみると回復させていく。
「ぐッ!!」
死角から素早く重い攻撃を受けたヴェリダルは勢いよく地面に叩きつけられる。地面は抉れ、クレーターができる。
だが精霊王の攻撃は止まらない。体中に見えない速さで素手で攻撃を加えていく精霊王。
アッパーで吹き飛ばされたヴェリダルはその隙に腕に力を籠める。腕は赤く発光して、その一撃を接近してきた精霊王にぶつける。
「・・・・・。」
しかしそれを片手で止める精霊王。その眼は殺すこと以外映っていなかった。
何とかして腕を抜き取ったヴェリダルは精霊王から距離をとる。
そして二人が睨み合っていると倒れていた綾太が起き上がった。
「・・・・・二体一ですか。私にもう勝ち目はありませんね。」
盾にもたれかかる綾太と殺意に溢れた精霊王を見据えて言う。
「なら私も奥の手といきましょう。」
ヴェリダルの体が赤く発光を始めるのであった。




