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シフトチェンジ

時は遡ること数時間前。綾太が盾の意思とのやり取りをしている間、ノエルたちは戦場のど真ん中にいた。

「飛ばすとは言ったけど本当に戦場のど真ん中じゃない!!?」

ノエルたちの四方ではエストゥアンスらが戦闘している。それぞれの戦闘は激しく、爆発音や金属のぶつかり合う音などが鳴りやまない。

「とりあえず遠目で見ても僕たちとは次元が違うね。とても加勢はできなさそうだよ。」

「とは言ってもここで何もしないわけにもいかないわよ。」

メリアラは遠くで戦うエストゥアンスを空に飛び上がって見ている。

「どこかマズそうになったら助けに行きましょう。」

ティーナはそんな状況が来ないことを祈りながらそう言うのであった。


エストゥアンスは団長と呼ばれた男に炎の連撃を加える。その炎は爆音と共に何度もヴェリダルを包み込む。

「・・・・・・・。」

エストゥアンスは炎を放った場所を険しい顔つきで見ている。

煙が周りを包んで見えていなかったが、徐々に煙が晴れて行くとそこには無傷のヴェリダルが立っていた。

「その程度ですか?大精霊もたかが知れますね。」

汚れ一つないヴェリダルは失望した顔でエストゥアンスを見上げている。

「・・・・・なら、遊びは終わりだ。爆炎に飲まれな・・・。」

エストゥアンスは空中で両手をヴェリダルに向けて突き出す。

「我が原初は炎。万物を焼き尽くす炎は審判を下す。正しきものは立ち残り、悪しきものは灰と化す。紅蓮の劫火はここに再誕する。焼き尽くせ、リヴァルガンダッッッ!!!!」

エストゥアンスの奥の手であり固有魔法であるリヴァルガンダ発動する。辺りは火の海となりヴェリダルの周りは炎の渦によって囲まれる。そこに火の海が集中し始め、やがて劫火の渦は万物を燃やしかねない高密度な炎となり、最後に爆散した。

辺りは焼け野原となり何も残っていない。それこそ塵の一つもないかの様であった。

「大精霊がそれぞれ持つ究極の奥義であり固有魔法だ。まぁ消えたやつに言っても仕方ないがな。」

エストゥアンスはヴェリダルが居た位置をそっと見ながら呟いた。

「大精霊の固有魔法ですか・・・。道理で強力なわけです。」

聞き覚えのある声がエストゥアンスの背後から聞こえてくる。エストゥアンスは驚きを表情に表しながら振り返る。

「いやぁ危なかったですよ。本当に・・・。」

呑気にヴェリダルは言う。

そんなヴェリダルをエストゥアンスは睨みつける。

「何で生きてやがる・・・?あの魔法に燃やせねぇものはねぇはずだ・・・。」

「ええ、確かに私の絶対防御シールドは完全に燃やし尽くされましたよ。でもそれだけのことです。耐えられない攻撃は避ければいい、それだけです。」

「・・・・避ける・・だと・・・?」

「この際ですから私の固有魔法について教えてあげましょう。」

驚愕するエストゥアンスにヴェリダルは子供に勉学を教える教師のように説明を始める。

「私の固有魔法はシフトチェンジと言ってアタック、ディフェンス、スピードのどれかを一時的に跳ね上がらせます。先程まで私が使用していたのはディフェンスシフトです。そして今使用したのがスピードシフトです。シフトは一度チェンジしてしまうとチェンジする前のシフトが長い間使えなくなるのが残念ですが、その分絶大な力を与えてくれるわけです。」

パンと手を叩き説明を終了するヴェリダル。

「それでは説明も終わりましたしそろそろお別れです。」

ヴェリダルから凄まじい殺気が溢れ出す。危機を感じたエストゥアンスは距離をとる。

「遅いですよ。」

スピードシフトの状態のヴェリダルは一瞬でエストゥアンスの懐へ入る。

「アタックシフト。さようならですッッッッ!!!!!!!」

ヴェリダルはアタックシフトに移行した拳をエストゥアンスの腹へ叩き込む。

エストゥアンスはそのまま一瞬で地面に叩きつけられる。エストゥアンスの落ちたところには大きなクレーターができる。

「呆気ないですねぇ。でも咄嗟に避けようとしたのはいい判断でしたよ。」

ヴェリダルはエストゥアンスの腹のど真ん中を狙ったつもりであったが、エストゥアンスは咄嗟に避けようとした為、直撃したのはエストゥアンスの脇腹である。その証拠にエストゥアンスの脇腹は抉れていた。

「まぁどっちにしろ致命傷です。では私は精霊王とあの方を探すとしましょう。」

どこかに飛び去るヴェリダルを残った意識で睨むエストゥアンスは僅かに残った余力で立ち上がる。

「精・・・・れ・い・・・王・・・・・様に・・伝え・・・・。」

限界を迎えたエストゥアンスはその場に倒れるのであった。

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