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仮初と真名

綾太たちの目の前に広がる大草原には、羽の生えた妖精のような者が飛び回っている。

「ここが精霊界・・・。」

辺りを見回すと飛び回る妖精のような者は楽しそうにクルクルと回っている。

「いいでしょ!精霊界!!可愛い精霊ちゃんたちが一杯いるんだ!!」

手を大きく広げて精霊界を紹介する精霊王。

「精霊って初めて見たわ。」

「むしろ見たことある人なんてそういないわよ。」

ノエルとステラは精霊を見ながら言う。脇ではティーナとメリアラが精霊を眺めている。

「まぁまぁ皆楽しむのはいいけどそろそろ行くよ。」

そう言って精霊王が手を掲げると全員の足元に大きな魔方陣が現れる。

そして視界が真っ白になるかと思うと、次の瞬間には目の前には大きな円卓と十個の椅子が置いてあった。

四つの席には既に座っている者がいる。

「な!?お前!!」

綾太が席の一つを見るとそこにはエストゥアンスが座っていた。

「あぁん?」

綾太を睨みつけるエストゥアンス。五人は戦闘態勢に入ろうとするが精霊王がそれを止める。

「大丈夫大丈夫。エス君は俺たちの味方だから。」

「チッ、そう言うわけだ。さっさと座れ。」

エストゥアンスは機嫌が悪そうな表情を浮かべて言う。

そして全員が着席すると精霊王が口を開いた。

「それじゃ、会議始めよっか。」

にこやかに精霊王が言うと、水色の羽衣を着た女が発言をした。

「盾の名を知ったのはそこの少年でいいですか?」

青い羽衣を着た女は綾太を見ながら言う。

「はい、俺です。」

返事をすると少し間をあけて再び青い羽衣を着た女は口を開いた。

「私の名前はプルヴィアム。よろしくお願いしますね。南川綾太。」

自分の名前を知っていることに驚く綾太であるが、またプルヴィアムが口を開いた。

「綾太。貴方が知った盾の名は何ですか?」

「盾の名前?ああ、精霊の愛した朽ちぬ盾イディラギミアのことですか?」

プルヴィアムに綾太が返答すると綾太一同と精霊王を除く四人が険しい顔をした。

そしてしばらくすると精霊王がにこやかに口を開いた。

「綾太君。君に大事なことを教えてあげよう。」

綾太に言われているはずなのに綾太以外の四人も変に緊張してしまう。

「その盾の名前は精霊の愛した朽ちぬ盾イディラギミアなんかじゃないよ。」

精霊王の言葉には重みがあった。

「・・・・・・・・・・????」

綾太は言われたことの意味が分からず理解不能という顔をしている。

「あれ?わかんなかった?」

「全く理解できませんでした。」

そうなんの恥じらいもなく言う綾太に精霊王の周りに座る四人は呆れかえる。

「おい精霊王。ほんとにこいつが持ち主で良いのか?」

エストゥアンスは精霊王をギロリと睨む。

「ちょっち不安が出てきたけど、多分大丈夫系?」

語尾が疑問形になり不安を隠せていないことがまるわかりの精霊王。

「あの~、説明してもらっていいですか?」

会話についていけない綾太は精霊王たちに質問した。

「簡単なことじゃよ少年。精霊王様がお主たちの世界に授けた剣と盾には真名があるんじゃ。そしてその新名を知ることによって真の力を発揮できる。そう言うわけじゃ。つまり少年が使っておる精霊の愛した朽ちぬ盾イディラギミアという名は仮初というわけじゃ。」

ゴツゴツした鎧の男は綾太に向かって説明を始める。

「・・・なるほど。ありがとうございます。ええっと・・・。」

少し間をあけて理解した綾太はゴツゴツした鎧の男に礼を言うが名が分からず戸惑ってしまう。

「ワシの名はプリミステラじゃ。よろしく頼むぞ少年。」

プリミステラは自分の名を綾太に教える。

「まぁテラっちが言った通りなわけだから。綾太君、君に新名を知る手助けをしてあげよう。」

親切にも手伝ってくれると言った精霊王であるが、それに引っかかったものを感じたステラは口を開いた。

「今でも十分やっていける強さの盾なのに何故新名を教える手助けをしてくれるのかしら?」

そんな疑問にいつものニコニコとした表情で精霊王は答えた。

「まぁそう思っちゃうのが普通だよね~。簡単に言うと、君たちの今までの脅威は魔王軍だったでしょ。今はそれが消えたからそれ以上強くなる必要はない、そう思っちゃってる系だよね。でも残念なことに君たちは知らないだろうけど新しい脅威はもうできてるのよ。」

精霊王の言葉に綾太一行は全員驚きを隠せない。

「・・・・つまり新しい脅威に立ち向かうためには盾の真名が必須ってわけね。でもそれじゃあ貴方には何の得もないはずよ。」

いまだに疑問の残るステラはまた質問をする。

「盾に対抗できるのは剣しかのよ。でもその剣が無くなったとなると盾を悪用されると対抗策が無くなるわけ。つまり盾に選ばれた綾太君が早く真名を知って強くなってもらわないと簡単に盾が奪われちゃうから俺たちが手伝おうってわけよ。盾が無くなるとこっちもいろいろと大変なことになるしね。」

説明をし終えた精霊王はステラの様子をうかがう。

そして少し悩んだ様子を見せたステラは納得したような表情になり返答した。

「なるほどね。理解したわ。」

「よし!そうと決まったら真名を知るためにちょっち頑張るべ。」

その日から綾太たちの精霊界で過ごす日々は始まった。

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