リカバリーゾーン
「ハハハッッ!!!よく避けるれるねティーナちゃん!!」
「手を抜いてるくせに何を言いますか。」
ビドールからの格闘を辛うじて避けるティーナ。ビドールが格闘戦向きではないこととティーナが一応体術の訓練を受けていたため避けることができているのだ。しかし体術を教えてもらったとはいえ、本業は回復なのでビドールの攻撃を避けるだけで、防戦一方である。
「僕はあんまり格闘戦は得意じゃないんだけどね。ティーナちゃんがそこそこできることはわかったし、僕も本気で行こうかな!」
格闘の手を止めたビドールはティーナから距離をとり、自分のローブの前をガバッと開けた。
「な、何ですかそれは・・・?」
ティーナはローブの中から出てきた六本の黒い手を見て驚愕していた。
「ティーナちゃんにはすっごく教えたいんだけどさぁ、ここで死ぬから関係ないよね!!」
ニコッとビドールが笑顔を作ると同時に黒い手はティーナ目がけて伸びてきた。
「キャッ!!」
六つの手に殴られ吹き飛ぶティーナ。
「流石に避けられないよねぇ!!ティーナちゃん!!!」
再び六本の手をティーナに向ける。
「慈悲と安らぎは世界を包む。傷あるものには治癒を、傷なき者には加護を、ここは全てを癒す愛されし領域。リカバリーゾーン。」
ティーナは上位回復魔法の詠唱を唱えると、ティーナの周りに半径1mほどの光の円ができる。そしてティーナの殴られた痕は直ぐに消えて行った。
「上位回復魔法?なかなか高度な魔法を覚えてるね。」
ビドールは興味あり気にリカバリーゾーンを見る。
リカバリーゾーン。使用者の半径1m以内を常に回復状態にする上位回復魔法。円の中に居る限り大抵の傷は癒すことが可能である。
「ティーナちゃんの回復と僕の攻撃・・・・・どっちが先に倒れるのかなぁ。」
ビドールの顔には興奮が見える。
「試してみるのが一番早いよねぇ!!」
手を更に二本増やし八本なった黒い手は全てティーナを襲う。
「・・・・。」
ティーナは無言でナイフを抜き構える。そしてまさに黒い手がティーナの近くまで迫った時。
「ぎゃああああ!!!!!」
ビドールの黒い手が煙を出し消えかかっていた。
「何で!何で僕の手が!!許さない許さない許さない許さない!!!!」
再び黒い手を出したがその数は十二本。
「回復は浄化の魔法でもあります。貴方のその黒い手は素人が見ても悪の塊だとわかります。」
黒い手の悪性は強い浄化の能力も持つリカバリーゾーンには侵入できないのだ。
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいぁぁぁぁい!!!!潰れろぉぉぉぉぉ!!!!」
十二本の手を一つに纏め巨大な黒い手が完成し、ティーナの真上から押しつぶそうと振り下ろされる。そしてリカバリーゾーンに触れたにも関わらずその手は消えずに押し合いになっている。
「くぅ!」
リカバリーゾーンに魔力を込めて黒い手を弾き返そうとするティーナであるが、リカバリーゾーンは限界を迎えようとしていた。
「さようなら、ティーナちゃん。」
最後に冷静になったビドールはそう言った。
「・・・・まだです!」
ティーナは首にかかっている癒しの宝石に魔力を込める。するとリカバリーゾーンは黒い手を押し返すどころか範囲も増して、約2m程になった。
「ぐぅぅ!僕の手が、負けるわけ・・・・ないんだぁぁ!!!」
ビドールの叫びと共に勢いを増した巨大な手であったが、弾き飛ばされるのであった。
「僕の手が・・・僕の・・手が・・・・ぼ・くの・・・・・手・・・がぁ・・・・。」
全ての黒い手を打ち消されたビドールは、消えた自分の手を探すように自分の本物の手で辺りに手を伸ばすが、その場で力尽きるのであった。
「・・・・・・。」
そんな哀れな少年をティーナは眺めることしかできなかった。
「手ぇ・・・・・・・。」
そんな声が聞こえたが、ティーナはその場を後にした。
「僕の手を返せぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
叫びに近い声を聞いた時にはすでに遅くティーナは吹き飛ばされていた。最後の力を振り絞って出した一本の黒い手の渾身の一撃が後ろを向いて油断していたティーナに直撃したのだ。
「僕の手を!僕の手を!僕の手をぉぉぉ!!」
倒れたティーナに馬乗りになったビドールは本物の手でティーナを殴打する。
「うぅ・・・。」
もう意識が持たないと思ったその時、スパッとビドールの首が落ちた。
「僕の仲間を傷つけた罪は死で償え。」
蝙蝠の様な翼を持つ少女は汚物を見るかのような目でビドールを見る。
「メリアラ・・・さん・・・?」
辛うじて意識のあるティーナはメリアラを見ると、そこには血塗られたナイフを持つメリアラが居た。
「早く回復魔法をかけた方がいいよ、今から皆の助けになりたいならね。」
メリアラはそう言うとティーナの横に立ちじっと待つのであった。そしてこの戦場に再び回復魔法の詠唱が聞こえるのと共にビドールとの戦闘は終わるのであった。




