戦闘の傷跡
「長老、勇者は?」
銭湯終了後綾太たちは村の診療所に来ていた。奥の治療室から出てきた長老に綾太は質問した。
「駄目じゃった・・・。」
首を振り、重い返事をする長老。
「そう・・・・・ですか・・・・。」
暗い綾太たちの顔は更に暗くなった。
「仲間たちにどう伝えればいいのよ・・・。」
ノエルは悔しそうに言う。ステラの加減のおかげで生き残った勇者の仲間たちは、現在長老の家で拘束されている。
「戦闘不能にして会話に持って行こうとしたんですけどね。」
「とりあえず勇者の仲間たちに伝えよう。」
ティーナの肩に手を置き、綾太は言う。
「勇者様が死んだ・・・・・嘘・・・・いやあああああああ!!!!!」
シスターのような恰好をした少女は悲痛の叫びをあげた。
「外せ!!今すぐぶっ殺してやる。」
縄を引きちぎろうとする戦士の男は綾太たちを睨む。
「貴様らがそこまで非道とはな。所詮は魔物か。」
老人も戦士と同じで綾太たちを睨む。
「別に俺たちが殺したわけじゃない。」
綾太は本当のことを言っているのに、少し弱々しく言う。
「汚らわしい魔物の言う言葉を誰が信じるものか!!」
綾太に向かって吠える老人。そんな老人にステラの手が向けられた。何時でも魔法を打ち込める体制である。
「こっちの都合で生かしてあげているのに調子に乗らないで。」
ステラは汚物でも見るような目で老人を見る。
「ありがとうステラ。でも大丈夫だ。」
ステラの前に手をすっと出しそう告げる綾太。
「次はないわよ。」
こちらに非は無いのに文句を言われたうえに罵倒されたことにステラは、怒気の籠った声で言う。
「ふん、魔物ごときにかけてもらう慈悲などいら・・・。」
そこまで言うと老人の心臓はメリアラによって貫かれた。
「言ったでしょ、次はないって。」
老人の胸からナイフを引き抜くメリアラ。
「お前らぁぁぁぁ!!!」
戦士の男は怒りが頂点まで達する。少女は放心した状態で「勇者様・・・。」と何度も呟いている。
「暴れるな馬鹿ども!!」
長老の一声でその場は静まり返った。
「ステラ君、あの男のことを説明してくれ。」
「はい。」
怒った声から一気に静かな声になった長老にステラは返事を返す。
「ミエスタ・トコーセア。トコーセア家の当主で私の元執事。」
「トコーセア家?」
「代々魔王を補佐する役職の家よ。」
綾太の疑問にステラは答える。
「ミエスタは私に物心つく頃にはもう居たわ。魔王の仕事を一切しなかった私が会うことは数回しかなかったけどね。」
「!!!!」
魔王の仕事を一切しなかったという言葉に反応する戦士の男。
「ミエスタの実力は未知数。そして何より奪われた聖剣を何に使うかが今後の問題になると思うわ。」
真剣にステラの話しを聞く一同の中から一人意外な人物が声をあげた。
「昔勇者様から聞きました。聖剣は魔王軍に渡った時自動的に砕けると。」
少女は俯きながら言う。
「でもミエスタが持ったにもかかわらず砕けなかった。」
綾太はあの状況を思い出す。
「嫌な予感がするわね。」
ノエルの顔が険しくなる。
「とりあえず行先は決まったわね。もう帰りたくはなかったけど。」
ステラはいつもの仲間たちの顔を見る。
「ああ、そうだな。行こう、魔王城へ。」
ミエスタの目的を調べるために、綾太たちは再び魔王城に向かうのであった。




