矛と盾
「ほう、弾くか?」
足に根が絡まった勇者はその場で木の槍を弾いた。
「ならこれはどうじゃ?」
手を地面にかざすと十数本の木が生え、先程と同じように一本の木につき五本の木の槍に変わる。
「手応えがありそうだ。」
バキバキと音をたてさせながら足に絡まった木の根を払う。
「手応えで済むように祈るんだなッ!!」
全ての木の槍が勇者に放たれた。
聖剣と木の槍がぶつかり合うカキンッという音が何度も響く。
「くっ!これはちょっとキツイ。」
避けたり弾いたりする勇者であったが、対応しきれず切り傷を幾つも負う。
「決定打は与えられないか・・・。」
新しい木を生やしては槍に変えて飛ばす長老は呟く。
「森を荒らしているのは貴方も一緒じゃないか?」
弾かなかった槍が地面に刺さり、それを見た勇者は長老に向かって言う。
「言ったじゃろ?わしの魔法は森を味方に付ける。地面などどうにでもなる。」
「流石に減らしてくれないか。」
勇者は舌打ちをする。
「どういう状況よこれ?」
綾太のもとに戻ってきたステラは、勇者と長老を見てそう言う。
「見ての通りだ。長老が全力の勇者を圧倒している。」
「ここの長老何者よ?ノエルちゃんは知ってた?」
ステラはノエルへ疑問を投げかける。
「知るわけないでしょ。あんなに強かったなんて・・・。」
ノエルは当然知らなかった。そんな五人は二人の激闘を眺めることしかできなかった。
長老は槍をひたすら飛ばすが息切れ一つしないでいた。しかしそれに対する勇者は傷も増え、体力も限界に近付いていた。
「剣が鈍ってきたぞ勇者、限界か?」
「そうだね。そろそろ限界かな。だからこれで決めさせてもらう!!」
聖剣が輝きを増すと衝撃で全ての木の槍が落とされる。
「切り札は最後に使うものだ。」
聖剣を振りかぶる。
「マズイ!長老逃げろ!」
エンチャントジュエル一つの威力を身をもって知った綾太は叫ぶ。
「生きるか死ぬかの裁定はこの輝きの一撃で決まるだろう。裁定の時は来た!運命の裁定ッッッ!!!!」
今までとは比にならない光の一撃が放たれた。
「クソ!全ては守り、助けるための力、再誕せよ、精霊の愛した朽ちぬ盾ッッ!!絶対に通さないッ!!」
最強の矛と最強の盾がぶつかり合った。
「うおおおおおおッッ!!!!」
手の摩擦を増やし、ギュッと盾を握る。
「これ以上は・・・・ぐっ!」
徐々に徐々に後ろに押される綾太。そんな綾太の足に根が絡まり、綾太の手には力強い手が重なった。
「老いぼれの手助けは必要か、少年?」
長老は綾太と共に盾を押す。
「ああ、押し切るぜ!長老!!」
互角の戦いが繰り広げられる。
「「うおおおおおおおおおおおおッッッッッッ!!!!!!!!!」」
綾太と勇者の声は天にまで響いた。
「まだまだぁぁぁ!!!」
勇者は更に力を出す。
「ぐぅ!」
再び押され出す綾太と長老。しかしその後ろを更に四人が支えた。
「長老ばっかりにいい顔はさせません!!」
「僕は綾太を支える。それだけだよ!」
「私はこれぐらいしか力になりませんから。」
「綾太君の仲間なら今こそ支えなきゃ。」
ノエル、メリアラ、ティーナ、ステラは共に綾太と長老を支える。
「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッッ!!!!!」
綾太の背中には確かに五人の力が乗っていた。
「僕の一撃が・・・。」
勇者は前のめりに倒れていった。そして勇者たちとの激闘は幕を閉じた。
「勝った・・・?勝ったぞぉぉぉぉ!!」
一人の少年の歓喜の声は村中に響き渡った。その周りを仲間たちが囲みともに喜ぶ。
「勝ったね綾太!」
「私たちの勝利よ綾太君。」
戦闘をしたメリアラとステラは特に喜んだ。そんな中一人の男の称賛が聞こえた。
「おめでとうございます皆様。我々に代わって勇者を撃破したことに感謝します。」
執事服を纏った三十代ほどの黒い口髭を生やした男が立っていた。
「誰だ!」
長老がすぐさま地面から根を出す。
「おおっとこれはこれは。」
空中に逃げる執事服の男。
「名乗りましょう。ミエスタ・トコーセア。以後お見知りおきを。」
丁寧に礼をするミエスタ。
「ミエスタ・・・。何でここに!?」
ステラが声をあげる。
「お久しぶりです魔王様。こんなところで会おうとは奇遇ですね。ですがそろそろ時間ですので。」
そう言うと倒れる勇者の横に移動し聖剣を手に取った。
「さて、そろそろ。」
聖剣を振りかぶるミエスタ。
「な!?お前!!」
綾太は止めようとするが、ミエスタは聖剣で勇者を一刺しし、霧のようになり消えて行った。
新たな戦いの予感はもうこの時に始まっていた。




