勇者一行
「町で聞いたんですが、勇者がこの街に来るらしいですよ。」
昼前にリビングでゴロゴロしていた綾太の元へ買い物に行っていたティーナが告げる。
「勇者?」
「そうです。勇者とその仲間たちがこの町に来るそうですよ。」
綾太はあまり耳しない言葉なので聞き返すが、ティーナは丁寧に答えた。
「魔王を倒す奴だよな。」
「そうです。魔王を討伐できる聖剣に認められた人です。」
「ふーん。」
会話が途切れ、少し静かになるとバタバタと玄関から聞こえてきた。
「た、大変よ!勇者が!勇者がこの町に来るのよ!」
勇者の宿敵は大慌てであった。
「大丈夫だろ。こんな町に魔王がいるなんて思いもしないだろうし。」
「そんな簡単にいくかなぁ?」
珍しく慌てたステラは冷静さを取り戻し、小首を傾げていた。
次の日の朝。
勇者がトレノブの町に来ていた。
「久しぶりにこの町に来るのもいいなー。」
まだ幼さの残る顔とサラサラとした金髪の少年は仲間に言う。
「そうですな、ここは第二の故郷みたいなものですからな。」
白い髪の毛と髭のローブを着た老人は答える。
「勇者様はこういう町並みが好きなんですね!」
シスターのような恰好をした少女は嬉しそうに答えた。
「それより酒場はないのか酒場は?」
ガッチリとした体つきの戦士の男は勇者に聞く。
そんな愉快な話しをする勇者一行の周りはまるで有名人が通るかのように人だかりができている。
そしてそんなガヤガヤとした中に、遠くから勇者たちを見ている三人がいた。
「あれが勇者か。意外と普通だな。」
「そうね。昨日あんなに慌てて損したわ。」
物陰から顔を出し勇者を見る綾太とステラ。
「勇者って人気なんですねぇ。」
ティーナも顔を出し言う。
「さっさと昼飯の食材買って帰ろうぜ。」
「それもそうね。」
ホッとしたステラは綾太に付いて行く。
「今日は何を作りましょう?何かリクエストはありますか?」
ティーナは綾太とステラに聞く。そしてそんな話しをして勇者たちの横を通り過ぎようとしたとき。
「止まれッ!!」
勇者の声が響いた。
「そこの三人、ちょっと待ってくれないか?」
冷や汗をかく三人の元に勇者が近づいてくる。
「僕の聖剣が君たちに反応したみたいなんだが・・・。」
何か言おうとする綾太と俯く二人。
「君たち魔物かい?」
勇者がそう言うと周りの人たちは悲鳴を上げて散っていき、警戒態勢になっている勇者の仲間たちだけが残った。
「特にそこの娘、僕の聖剣が強く反応している。いや、逆に君しか反応していない。」
勇者はステラを睨む。
「そんなわけないだろ、俺の仲間が魔物なんて言うの止めろよ。」
とっさに出てきた言葉を言う綾太であったが、勇者はとうとう聖剣を抜いた。
「聖剣に間違いはない、そこの娘を庇うなら君たちも容赦はしない。」
今にも攻撃してきそうな勇者。その顔に慈悲は欠片もなかった。
追い込まれたステラは口を開こうとしたしたとき、バサバサと羽音が聞こえた。
すると視界から勇者は消え、手刀を振った後のメリアラがいた。
「避けるなんて、流石勇者様。」
視界から消えた勇者は仲間たちの近くに立っていた。
「この速さ、並みの吸血鬼じゃないね。」
勇者がそう言うと、勇者一行は戦闘態勢になる。
「メリー何でここに?」
「散歩してたら綾太が見えて、来てみたらヤバそうだったから。」
メリアラも戦闘態勢になる。
「綾太さんどうするんですか?」
「どうするも何もここで戦ったら町に被害が出ちまう。」
そっちの心配じゃないと思うティーナであった。
「ステラ!メリー!とりあえず町から出るぞ!」
そう言うとメリアラは綾太を担ぎ、ステラはティーナを担いで町の外に移動した。
「町の外でやろうって事かい?」
町から出た四人を勇者一行は既に追いついていて、相変わらず戦闘態勢であった。
「被害が出るからな。」
「ふーん。真面目だね君。」
「綾太君。話しはここまでよ」
勇者と話す綾太の会話に戦闘準備の整ったステラが声をかけた。
「陰影はやがて暗黒に、狂気の漆黒は闇をもたらす、飲み込め、」
詠唱を始めたとともに勇者は聖剣を構えた。
「果て無き闇ッッ!!」
「ブラッドサクリファイスッッ!!」
魔法の発動とともに、戦いの火蓋は切られた。




