闇の魔法
「速さは疾風、慈愛は暴風、嵐を集わ・・・へぶっ!」
詠唱を始めたヒロキは途中で転び地面に顔からぶつける。
「これ以上は見過ごせないぞ。」
綾太はしゃがんだ状態で手を地面につけていた。
「お前・・・。何をした!」
いきなり転んだことに状況の把握ができないヒロキは無我夢中に立とうとする。
「お前みたいに自分の特異能力をバラすほど馬鹿じゃないんだな。」
「クソ!速さは疾風、慈愛は暴風、嵐を集わせし四大元素の一つよ、好意と嫌悪、慈悲と憎悪もろとも切り裂き砂塵となれ!サイクロン!!」
倒れた状態で詠唱を唱え突風の刃が綾太に放たれる。
「ぐあっ!」
ヒロキは倒れた状態でサイクロンを使ったため狙いが少し外れ、直撃ではなく綾太の脇腹掠める。
「この状態ではまともに狙えないか。」
「綾太君!!」
余裕な表情を浮かべて言うヒロキに対して体制を立て直したステラは綾太の元へ向かう。
「疲れたものに安らぎを、傷つきものに癒しを、治癒の光!!」
ステラは回復の中級魔法を綾太に唱える。
「ありがとう。それにしても回復魔法ってスゲェんだな。」
前回傷を癒してもらったときは綾太の意識はなかったので、この場でどんどん傷が治るのを見て感心する。
「感心してる暇はないわよ、今はあいつをどうにかしなくちゃ。」
サイクロンによって吹き飛んだ綾太は、ヒロキから10m以上離れてしまったので、摩擦の能力が解けてしまう。
「貴方達二人じゃどうあがいても僕には勝てませんよ。大人しく降伏してください。今なら命だけは保証しましょう。」
「は!降伏なんてするわけねぇだろ!」
「私も降伏するのはお断りだわ。」
ヒロキの降伏しろという言葉に躊躇なく答える二人。
「はぁ。そうですか、なら貴女の目の前でこの男をなぶり殺しにしてやりますよ。」
深い溜息をつくとヒロキは杖を構える。
「力は火炎、憤怒は灼熱、赤きを集わせし四大元素の一つよ、正義と悪、裁きと秩序もろとも焼き払う紅蓮の劫火となれ!ボルケイノ!!」
綾太は直感的にこの威力の上がったボルケイノに当たったらただでは済まないとは思ったが避けるにはもう遅かった。
「陰影はやがて暗黒に、狂気の漆黒は闇をもたらす、飲み込め、果て無き闇。」
黒い雲のようなものがボルケイノにぶつかる。そしてボルケイノは呆気なく消滅するのであった。
「な!?僕の最大威力のボルケイノだぞ!!何なんだその魔法は!?」
切り札を呆気なく消されたヒロキは動揺する。
黒い雲は次第にヒロキを飲み込む。
「ひいっ!きょ、強堅の盾よ、我を害する悪しきものから強靭な守護をしたまえ!ソリッドディフェンス!!」
黒い雲に包まれながらヒロキは防御の上位魔法を張る。
「魔法使いの癖に何も知らないのね。この世には四大元素の魔法以外にも攻撃手段なんてたくさんあるのよ。固有魔法や先祖魔法、でもそれを覚えるのは人間では無理ね。この魔法は私の固有魔法。私以外の誰にも使えない闇の魔法。」
魔法の話しについていけない綾太はポカンと話しを聞く。
「飲み込まれなさい。」
ステラがそう言うと黒い雲は完全にヒロキを包み込んだ。
「あああぁぁぁぁっっ!!!!」
ヒロキの悲痛の声が響き渡る。
「威力は抑えたから死にはしないわ。」
ステラはそう言うとパチンっと指を鳴らす。すると黒い雲はなくなり、傷だらけにヒロキだけが残った。
ステラはその場を後にし、綾太の元へ向かった。
「ほら、何ポカンとしてるのよ、帰るわよ。」
綾太に優しく語り掛けるステラ。
「お、おう。帰るか。」
二人は我が家へと帰って行くのであった。




